小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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俺がロケ現場で椅子に座って台本を読んでいたら、優海ちゃんが隣に座った。

「晃さん、はいどうぞ。優海、晃さんのためにお菓子作ってきたんです。」

優海ちゃんがお菓子を差し出してきた。

「本当?嬉しいな〜さすが優海ちゃん気がきく!」

俺はそう大げさに褒めて不恰好なクッキーを口に入れた。

「昨日の夜ね、旅館の厨房借りて頑張って作ったから、おいしいと思う」

優海ちゃんは飛びっきりの笑顔で答えた。

優海ちゃんって本当に純粋でいい子なんだな〜となんとなく思った。

「美香先生のせいよ」

突然、エキストラで来ていた村の主婦の怒った声が、俺の耳に飛び込んできた。

「優海ね、晃さんのことを思っておいしくなーれおいしくなーれってクッキー作ってたの」

優海ちゃんが何か言っているような気もするけれど、聞こえなかった。

「うちのよっちゃんは本当はいい子なの。お宅のひろしくんにいじわるするはずないもの」

「そうよそうよ。美香先生の教育が悪いからよ」

「あんな子どもも産んだことないような小娘にうちの子まかせらんないわ」

「今日の夜の保護者会わかってるわね?」

[もちろんよ]

「徹底的にこらしめてやりましょう」

「この際、教育委員会に言って担任変えてもらいましょうよ」

「賛成!]

思わず顔を見ると、この間校長室で見たのと同じ顔ぶれの保護者達だった。

俺はただそれを聞いていることしかできなかった。

しばらくあいつのことを考えていた。

「ねぇ、晃さん明日の夜、お星様をみにいきませんか」

「うん」

「本当。嬉しい」

「うん」

「お星様にずっと晃さんと一緒にいれますようにってお願いしちゃおうかな」

「うん」

「ねぇ、晃さん」

優海ちゃんに名前を呼ばれて我に返った。

「あっ、何?」

「お星様に何のお願いする」

優海ちゃんはいつも唐突だ。何故お星様なんだろう。まあいいや。

「えっとあれだよ……優海ちゃんみたいなかわいい女の子と一緒にいられますようにだよ」

「もう、晃さんったら。人がたくさんいつんだからね」

「優海ちょっと」

「はーい」

優海ちゃんは、マネージャーに呼ばれてようやく向こうに行った

俺に出来ることは何か?あいつには世話になりっぱなしだ。

ずっと考えていたけれど出した結論は「ない」だった。




優海、せっかく晃さんといい感じに喋ってたのに、早紀さんったら。

優海はほっぺたをぷーっと膨らませて早紀さんのところに行く。

「晃さんと何しゃべってるのよ!」

早紀さんは怒っている。なーんだそのことか。

「……ちゃんとわかってるって」

「本当に?」

早紀さんがしつこく聞いてくる。

「だって晃さんのこと好きになっちゃうからしゃべっちゃダメなんでしょう」

「その通り」

早紀さんが大きくうなづく。

「それはもう大丈夫よ」

優海は自信たっぷりに答える。

「本当に?」

早紀さんがしつこく聞いてくる。

もう。早紀さんって本当に心配性なんだから。

「だってもう好きになっちゃったんだもん。」

優海がVサインを作って満面の笑みで答えた。すると

「(悲しそうに)優海!!」

早紀さんは何故か悲しそうに大声で叫んだ。

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