小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

まだ朝早いので、教室には男子が数人しかいなかった。ランドセルから教科書を乱雑に取り出し、机の中に無造作に放り込む。

「哲也!早くサッカーしにいこうぜ」

いつもの早朝サッカー仲間がやってきた。

「あと10秒待って」
一時間目の準備をしておかなければ先生に怒られる。そう思い、机の中に手をいれた瞬間、何か四角くて固い

ものがあった。不思議に思い出してみる

「どうしたの?」サッカー仲間も俺をのぞきこむ

「ラブレターだ!」俺より先にサッカー仲間が気付く。

急いで隠そうとしたが、後の祭りだった。

「おい、見せろよ」「ヒュー」「誰から誰から」

俺はその当時、女嫌いで通っていたので、友人の手前迷惑そうな態度をとることにした。

「読んでいいぞ」

心とは裏腹な事を言う。

仲間が手紙を開けて読み上げる

「哲也君、ずっとあなたのことが大好きでした。美香」

俺は思いもしなかった名前にただただ驚いた。嬉しかった。

「あの男女の美香!?」

「お前って美香とラブラブだったの」

「ヒューヒュー」「おあついな」

仲間全員で俺を冷やかしにかかってきた。

「誰が美香なんか好きなもんか。好きだって言われて迷惑だ」

俺は本心とは裏腹なことを言う。俺がそういった瞬間仲間が教室の入り口を見て黙り込んだ。

俺も入口を振り向いた。

そこには美香が立っていた。

「……美香」



教室では朝の会が行われている。

あの後、俺らは美香にこてんぱんにやられた。サッカー仲間はみんな負傷をおっている。

特に俺はバケツで叩かれた。でも不思議と痛みなんかちっとも感じなかった。もっと叩いてくれとも思った。
先生が深刻な顔で話し始める。

「実は皆さんに悲しいお知らせがあります。美香さんがおうちの事情で今日で転校することになりました」



俺は居酒屋トニーで店のおばちゃん相手に酔っぱらってグタグタと昔話をしている。

「それで、どうしたの」

おばちゃんがハンカチで涙を拭きながら尋ねてくる。

「その日、自転車で美香の家まで行ったさ、でも間に合わなかったんだよ。」

「かわいそうにね」

おばちゃんはおいおい泣いてくれた。このおばちゃんのこういう所が好きだ。

「でも、4年前あいつが偶然にも小山小に教師として赴任してきた。まさしく運命だと思わない?」

「それで4年も告白しないなんて」

おばちゃんが呆れ気味に言う

「そのうちするよ。」

俺は飲んでいたビールを一気に飲み干した。

-10-
Copyright ©sakurasaku All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える