小説『混沌の魔術師と天空の巫女』
作者:白鋼()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

                第1章 ニルバァーナ

                ニルバァーナ、起動




「遅かったか・・・!」

ニルバァーナが復活してしまった・・・!
そう思っている内にニルヴァーナが歩き始めた。

「歩いてるよ!!」

ニルヴァーナを見て、ミントは驚く。

「お兄ちゃん、急がないと!」

「ああ。」

俺達はニルバァーナに追いつき、その場に降りた。

「ところで、これからどうする?」

「取りあえず、ニルバァーナを止める!
 動かせる方法があるなら、止める方法もあるはずだ!」

「・・・・・・。」

「シャルル、どうしたの?」

「この方角・・・このまま進めば・・・私達のギルドがあるわ・・・。」

「え・・・?」

「・・・・・・!」

俺もシャルルの見た方角を見る。
確かにこの方角には俺達のギルド化猫の宿(ケット・シェルター)がある。

「(まさか・・・敵もあの事を知ってるんじゃ・・・!)
 間違いない・・・俺達のギルドが・・・ある。」

「そんな・・・!」

「やばいよ〜!!!」

「急いで止める方法を探そう!」

俺達は全力で町の中を走り回る。






























「見つからないよ〜!!」

「くっそ!!!」

時間も限られている・・・どうすれば・・・!

「あれ?」

「ん?」

何か聞こえ・・・

























ガアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!


























