荒神は覚悟を決め、家に帰った。
その覚悟とは、妹の永奈とちゃんと向き合う覚悟だ。
だが、一つ問題が在るのだ。
衝動。
もしかすると、永奈を傷つける形になる可能性がある。
そのことを、荒神は考えながら、家の目の前に来た。
(耐えきれるか?)
荒神は自分に問いかけた。
前から抑えていた衝動が、何故抑えられなくなっているのか、荒神自身は解らない。
だが、考えていても始まらない。
そう考え、荒神はドアノブに手を掛けた。
そして、
「た、只今」
ドアを開けると同時に、挨拶をした。
玄関には、体育座りをした、永奈が居た。
「お、兄ちゃ、ん」
永奈の目は半開きで、意識がはっきりしていなかった。
荒神は永奈に近寄り、
「どうした?」
「やっと、私に接してくれるのね」
そう言うと、両腕を使い荒神の首を膜様にし、抱きついた。
その行動に対し、荒神は涙を流した。
「・・・・・・クッフ」
「泣かないで。お兄ちゃんの気持ちは分かる。当然、炎月お兄ちゃんが死んで、記憶の隅で覚えていたけど、既に死んできた妹が突然、自分の目の前に現れたんだから・・・・・・」
荒神は黙って永奈の声を聞いていた。
そして、永奈の声は続いた。
「お兄ちゃんの持つ、衝動。抑えられなくなっているのは、知っている。理由は多分私のせい」
そんな言葉を吐いたが、荒神は責めなかった。
責めたところで、何をする?
永奈は立ち上がった。
何をするのか解らない。
「お兄ちゃんの体には、私とは関係なく、何らかの天使の力(テレズマ)が宿っているの」
「・・・・・・知ってる」
その言葉に驚いた。
流石にそこまでは、荒神の脳を見ていなかったのだろう。
「だから『ドラゴン』に入っているんだ」
超能力者の誰も『ドラゴン』の詳しい状態を知る者はいない。
永奈も例外ではない。
一つ分かった事がある。
『ドラゴン』は天使の力を持つ者だけがメンバーだということが。
少なくとも、推測であるが・・・・・・
「上条は宝くじが当たったとかで、旅行に行ってるんだ」
「・・・・・・なら」
声が聞こえた。
小さな声が。
荒神が永奈の顔を見ると同時に、
「なら、食事をしに行こ?」
荒神は首を縦に振り、永奈の手を取り、外に出た。
そして二人は食事をした。
金は在るため、永奈の望む物を全頼んだ。