小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「鍛冶師」と「剣士」

****************************************************************************************

 「鍛冶師」と「剣士」というのは、お互いにお互いを必要とし、持ちつ持たれつの関係を形成している。「鍛冶師」にとって「剣士」とは、自分の作り上げた武器を使ってくれる者であり、「剣士」にとって「鍛冶師」とは、自分が命を預ける武器を作ってくれる相手なのである。

 「剣士」が有名になれば、必然的に「鍛冶師」も有名になる。だからこそ「鍛冶師」と「剣士」は、強い絆で結ばれる。しかし、だからこそお互いにこれといった相手じゃないといけない。その「これ」という所は、本人たちにしかわからない部分だ。信頼や利益、ほかにもさまざまな「これ」があるだろう。

 そして、「リズベット」と「アイズ」も他のプレイヤー達同様「鍛冶師」と「剣士」の関係にあった。時は、始まりの日。そう、この許されるべきゲームが始まったその日に彼らは、出会っていた。





 「どうして、なんでこんなことになったの……私なにも悪いことなんてしてないじゃない!」

 私は、童顔で真面目だけが取り柄の普通の中学生よ。なのになのにどうして私がこんなことに巻き込まれないといけないの? 誰か私を助けてよ。

 

 そこは、茅場晶彦の宣言が行われた後の第1層中央広場。辺りには、まだ状況を理解していなかったり、発狂しかけているプレイヤー達が残っている。私もその発狂しかけているプレイヤー達の1人だった。

 
 「大丈夫ですか?」

 私が、この世界のルールを知らされパニックに陥っていた時に彼から声をかけられた。そのお陰で今私は、こうやって鍛冶師をやれてるんじゃないかと今でも考える時があるの。

 「きゃっ!」

 あまりにも突然声を掛けられたせいとパニックに陥ってたから、いつもよりも大声で私は、その声に反応してしまったのを覚えているわ。

 「あっ……驚かせて、すいません」

 「いやっ。こっちこそ大声出してすいません。頭が混乱してて、急に声を掛けられたからびっくりして……えと、それで私に何か用ですか?」

 「いえ、特に用なんてなかったんです。ただ頭を抱え込んでいたので大丈夫かなと思いまして……もしよかったらちょっとだけお話を聞かせてもらえませんか?」

 この時の私は、まだ彼が何者かわからなかった。ルックス的に言えばイケメンで、手鏡を使った後にあの顔だったから凄いなと思ったのは、彼と話終わって宿で眠るときだったんだよね。

 というか今さらなんだけど、なんで私はこの時彼にすべてをさらけ出してしまったんだろう。今でもそれが謎。もちろん最初は、見ず知らずの人に話すのは嫌だった。でもなんだろう、彼って不思議な安心感があったのよね。で、気づいたらいつの間にか彼に話していたの。


 私は、現実世界ではただの中学生だということやいつ死んでもおかしくない状況に怯えて、震えて、恐怖していることとか、何を話したか自分でも覚えていないくらい話した。でも彼は、最後までそれを聞いていてくれた。ただ黙って、ですべてを話し終わった後で、くしゃくしゃになった私の顔を見つめながら、そんな顔をしてたら、かわいい顔が台無しだよって言ったの。なんていうか私、たったそれだけでたぶん私は、彼を好きになっていた。

 

 そして、その日は彼のとっていた宿の一室を借りて眠ることになった。そして朝、お礼をしなきゃと思って彼に会いに行ったら既に、彼はそこにいなかった。なんでも、自殺しようとしているプレイヤーがいると聞いて飛び出して行ったらしい。

 私としては、このままだと気が済まなかったから彼が帰ってくるのを待った。この宿には、彼の仲間たちがいて、今考えるとそうそうたるメンバーがそろっていた。そして私は、若干の居づらさを感じてたんだけど、それに気を使ってくれたのか、青の副団長のレミナさんが私に話しかけてきてくれた。