どこかで竜が叫んでいる。
錯覚に陥りそうな程の大絶叫、それがいきなり響いてきた。

「ナツさん?」

「・・・だな。」

今日あったとはいえ、この声は間違いなくナツさんだ。

「うるさいわね・・・。」

「耳に響く〜〜〜〜っ!!!」





























少し
経って、収まったみたいだ。

「今のがナツさんなら・・・。」

「皆さんがいるかもしれません!」

「行ってみよう!!」

「行きましょ!!」

俺達は先程聞こえた声の方へ行った。































「いたぞ!」

「皆さ〜ん、大変です〜!」

「あ、ウェンディ!コージ!」

「ルーシィさん、どこに行ってたんですか?ヒビキさんもいなかったみたいだし。」

「実はね、六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルと戦ってたの。」

「そうだったんですか。」

「お兄ちゃん、そんな事より・・・!」

「ああ、そうだった。
 このニルバァーナが俺達のギルドに向かっているだ。
 なんとか止めようにも時間が・・・」

「その事なら大丈夫みたいだ。」

そこには、何故か半裸の男性がいた。

「あんたは・・・?」

「俺はグレイ、フェアリーテイルの魔導士だ。」

「じゃあ、ナツさんとルーシィさんと同じ・・・。」

「まぁそういう事だ。」

「ん?そこに倒れているのは・・・。」

六魔将軍(オラシオンセイス)のボスだ。もう1人の六魔将軍(オラシオンセイス)の奴も倒れたぜ。
 ・・・つうか、お前は誰だ?」

「俺か?俺はコージ。ウェンディ達と同じ、化猫の宿(ケット・シェルター)の一員だ。」

「お前か!」

「シャルル殿が言っていた、混沌竜、混沌の魔術師と名のるものか。
 ・・・しかし、まだこんなに若いとは思わなかった。」

グレイさんの近くに、もう1人、頭がハゲている人がいた。

「私は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラだ。」

「このおっさんが倒したんだぜ!」

「そうですか・・・!」

という事は、かなり魔力が強い人だな。
そういえば、聖十大魔道の1人にジュラって人がいたな。間違いなく本人だな。

「取りあえず、ニルヴァーナを操っていたのはこのブレインよ。
 操る人がいなくなればこの都市も止まるはず。」

「気に入らないわね。結局、化猫の宿(ケット・シェルター)が狙われた理由は判らないの?」

「確かに〜。」

シャルルの言葉に同意見に思い、そう言うミント。

「まぁ深い意味はねえんじゃねーのか?」

「多少気になることはあるが、これで終わるのだ。」

「・・・・・・・。」

「どうかしたの?」

「何というか・・・いや、今はこのニルバァーナを止めよう。」

「そうだな。デカブツが言っていたな制御しているのは王の間だとか。」

「あれか!?」

「あそこに行けばニルバァーナを止められるんだ!」






































「どうなってやがる・・・。」

「なにこれ・・・。」

「む・・・。」

「・・・・・・。」

「何1つ、それらしきものがねえじゃねーか!!!!」

「ど・・・どうやって止めればいいの?」

「ぬぅぅ・・・。」

「・・・やっぱり、そう簡単にはいかないか・・・。」

予想はしてはいたが・・・

「どうしよう?」

ん、何かウェンディが困っているなぁ。

「どうした、ウェンディ?」

「それが、解毒の魔法をかけたはずなのにナツさんが・・・」

たしかに苦しそうな顔をしていた。

「ナツは乗り物に弱いんだよ。」

「乗り物酔いですか・・・。」

「情けないわね。」

「乗り物酔い?・・・だったら、バランス感覚を養う魔法が効くかも、トロイア。」

「・・・おお!?」

ナツさんの調子が良くなっていった。

「おおおおっ!!!!平気だっ、平気だぞっ!!!!」

「よかったです、効き目が合って。」

「すげーなウェンディ!!その魔法教えてくれ!!!」

「ナツさん、それは天空魔法なので無理です。」

俺はそう言ってると、グレイさんが話をした。

「なあ、本当にここが制御頭なのか? そもそも、情報は正しいのか?」

「うむ、リチャード殿が嘘をつくとも思えん。」

「ちょっと、止めるとか制御とか言う前に
 もっと不自然なことに誰も気づかない訳!?」

「どういう事?」

シャルルの言葉に疑問に思うミント。

「・・・操縦席はない。
 さらに、ブレインは倒せたのに、ニルヴァーナは動き続けている・・だろ?」

「おいちょっと待て、まさかニルヴァーナは自動で動いてるってのか!? 
 すでにニルヴァーナの発射までセットされて・・・。」

「最悪の場合、そうなります。」

マスターからは出現やどういう魔法の事しか聞いていないからな。

「・・・私達の・・・ギルドが・・・。」

「泣くなよ、ウェンディ。必ず止めてやる・・・!」

「お兄ちゃん・・・。」

絶対に止めないと・・・絶対に・・・!










































魔導士ギルド 化猫の宿(ケット・シェルター)にて・・・

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!」

夜の中を走る人影があった。

「みんな大変だー! ニルヴァーナがここに向かってる!」

 そして、その言葉にただでさえ落ち着きのなかった全員が唖然とした。
 奇妙な衣装に身を包んだ者たち、クライスたちのギルド?ケットシェルター?のメンバーだ。
 連合軍にウェンディを含めた四人が参加しているためただでさえ気が気でなかったところにそんな話が飛び込んできたのだ、騒然となるのは当たり前だろう。

