自分の全てが嫌になる。仕事も辞めて自由になりたい。明日にはもうやめちゃおうか。
こんな村出て行こうかな。
給料は安いし、ストレス多いし、残業代だって出ない。
川岸の大きな石の上に座りながら、大きくため息をついた。
別にいいじゃん。考えるのは自由でしょ。
もう一人の自分に言う。
自分に明日にはちゃんと仕事行くから許してよ。
そういえばここ昔、てっちゃんとよく来たな。
あの頃、朝から晩まで暇さえあれば二人で石投げの練習してたな。
懐かしい。
そうだ。ここであいつとも出会ったんじゃん。
あいつ私のことお母さんって呼びやがって……
今日もかぼちゃ見に来てるだろうな。
こんな姿は見せられねえから、明日は元に戻ろう。
なんだか気持が軽くなった気がして、立ち上がり石を思いっきり投げてみた。
俺は言われた通りに細い道を歩いていくと、一人で川辺に座っているあいつを見つけた。
声をかけようとしたが、あいつが泣いてるのに気付き、何もできなくてただ、その場に立ち尽くした。
30分ぐらい、俺はあいつを見ていた。
あいつが急に立ち上がり石を川に向かって投げる。
石は2回跳ねただけですぐ落ちた。
意外にこういうのは下手なんだな。
俺は後ろから石を投げた。
石は6回跳ね、綺麗に川に沈んだ。
あいつが驚いて後ろを振り向く。
はずだった。
俺は石を投げようとした瞬間に足を滑らせ、藪の方に投げてしまった。
次の瞬間、藪の中にいる虫という虫すべてが出てきて俺に襲いかかった。
「ひぃい。助けて〜」
生まれも育ちも東京23区で、虫とは縁遠いおしゃれな俺は思わず叫び声をあげ、尻もちをつく。
「何してんだよ!」
あいつが俺に気付いた。
「む、虫の研究だよ。今度のロケで虫のドラマとるからな」
自分でも意味不明だと思う。
あいつが怪訝な顔でこっちを見ている。
「というのは嘘で……たまたま通りかかってさ。あれ、どうしたの?泣いてるの?」
「今は一人にしてよ」
衝撃の言葉を聞いた。
俺はショックだったけれど、無理やりあいつの隣に座る。