自宅
突然永奈は泣き始めた。
「何かが・・・・・・変」
そう呟く。
自分の意思でなく、突然流れた物だった。
そのことを確認すると、永奈は荒神の脳内を探る。
そして分かった。
衝動。
自分の意思ではなく、勝手に衝動に襲われた。
「私がどうにかしなくちゃ」
そして、永奈は荒神が何処に居るのかを探るために、また脳内に入る。
人は普通、記憶を整理するために、分担されているが、荒神の脳は普通の人とは違う脳の構造をしている。
全を一つとして考える。
簡単に言うなら、遠回りに考えずに、全が関係していると思う。と言うことだ。
そして、探りを入れた結果、居場所を割り出すことに成功した。
窓のないビルだ。
「一先ず、急いで向かわないと!!」
一刻を争うことだった。
一分一秒無駄にできない。
もし失敗すれば、学園都市が崩壊しかねない。
「急がなきゃ」
そして、永奈は窓のないビルに急いだ。
その頃三人の居る部屋では、
「糞ったれの、阿呆共めがァ!!血を見るぞ!?」
(・・・・・・自分の無力さがバカバカしい)
自分の本性は別の所で生きている。
止められるのなら、さっさと止めたい。
死人が出る可能性はゼロじゃない。
「行くぞ!?」
衝動状態の荒神はまず、麦野に襲いかかった。
麦野の目には何が写っているのだろう。
荒神は考えた。
今自分が冷静な状態であれば、麦野の顔は恐怖で歪んだ笑顔にはならないハズだ。
「麦野!!」
ボーッっと、突っ立っている麦野に垣根は叫んだ。
その声は咆哮に近かった。
気づけば、麦野は頭を掴まれていた。
「ぐああああああああああああああああああああッ!!!!!?」
掴まれた時の衝撃が遅れて伝わる。
掴む力は段々と増した。
「くふふふふふふ!!怖いか!?ああ!?」
「・・・・・・ック」
その交換音を聞き、荒神は震える麦野の頬を舐めた。
「ふぁ!?」
この状況に麦野は別のことも考えてしまった。
死意外のことだった。
だが、その考えた事も、直忘れることになった。
ゴバッ!!と、轟音が鳴り響いた。
荒神に受けた攻撃だった。
その攻撃は垣根によるものだった。
「無視すんな!!」
荒神は壁にめり込んでいた。
だがその壁は直ぐに瓦礫と化した。
「いってー。うひひひ」
その笑いは垣根を震わした。
心拍数が一気に増えた。
恐怖。
その言葉が垣根の頭裏を過ぎった。
「ん?怖いかァ?あん!?」
垣根は黙り込んでしまった。
「面白みがねーなーおい!!」
荒神は首を傾げ、言った。
「い、一体何者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
気が動転したのか、荒神に突っ込んだ。
羽を使った打撃系の攻撃だ。
手応えは有ったが、羽はビクともしなかった。
グキィ!!と轟音が鳴った。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」
轟音が鳴ると同時に垣根の羽が折れ曲がった。
「俺に喧嘩売っておいて、もう終わりか!?」
ゆっくりと垣根に近づいた。
麦野は戦闘不能の状態。
俯せになった状態から、横を向いている顔から、涙と涎が一緒に流れている。
垣根はこの状況の改善策を考えた。が、無理だ。
圧倒的な力の差。
前にも感じた事がった。
だが、その時と今とでは、感覚が違った。
条件が合わない。
前の戦闘では、生かされたが、今回は死ぬ確率が高い。
呆然とした垣根。
そこに、一刺しの光となる人物が現れる。
ガシャンと、ドアが開く音がした。
垣根と荒神はドアの方を向いた。
(・・・・・・永奈)
普通の荒神は目を疑った。
だが、衝動中の荒神はそうではなかった。
永奈に殺す気で、殴り掛かった。が、
永奈の能力物質移動を使い、荒神は壁まで押し戻された。
どんどん奥へ押されている。
荒神は身動きを出来る状態では無かった。
「永奈?」
垣根はLEVEL5の名は全覚えている。
新しく入ったLEVEL5の名前も例外ではない。
「今から私が、お兄ちゃんを取り戻す!!」
永奈は断言した。
愛する兄の為に、自分の出来る精一杯の事をする。