「何!?」

「連合軍の作戦が失敗したのか!?」

「バカ言うなよ、あのエルザやジュラだけじゃなくコージまでいたんだぞ!? 
 失敗するはずがない!」

「でも、ニルヴァーナはここに向かってるって・・・。」

皆がざわめく中で、悠然と構える老人が一人。
ケットシェルターのギルドマスター、ローバウルだ。
 
「マスター!」

「なぶら。」

手元の酒瓶を傾けながら静かに答える。しかし・・・











ごきゅ、ごきゅ














「「「「「「えーーーー!?」」」」」」

落ち着いた様子のまま、酒を注いだコップではなく、
酒瓶からラッパ飲みするローバウル。

「って、んな場合じゃない!マスター! 
 ニルヴァーナがここに向かってるんだって!」

「何?・・・誠かっ!?」

「「「「「「酒飲んでから喋れ!てか聞いてなかったのかっ!?」」」」」」

マスターは落ち着いていたのではなく聞いていなかったらしい。

「ニルヴァーナがここに向かって・・・これは運命か偶然か・・・。」

「ウェンディ達が無事だといいんだが・・・。」

「ああ・・・いざって時には俺達じゃ力になれないし・・・」

「でも、コージがいたのにニルヴァーナがここに向かってるなら・・・。」

「おいおい、不吉なこと言うなよ!」

ごきゅ、ごきゅ

「安心せい。」

「飲めってちゃんとー!!」

「光の魔力は生きておる。なぶら大きく輝いている。」

そのかと場にギルド内にいる全員は喜ぶが、

「けどこれは偶然じゃないわよ・・・。」

「ああ、コージ以外に俺達の『正体』を知ってる奴がいたんだ。」

「だからここを狙って・・・。」

ギルド内にいる全員は不安になる。

「なぶら。」

「長ェ付き合いだが、未だに『なぶら』の意味がわからん・・・。」

「マスター、避難しようぜ。ニルヴァーナは結界じゃ防ぎきれない・・・。」

ギルド内にいた誰もがそう思っていた。

「バカタレがァ!!」

マスターの言葉に全員が驚く。

「アレを止めようと我らの仲間が、連合軍の者達が必死に戦っておる。
 仲間の勝利を信じている我らがなぜ逃げる必要などない。」

マスターの言葉に全員は黙る。。

「なんてな・・・時が来たのかもしれん・・・
 儂らの罪を清算するときがな・・・。」





































現在、コージ達は・・・

「壊すか!」

「またそーゆー考え!?」

「こんなでけーもの、どーやってだよ?」

「まぁ、壊そうと思えば壊せますが・・・。」

「さらりと言ったね、コージ。」

「やはりブレインに聞くのが早そうだな。」

「簡単に教えてくれるかしら?」

「それはないだろ。」

「もしかして、ジェラールなら・・・。」

「え?」

ウェンディ、今ジェラールって・・・。
しかし、ウェンディは突然、何かを思い出したかのような表情をした。

「なんか言った?」

「ううん・・・何でもない・・・。」

「・・・・・・・。」

俺の予想だが、先程ナツさんがジェラールって聞いて、
エルザさんに会わせたくないって思っていたが、
もし、知れたら・・・ナツさんは・・・

「ウェンディ。」

「何?」

俺はウェンディに近づき、他の皆さんに聞こえないように話をする。

「ジェラールは本当にいたのか?」

「っ!!」

「本当・・・なんだな・・・。」

「・・・うん。」

「・・・わかった。」

俺はナツさん達の方へ顔を向ける。

「俺達、少し心当たりがあるので、探してきます。
 シャルル、ミント、お前らも来い。」

俺はウェンディの手を握り、先程来た階段を下りる。

「ちょっと、2人とも、待ちなさい!」

「待ってよ〜!!」

シャルルとミントも降りて行く。

「どうしたんだろ?」

「うむ・・・。」

「取りあえず、俺達は俺達で探ろうぜ。」












































「どこだ・・・ジェラール・・・。」

俺とミントとシャルルは(エーラ)を出し、俺はウェンディを抱えて空を飛び、
ジェラールを探していた。

「まずいな・・・そろそろ俺達のギルドが近くに・・・。」

「は、早く・・・そのジェラール・・・探さないど・・・!」

「・・・無理するな、ミント。」

「シャルルは?」

「私も、そろそろ限界・・・。」

2人とも、結構魔力が無くなって来ているみたいだしな・・・。

「俺の肩に乗れ。」

「そう〜する〜・・・。」

「助かるわ。」

ミントは右肩、シャルルは左肩に乗る。

「そういえウェンディ、あんた鼻がいいんでしょ?
 そのジェラールの匂いはわかる?」

「うん・・・ただ。」

「ただ?」

「あのジェラールは私の知っているのとは少し違う匂いがする。」

「え?」

俺は驚く。

「コージ、悪いけど・・・。」

「・・・ああ。早く探そうか。」

匂いが違う・・・何年も会ってないから匂いも変わったから・・・か?

