二部「ONEPIECE」編
67話「魚人島の乱〜胎動〜」
〜Nonside〜
白ひげ海賊団2番隊隊長『火拳』のエース公開処刑予告に端を発しての海軍、王下七武海と『四皇』白ひげ海賊団、並びに白ひげ海賊団傘下の海賊団群との全面戦争…通称『頂上戦争』が勃発し、白ひげ海賊団が勝利、海軍が大打撃を受けるという歴史的大事件が起きてから2年の月日が流れた。
新世界を含む偉大なる航路(グランドライン)、いや、東西南北4つの海も含める…つまり世界全体の勢力図は頂上戦争が起きた年に急遽現れた超新星(スーパールーキー)の…『傾国』(後の『傾世』)のシオリの出現により大きく塗り替えられた。
彼女は多くの海賊団を傘下に収め凄まじい強さと恐ろしいほどの謀略によって新世界の四皇の領海の一部、グランドライン前半部…通称『楽園(パラダイス)』や東西南北4つの海の島々のいくつかを支配下においた。
恐怖による圧政を強いる事のない彼女は大半の島民の支持を得ているという情報もある。
本拠地はグランドラインの『カマバッカ王国』、『女ヶ島』の中間地点の島にあり海軍は容易に攻め込む事が出来たが何十回もの遠征は全て失敗に終わっている。
彼女『傾国』改め『傾世』のシオリは世間からは海賊の頂点に位置する四皇…『赤髪』のシャンクス、『ケンカ番長』カイドウ、『ビッグマム』シャーロット・リンリンと肩を並べる程の存在と認識されていた。
傾世のシオリはなぜかカイドウ、シャーロット・リンリンとしか争わず赤髪との抗争は自分からは一切行わなかった。
この事から赤髪との間に同盟が結ばれているのではないかとの噂が立ったが、赤髪のシャンクス本人が新聞記者達の前にのんきに現れそれを否定した。
さらに続く疑問として2年もの間、傾世のシオリは一切海軍並びに世界政府に自分から仕掛ける事はなかった。
何を企み何を目的としているのか…それを理解していたのは本人を除けば世界でただ一人しかいなかった。
一方の海軍は…センゴク元帥が退役し後釜に『青キジ』ことクザン大将と『赤犬』サカズキ大将の名が挙がり両者が激突…決闘が行われたがクザン大将の勝利、新元帥はクザンに決まった。この決闘の際に傾世のシオリの姿を目撃したとかしないとか…傷を押して決闘に応じたサカズキを労る声が挙がったがサカズキは応えず退役し行方をくらました。
元帥と大将が一人いなくなった海軍…弱体化するかと思われたが天竜人自らが『七英雄』という新組織を発足した。
とは言え、極一部の者を除き彼らの姿を見た者はおらず早くも不穏な空気を漂わせていた。
海軍のもう一つの巨大な戦力『王下七武海』は『海侠のジンベエ』、『黒ひげ』マーシャル・D・ティーチが抜けた穴を補うために超新星の一人と、あの伝説の海賊王のクルーだったという男を抜擢。とりあえずの七武海としての面目は保たれた。
海軍、七英雄、王下七武海、そして『四皇』…この四大勢力は今にも爆発しそうな緊張感の中、沈黙を守り続けている。まるで何かを待っているかのように…
〜???〜
「そうか…アーロンが…」
と、黒髪のポニーテールの美女がけだるそうにつぶやく。
「ハッ…その際クリークが倒され連れ去られた様です。」
黒い長髪を束ねた眼鏡の男が、女王に対する騎士の様な所作で答える。
「フム……それじゃシャボンディにはお前達…」
眼鏡の男、右目の上、左目の下に傷がある金髪の大男、黒髪のセクシーな雰囲気を漂わす美女、ピンク色の髪の傘を持った長髪の美女、三つに割れた髪の中年、シルクハットの男を指差す。
「そういや、またPXを出動させるんすかね?学習能力なさすぎっすね〜ハッハハハッ!」
と金髪の大男が笑う。
「ま…おかげでウチのカバの戦力が増すんだから有難いけどねぇ…」
とセクシーな美女がクネクネと歩きながらタバコを燻らす。
「ん?私にはあの『海賊狩り』を助けろって…アイツになにかあったのか?ホロホロホロ〜」
とピンク髪。
「いや、極度の方向音痴なのでな…迷子にならんよう引率してやってくれ。」
「フェーフェッフェッフェッ!PXごときもうおれのサポート無しでも楽勝だろうが…まぁ勝負事にゃ絶対はねぇからな!安心して戦えや!」
と三つ割れ頭。
「………」
黙したままのシルクハット。
「で…魚人島には…バサラ、シロウ、ファラオ…それにお前らに頼む。」
銀髪のショートカットの美男子、指示を出す美女と瓜二つの黒髪で髷がある美男子、やけに豪華絢爛な鎧や装飾を纏ったガイコツ、目の下にクマがあり、無精ひげを生やした逆立った髪の男、太鼓を背負った…いや、生やしたベリーショートの金髪の男、カバみたいな男を指差す。
「…骨のある覇気の使い手がいればいいが…聞いた話ではチンピラとは…運動になるかどうか…
カイドウらとの抗争の方が暇を潰せるな。」
と銀髪がつぶやく。袴を着、刀をさげている
「確か麦わらには三刀流、魚人には八刀流がいるんだったか…邪道を見物するのもたまにはいいか…では、姉上。」
刀を引っ提げている髷のある黒髪の美男子。
「余の剣の相手が勤まる者がいるのかね?そろそろ木っ端共の相手は飽いたわ。」
やけに高飛車なガイコツがため息をつく。
「エフッ…エフッ…」
むせる?無精ひげ。
「ヤハハハ!ヤツらと会うのは久々だな!ヒノよ!」
太鼓の男が高笑いをし肩に止まっている鳥に語りかける。
「まーはっはっはっはっ!思う存分おれ様の威光を示してやろうではないかぁ!」
「奥方様は…」
眼鏡の男が指示を出していた美女に伺う。
「私は後から行くよ。主役は遅れて来るというしね。で、お前は…もちろん私と同チームだ。今回の第2の…いや、真の主役はお前だからな。
あ、『ヤツ』が蜂起するまでは単独行動してていいぞ。私が魚人島についたら合流してくれ。」
「シャー…おっとっと…ウス!お任せください!
