「まだ考えることはあった。こんな自分は、誰にも好まれず、失敗ばかりの自分はこの世に必要ないんじゃないかって。ずっとずっと思い続けてきた。高校に入ってもそれは変わらない。しかもそれは膨らんでいくばかりだった。そんなときにさ」
一瞬の意図的な間。清奈は千尋を見た。
「清涼院さん。君を見つけたんだよ」
「!?」
「読書ばかりしてたり、これ言ったら気を悪くするかもしれないけど、人付き合いが苦手だったり、自分とは全然違うのに共感したんだ。この人なら心から信じられるかもしれない。心から接することができるかもしれない。そう思ったんだ」
儚げな笑み。
「屋上で呼び止められたときは運命かと思ったよ」
はははと軽く笑う。
「でもね……。信じられなかったんだ。共感した人も信じることができないのかと思うとね、もう自分のいる意味が見出せなくなった。そして、今に至るんだよ」
清奈はまたうつむく。
「本当に止めてくれてありがとう」
清奈は丁寧に頭を下げた。そして、もう言うことはないと口をつむぐ。