 レミナさんは、とってもいい人ですごくよくしてくれた。彼が帰ってくるまで、ずっと彼女と喋っていたの。そして、一時したら彼が戻ってきた。その肩に男性プレイヤーをのせて。どうやらその肩にのせてたプレイヤーの人が自殺をしようとしていた人だった。

 彼は、その肩にのせてたプレイヤーを近くにいたシュタインさんにまかせると、しぶしぶながらもシュタインさんは、開いている部屋に彼を運んだ。

 私はといえば、彼に声を掛けたいんだけどそのタイミングがいまいちつかめず、ただその宿のソファーに座っていた。そしたらなんと彼の方から私に声を掛けてきてくれた。

 「やぁ、リズベット。昨日はよく眠れましたか?」

 「えっ! はい、その……おかげさまで」

 「それならよかった! 正直、心配しましたよ。自殺でもしたらどうしようって」

 「じ、自殺! そんな恐ろしいこと私には……」

 「そうですか。無駄な心配をしてしまいました」

 「いえ! 心配してもらえてうれしいというかなんというか……」

 そう私は、終始こんな感じで彼と話していたと思う。そしてその話の中でこれからどうするかっていう話題がでたの。私は、冒険して、層攻略を頑張ってみんなを助けるなんて到底できないと彼に話した。すると彼から言われたのは、鍛冶師になってみたらいいんじゃないかなって。

 最初は、どうかなって思ったの。鍛冶師ってなんか女の子っぽくないし、暑苦しいし、きついっていうイメージがあったから。でも彼が話してくれた「鍛冶師」と「剣士」の関係についての話が私の中に、浸透してきたの。そして私は、鍛冶師になることに決めた。
 
 そしてその日のうちに、私は行動を起こした。鍛冶師になるにはなにをしたらいいか? 鍛冶師になる上でのスキル選択その全てを学ぶために、彼に紹介してもらった【Creators】のみなさんに少々の間お世話になることになった。

 

 それから1ヶ月過ぎたある日のことだった。私は、ある程度の知識を得て、一度すべての工程を自分でやってみようという決意をした。【Creators】の皆さんには、今でも感謝してる。楽しくて、ずっと笑顔で過ごしていられた。

 そして私は、もう一個決意した。そのできた武器を私を救ってくれた彼に送ろうとおもったの。しかもサプライズで。それがことの発端。私が彼の【両剣】を作ることになったきっかけ。

 私は、三層目の中でも安全かつ、武器作成に必要なインゴットを入手することが可能だといわれていた『鳥の谷』というダンジョンに一人で赴いたの。当然そこは、人気のスポットでたくさんのプレイヤー達が訪れていた。

 そのダンジョンは、けっこう奥まであるようなところだったんだけど簡単に奥まで行けることもあって、私がそのダンジョンの奥まで潜った時は、結構なプレイヤー達がいた。そしてインゴットたちもその人達の手によってほとんど掘り出されていて、行ったときにはインゴットは一つも見つけることができなかった。

 でもね、そんな場所でも、あそこには入ってはいけない場所があったの。通称『入口』。β版でも存在していたらしいけど、その『入口』になにかあると思って、挑戦するプレイヤーはたくさんいた。でもその『入口』の奥まで辿りつくまでのたくさんの罠の数々、そして奥まで行っても何もないという悲惨な結果にβ版では、運営に苦情がたくさんいったらしい。そしてそんなところだとはじめからわかっていた正式版のプレイヤー達は、誰一人としてそこへは赴かなかった。私を除いて……

 私は、どうしてもインゴットが欲しかった。彼にどうしても私が作った剣を使って欲しかった。そして恩返しがしたかった。理由は、たくさんある。そして私は、『入口』へと赴いた。

 そこは、本当に危険な罠の巣窟だった。開けたらアラームがなりモンスターが異様に出現する宝箱に触れたら毒状態になる沼。他にも迫りくる鉄球や落とし穴とたくさんの罠があった。私がそこを抜けれたのには、全部理由がある。私がそこに入った時にそれらすべての罠が解除されていたからなの。何者かの手によって……

