小説『混沌の魔術師と天空の巫女』
作者:白鋼()

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                第1章 ニルバァーナ

                   緋色の空




「ジェラール・フェルナンデス、連邦反逆罪で貴様を逮捕する。」

ジェラールは、抵抗する事もなく、頑丈そうな錠をかけられた。

「くそ・・・!」

「待ってください!ジェラールは記憶を失っているんです!
 何も覚えてないんですよ!?」

「刑法第十三条により、それは認められません。
 記憶をがないからといって許されるほど、彼のした事は簡単な事じゃない。」

ウェンディの言葉も、刑法をいう理由で無理がある。
俺もそれはわかってはいるが・・・でもやっぱり・・・。

「で・・・でも!!」

「いいんだ。抵抗する気はない。」

訴えるウェンディにジェラールが遮った。

「君達の事は、最後まで思い出せなかった。本当にすまない、コージ、ウェンディ。」

ジェラールは俺とウェンディを見ようとせず俯いたままそう言った。

「この2人は昔、あんたに助けられたんだって。」

シャルルがジェラールにそう言った。

「そうか・・・俺は君達にどれだけ迷惑をかけたのか知らないが、
 誰かに助けた事があったのは嬉しい事だ。」

「ジェラール・・・。」

ただし、俺は少し謎があった・・・。
ジェラールにしては臭いが少し違い、何か違和感を感じる。
・・・連れて行ってしまうのに、何だろう、このそうじゃないという感じは・・・。

「エルザ。」

ジェラールはエルザさんの方を見た。

「いろいろ、ありがとう。」

心から感謝しているとわかるその言葉、でもエルザさんは顔をあげる事はなかった。

「(エルザさん・・・。)」





























「(止めなければ・・・私が、止めなければジェラールが行ってしまう。
 せっかく、悪い夢から目覚めたジェラールを
 もう1度暗闇の中へなど行かせるものか・・・!)」

拳を握りしめ歯を食いしばるエルザ。

「他に言うことはないか?」

「ああ。」

「死刑か無期懲役は免れないぞ。2度と誰かと会うこともできんだろう」

ジェラールは何も言わずに頷く。

「そんな・・・。」

「いや・・・。」

「・・・っ!」

ルーシィさんは驚き、ウェンディは俺にしがみついて泣き、
俺は拳を握りしめ歯を食いしばった。

「行かせる、ものか!!!」

エルザが動こうとしようとした、だが・・・










「行かせるかぁーっ!!」









ナツさんが評議員を押し退け突き進む。

「ナツ!」

「何してるの!相手は評議員よ!?」

グレイさんとルーシィさんはそう言うが、ナツさんは止めなかった。

「そいつは仲間だ!!!!連れて帰るんだーーーーー!!!!」

仲間・・・ナツさん・・・!

「よ・・・よせ・・・。」

ジェラールはそう言うが、ナツさんは止めなかった。

「と・・・取り押さえなさい!!!」

多数の評議院の兵がナツさんに押し寄せて来た、だが・・・

「行けナツ!」

なんと、グレイさんが加勢した。

「こうなったら、ナツは止まんねえからな!それにな・・・気に入らねえんだよ!
 ニルヴァーナを防いだ奴に・・・一言も、労いの言葉も無えのかよ!」

「それには一理ある、その者を逮捕するのは不当だ!」

グレイさんの言葉にジュラさんも加勢した。

「くやしいけど、その人がいなくなると、エルザさんが悲しむ!!!」

さらに一夜さんも加勢した。

「もー、どうなっても知らないわよ!」

「あいさー!」

ルーシィさんとハッピーもヤケクソで加勢した。

「やっぱり・・・ジェラールは連れていかせない!!!」

俺も我慢できずに、加勢へ向かう。

「お願い!!!ジェラールを連れて行かないで!!!」

ウェンディはそう泣け叫ぶ。

「2人の恩人っだし、私も加勢だぁ!!!」

「今回は、同意見ね。」

ミントとシュルルも加勢してくれた。

「来い!!!ジェラール!!!お前は、エルザから離れちゃいけねえっ!!!
 ずっと側にいるんだ!!!!エルザの為に!!!!
 だから来いっ!!!!俺達がついてる!!!!仲間だろ!!!!」

「そうだよジェラール!!!今は思い出せなくても!!!!
 俺達の事、絶対に思い出せれるよ!!!!来てくれぇ!!!!!」

ナツさんと俺の言葉ににジェラールは歯痒い気持ちでいっぱいだった。
俺はわかってはいる、わかっているけど・・・!!!!!

「全員捕えろォォォ!!!!公務執行妨害及び逃亡幇助だーーーー!!!!」

「ジェラール!」

「行くな!!ジェラール!!!!!!!!」

ナツさんと俺は叫んだ。その時・・・!

「もういい!!!!そこまでだ!!!!」

エルザの一言で俺達全員は固まった。

「騒がせてすまない・・・責任は、全て私が取る・・・。」

エルザさんの口から沈痛な言葉が出てきた。

「ジェラールを・・・連れて行け・・・。」

「エルザ!?」

エルザさんの言葉に納得がいかないナツさんは突っかかろうとした。

「・・・・・・。」

しかしエルザさんは何も言わなかった・・・。

「エルザさん・・・。」

「そうだ・・・。」

ジェラールが何かを思い出し、エルザさんの方を振り向いた。

「お前の髪の色だった。」

「・・・!」

今のジェラールは笑顔だった・・・。
まるで、何か大切な事を思い出したかのような・・・。

「さよなら・・・エルザ・・・。」

「・・・ああ。」

そのままジェラールは護送車の中へと消えていった・・・。




































もうすぐ夜が明ける時間帯まで俺達はいた。
エルザさんはどこかで1人にきりになれる場所へ行った。

そして、ウェンディは悲しそうに泣いている。

「ジェラール・・・。」

「ウェンディ・・・。」

俺も今のお前の気持ちはわかる・・・
ただ、俺の場合は何かの疑問と違和感があった。
俺達と出会ったジェラールはあいつなのかという・・・。
本当は信じられないと思うが、俺はそんな気がしていた。

「(今はそれより、ウェンディをなんとかしないとな・・・。)」

シャルルとミントも一緒に行こうと思ったが・・・



『あの子を元気づけるのは、あんたの方がいいわ。』

『私達よりもウェンディの事、知ってるし、できるでしょ?』



あいつらにそう言われた・・・。

「ウェンディ。」

俺はウェンディの隣に座る。

「何・・・お兄ちゃん・・・。」

まだ泣いてはいた。

「こんな事をいうのはどうかと思うけど・・・
 あいつは、ジェラールは許されない事をしてしまったのは事実だ。」

「・・・うん。」

「でも、ジェラールが俺達を助けてくれたという事実は変わらない。
 あいつは、俺達の大切な友達で仲間だ。」

「・・・そうだね。ジェラールが何をしても、私達の恩人。」

「ああ。」

「それにね・・・今はお兄ちゃんがいる・・・。」

ウェンディは俺の方を見る。

「・・・そうだな。」

「お兄ちゃんは・・・私を1人にしないでね?」

「当たり前だろ!!俺はお前の兄だからな!!!」

「・・・うん。」

しかし、ウェンディの心の中では・・・

「(やっぱり・・・妹止まりかな・・・私は・・・お兄ちゃんが好き・・・
 1人の男性として・・・。あの日から・・・でも、お兄ちゃんは・・・。)」

本当はどう思っているんだろう・・・とウェンディはそう思っていた。

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