窓の外を見ていても晃さんは、いつまでたっても帰って来ない。
優海さすがに疲れちゃった。
夜中の12時ぐらいにやっと帰ってきたと思ったら、酔っ払いになってて、すっごく楽しそうだった。
この村、そんなに楽しいんだ。
あのときの晃さんと美香先生を思い出す。
熱い友情じゃない。
優海お馬鹿だけど、こういうことは鋭いの。
色々考えていたら、初めて夜中一睡もできなかった。
朝、牧子さんが迎えにくる。
「優海、どうしたのその顔」
「優海、この村無理なの」
優海初めて泣きまねをした。
「そんなこと言ったってあと9日でもう終わりなんだから」
「お願い、後のシーンスタジオで撮らない?」
「ええっ。そんなの無理だって」
「社長にお願いして。ねえお願い、牧子さん」
「でもさ、優海、もうちょっと我慢したらさ」
「今度の写真集、水着も1枚なら入れてもいいから」
「えっ、本当に?あんなに嫌がってたのに。」
「早く、社長にお願いして、お願い。優海ここにいたら気がおかしくなりそう」
「わかったわよ。しょうがないな」
牧子さんは社長に電話をかけた。
「これでいいよ。二人を引き離せる」
優海の心の中の悪い優海がそういう。
うちの社長は芸能界のドンって言われるぐらいのすごい人。
だから明日にはロケ隊も晃さんも優海もみーんな東京に帰ることになると思う。
優海、卑怯だけど優海にできることはこれしかないもん。
優海だって晃さんのこと好きだから。
美香先生に負けないくらい好きだから。
「美香先生、ごめんね。」