 そして私は、何の苦労もせず奥までたどり着いた。するとそこには、クレーターのような穴とその中心にサファイアのような色をした石とそれを見下ろす彼の姿があった。


 「アイズ……どうしてこんなところにいるの?」

 「えっ! どうして君こそ、こんな所に来たんだい。危険だよ」

 最初、私の声に驚いたようだった。しかし、私と気づいたからだろうか、顔が苦笑いへと変わり、私を心配する言葉を掛けてきた。

 「それは……ちょっとインゴット採取に……」

 「そうか、でもここにはこれしかないようだよ。そして目の前にあるのに入手困難だ」

 そういって彼は、彼の目の前にあるサファイアのような石を見つめ、落胆の表情をした。私は彼に近寄った。

 「まるでサファイアみたい。でもなんで取れないの?」

 「うーん。それがわからないから俺も困っているんだ。一体どうやればこれって取れるんだろう?」

 そうどうやら、この石は頭を使ってとらないといけないようなモノらしい。しかもかなりの頭を使わないといけない。それにあのアイズが悩んでいるということは、相当なモノなのではないだろうか……と私は思っていて、私はなんとなくその石を蹴ってみた。すると綺麗な放物線を描き、飛んで行った。

 「「えっ!」」

 二人の声が重なり、そして顔を合わせるとお互いに笑い出してした。そしてアイズはその石を取りに行った。別に取るときに急にモンスターがせめてきたとかそういうエピソードもなく、その場所でしばらく二人で話をしていた。

 「さっきのは、凄かったね。どうやって蹴ったの?」

 「どうやってって……普通に蹴っただけですけどぉ」

 「そうか普通にか……君は、意外と怪力なんだね」

 「なっ! そんなわけないじゃないですか!」

 そんなことを話しながら、時間は過ぎていった。なんていうかアイズっていうプレイヤーの人間性を見れた気がして、嬉しかった。そして最後にもう一つ嬉しいことがあったの。それは彼の一つの秘密を共有することになったから。

 「さぁ、そろそろ帰りますか」

 「……はい。そうですね」

 「どうしたの? 急に元気がなくなってしまったけど?」

 「あの……アイズさん一つ、お願いがあります」

 「何かな……?」

 「さっき手に入れたインゴットを私にくれませんか? そしてそのインゴットで私に武器を作らせてください! お願いします!」

 「なんだ、そんなことか……。いいですよ、でもそれならば君に絶対秘密にしていて欲しいことがあるんだけどいいかな?」

 「秘密ですか……もちろんいいです。でなんですか秘密って?」

 私は、嬉しかった。私の提案にいいよと言ってくれたことも、彼との間に秘密が共有できるということも私にとって嬉しすぎるくらいのことだった。

 「そうだね……なにから話したらいいんだろう。まずエクストラスキルについて話さないといけないかな……」


 そう私は、その時アイズの秘密のなかでもかなり重要な一つを共有することになった。エクストラスキル【両剣】今となっては知らないモノのいないスキル。でもその時にそれを知っているのは、私とアイズとこのSAOを作った人物だけだった。

 今回、彼がここにいたのもその【両剣】という特殊な武器の素材であるサファイアインゴットを取りに来ていたためだった。私は、アイズからインゴットと【両剣】を作るために必要な素材をもらった。

 そして、私は作り上げた。その名は、ゴッドテュウール。

 性能だけだと、その時点で突出して抜き出てて、当然それに求められるステータスも高かった。だからしばらくは、アイズ自身もその武器を使うことができなかったの。

 そして、それが使いこなせるようなステータスまで上り詰めた時、またさらに【両剣】の情報が手に入った。彼が失踪するまでに私が作った【両剣】は4つ。その全てがその時の私にとっての自信作。

 あぁ早く、戻ってきてくれないかな……。あなたもそう思うでしょ。キリト君。


*************************************************************************************

すいません。上げるまでに時間がかかってしまいました。
書き溜めていたのですが、見直してみるとひどくて修正したり、付け足して行った結果
今日になってしまいました。といってもかなり駄文ですけど。

ちなみに、これはリズベットがキリトに話しているというシチュエーションです。

-27-
Copyright ©定泰麒 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える