じゃ、お先に深海に行ってきます!」
と顔全体、両手に包帯を巻いた大男に告げる美女。大男は本拠地を出発した。
「シリュウ達とラフィット達はここの留守を任す…まぁ麦わらの一味に会いたい奴がいたら連れていくが。」
「若造にゃあんまり興味ねぇなぁ…」
…特にないようだ。
「オンエア海賊団、ボニー海賊団、アクメイト海賊団は魚人島上の海域で待機。海軍が来たらシメておけ。」
「アッパッパッパ!つまらねぇ任務だなァ!まっ!今回は休みと思う事にするかァ!」
中華風の海賊服を着た手長族の男。
「へっ!そっちはうっかりミスとかするんじゃねぇぞ!?」
ピンク色の髪の下品な美女が悪態をつく。
「誰にモノ言ってる?…ま、かまわんさ…退屈な任務だからアプーが言う様にバカンスと思っておけば良い。」
「大頭!お任せください!命に代えてもこの任務果して見せます!」
尖った二本の髪の男が叫ぶ。
「そんなに命賭けんでもいい…仮にG-5が来たらアプー達に任せとけ。」
「だあ〜」
「いたたたた!こら!摘むな!アヤ!」
自分に引っ付いていた赤子を全力で殴り飛ばす美女。
「あう〜(怒)!!」
「うっ!は、始まった!皆の者!緊急退避ー!!」
かなり焦る眼鏡。
「ふう…疲れた…」
グッタリしている美女。
「月日を重ねる毎に…強くなられている様な…」
飲み物とタオルをすかさず渡す眼鏡。
「いや、強さ自体は生まれた時から変わってないよ。それだけに厄介だが…」
「ひょっとして…アヤお嬢様も…」
「ああ、連れていく…一人に出来んだろう。」
「確かに………?ところで…なぜこの時期に麦わらの一味が?」
「ああ…ちょっとそこら辺の記憶があやふやになっているが…この間船長に会ってな。」
「ああ…そういえばここ一年よくお会いに行っていましたね。
…しかし、なぜそんなにお目をかけに?今や立場は天と地ほど離れているというのに…」
「まぁ、そう言ってやるな。今はまだ未熟だが…あいつは世界を大きく動かす力を秘めている。
私はそれを眺めるのが好きなのさ。海賊王はあいつに任して…私は…世界そのものを変える…フレアに邪魔されようともな…
ま、とにかくこのイベントは飛び入り参加でもしないと始まらないからな…みんな気合い入れていけよ?」
「「「はっ!!」」」
〜魚人島〜???〜
「もう終わりか…?」
口や両手から血をこぼす魚人の男…血は全て他人のものだ。
「歯ごたえがない…せっかくESの効果を試そうと思ったのによ…」
詰まらない物を見る様な冷めた表情の男…ホホジロザメの魚人の前には血まみれで倒れる無数の人間とボロボロの船…全て海賊だ。
「ホ、ホーディ船長!あまり乱用したらダメだドスン!」
「弟の言う通りだハン!雑魚には素で勝てるんだヘッ!」
シュモクザメの魚人とハンマーヘッドの魚人が諌める。
「…………腹減ったぁ〜」
身長20メートルはある巨人…いや、『魚人』の大男が呻く。
「お前は黙ってろ!ロドン!」
「船だけでも〜食って〜いいか〜?」
メガロドンの魚人がボロボロになった船に近づく。
「…好きにしろ。」
「ユララララ〜食欲旺盛だねぇ〜」
巨大なカツオノエボシに乗っている女。
「ドスン以外見覚えがねぇな…新入りか?」
鼻がノコギリの様な男。薄紫の肌をしていてノコギリの様なギザギザな大刀を持っている。
「もう一つの島から連れてきたんですよ…近々起こす計画のためにね…」
「ほう…確か別の島のも合わせると兵力は20万だったか?…ネプチューン軍はひとたまりもねぇな…」
「えぇ…今の戦力でも成功するとは思うんですが…念のためですよ…アーロンさん。」
「シャッハッハッ!別におれに気を使う事はねぇぞ?
ここの総大将はお前なんだ。遠慮なく兵力として使ってくれ。
魚人島制圧のためにな!シャーハッハッハッ!」