晃さん、大変です!!
義信がまだ集合時間には3時間早い午前7時、部屋にやってきた。
「なんだよ。朝早くから」
俺は不機嫌ながらも部屋の戸をあけてやった。
「ロケが……中止に」
義信は真っ青な顔で言う。
「ロケが中止!!!」
俺はこれでもかってぐらいの大声で思わず叫んだ。
「……優海さん、優海さんのロケ中止になって、優美さんだけ東京に帰るみたいです!」
義信がなんとか最後まで喋りきる。
「えっ。どうして、なんで?優海ちゃんだけ」
そこへ突然、優海ちゃんが戸を勢いよくあけて入ってきた。
「晃さん、それ嘘なの!いや嘘ではないけど。嘘なの」
優海ちゃんは必死に訴えている。
そこへ突然牧子さんが戸を勢いよくあけて入ってきた。
「だからどういうことなの。優海の言うとおり東京帰れるようにしたじゃないの」
「違うの!優海が言ってたのはそういうことじゃないもん」
「もう!優海!一体何がしたいの?」
「優海は……ここにいたいの!東京になんて帰らない」
優海ちゃんは走って出て行った。
「優海!」
牧子さんが追いかける。
俺と義信はしばらくあっけにとられていた。
「……何が何だかよくわからないけど、中止じゃないってことか?」
俺が呟く。
「多分、そうだと思います」
義信も不思議そうにつぶやく。
何だか昼ドラを見てたときのような疲労感が俺達を襲った。
「監督、俺のかぼちゃちゃん写るようにしてね」
「わかった。晃わかったよ。」
俺の余りにしつこい要望に監督がとうとう折れてくれた。
今日はなんと小学校でロケだ。
俺のかぼちゃちゃん、映画デビュー決定だ!
かぼちゃちゃんとこの古い木造平屋作りの学校、うーーん。最高の画になるな。
「晃〜!」「キャー」「かっこいい」
窓から子ども達が手をふる。
子ども達と一緒に美香も顔を出してこっちを見ていることに気が付いた。
「おい、美香!お前も俺にみとれてんのか?」
俺は校舎に向かって叫んだ。
「何言ってんだよ。この勘違い野郎!さっさと仕事しろよ!」
美香が叫ぶ。
美香は今日も元気みたいだ。
その時、優海ちゃんがいきなり俺の腕を掴む
「どうしたの?優海ちゃん?」
「さっきは、なんか迷惑かけちゃってごめんなさい」
「迷惑?あぁ朝のこと?全然いいよ。気にしないで!俺は女の人に迷惑かけられたなんて思ったことないからさ」
俺は決めポーズつきで答える。
「……優海、ごめんなさい。悪いこと考えてたの」
優海ちゃんはそう言うと涙をポロポロ流し始めた。
「な、なに。どうしたのいきなり?」
周りが騒然としてくる
「何、一体晃さんと優海ちゃんに何があったの?」
野次馬の声が聞こえてくる。
やばい、また週刊誌にかかれる。
俺はこの時は、自分のことで頭がいっぱいだった。
「優海、晃さんと美香先生を引き離そうとして」
「……えっ、俺と美香を?どうして?」
「……だって晃さん、美香先生に毎日会いにいくし」
「いや、あれはあいつじゃなくて俺のかぼちゃちゃんい会ってるだけだよ。」
優海ちゃん、勘違いにもほどがある。
「……嘘。優海わかるもん。かぼちゃじゃなくて、いつも美香先生に会いにいってる」
「……何馬鹿なこと言ってるんだよ。美香って……あの……よく見て。あいつだぞ」
俺は窓から覗いてる美香のほうを指差す
「優海ね、いつも見て」
「優海、ちょっとこっち来なさい」
牧子さんがしゃべりかけてた優海ちゃんを無理やり引っ張っていく。
俺は何が何だかわからずしばらく立ち尽くした。
「俺が……どうしてあんなやつを好きになるんだよ」
俺は小さく呟いた。