「でも何で私達のギルドが狙われたんだろ・・・?」

「確かに、理由がわからないわ。コージ、何か知らないの?」

「・・・マスターから聞いた話がある。」

「マスターから?」

「ニルヴァーナを作った一族がいたんだ、その名はニルビット族。」

「ニルビット族?」

「聞いた事ないわ。」

「だが、ニルヴァーナは危険な魔法だったんだ。
 ニルビット族は自分達で作った魔法を自らの手で封印した。
 悪用される事を怖れて、その一族は何十年も何百年も封印をも守り続けた。
 そのニルビット族の末裔で形成されたギルドが化猫の宿(ケット・シェルター)だ。」

「そんな話聞いてないわ。」

「無理もない、俺も今日その事を話そうとしたが、
 お前らが先に行っちまったから話せなかったんだよ。」

「ごめんさない・・・。」

「いいよ、今更。」

「でも、何で私達だけで?」

「それは・・・ニルビット族の末裔はマスターだけだからだ。
 マスターはもうかなりの年だ。身体に何かあってはいけないだろ?」

「じゃあ他のみんなは?」

「・・・さあね。でも、マスターだから何かあるはずさ。」

「そうだね。」

「取りあえず、ジェラールを探そうよ。」

「(言えない・・・今は言えないが・・・お前達が知ったら・・・。)」

俺は心の中でそういう罪悪感を感じる。































少し時間が経ち・・・

「建物とかで、中々見つからないな・・・。」

「!ジェラールの匂い!!」

「本当か!!」

「あっち!!」

「よし!!」

俺はウェンディが指をさした方へ向って行った。そこには・・・

「エルザも一緒ね。」

毒で倒れていたエルザさんがいた。

「ウェンディ、無事だったか・・・君は?」

「ウェンディとシャルルと同じギルドのメンバーのコージです。」

「同じく、ミントです!」

「そうか。」

エルザさんはそう言い返す。
そして、エルザさんの横にある人がいた。

「ジェラール・・・!」

顔つきが出会った頃の面影があり、髪の色も昔と同じ・・・ただ・・・。

「(確かに・・・少し匂いが違う・・・。)」

「・・・君達は?」

「「!?」」

俺達を憶えていないのか・・・!?

「俺は・・・」

「ジェラールは記憶が混乱している・・・。
 私の事も君達の事も憶えていないらしい。」

「俺の知り合い・・・だったのか?」

「「え?」」

「(記憶が・・・!?だから知らなかったのか・・・。)」

「もしかしてあんた、ニルヴァーナの止め方まで忘れたんじゃないでしょうね!!」

「・・・もはや自律破壊魔法陣も効かない。
 これ以上打つ手がないんだ、すまない。」

「えっ!?」

「そんな・・・。」

「最悪のお知らせだな・・・。」

「それじゃ私達のギルドはどうなるのよ!!!
 もう・・・すぐそこにあるのよ!!!!」

ゴゴゴゴ・・・

「何だ?」

「・・・まさか!上から見てきます!!」

俺は(エーラ)を出し、空を飛ぶ。そこに見えたのは・・・。

「ニルヴァーナが発射する!!!!」































魔導士ギルド 化猫の宿(ケット・シェルター)にて・・・

「マスタ〜!!」

「ひぇ〜!!」

「ここまでだ・・・。」

「ううう・・・。」

「何をうろたえる。これがワシ等の運命、なぶら重さ、罪の制裁。」

ドン!!

「やらせない・・・。」

「うぬっ!?コージ・・・!!」

「ギルドは・・・やらせない!!!!!!!!」

やらせない・・・絶対に・・・!!!!!

-12-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える