小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

放課後、子ども達と教室から外で行なわれているロケの様子を見ていた。

こうやって見ていると晃はやっぱり芸能人なんだなと思う。

あいつがこっちに気づき、わけのわからない声をかけてくる。

「おい、美香。俺に見とれてんのか」

とても嬉しい。

一瞬「そうだよ」と認めてやろうかと血迷った。

けれども次の瞬間、血迷わなくてよかったと思った。

優海ちゃんが、あいつの腕を掴みながら泣いている。

そうだよ。そうわかってたんだよ。

本当に私って馬鹿だ。

声なんかかけてくれなければよかったのに。

いたたまれなくなり、教室を飛び出す。


校舎中を探した。

美香は、理科準備室にいた。

必死に試験管の整理をしていた。

よく見ると、目に涙を浮かべている。

俺はわざと勢いよくドアを開けて入っていった。

「おい、どうしたんだよ。何泣いてるんだよ」

「うわっ!……びっくりした……。何してんのよ。こんな所で」

「たまたま通りかかったらさ、元気なさそうだったから」

「……ありがとう。」

美香は少し笑って答える。

「俺は……心配なんだ。お前が元気なさそうにしてると」

俺はこの雰囲気と勢いにまかせて言う。

「……ありがとう。いつも心配してくれて。」

美香が背中を見せながら答える。

俺は美香の手を掴む。

「……俺のこと、もっと頼ってくれよ。俺はいつでもお前のこと考えてるんだから」

俺は一生分の勇気を使って言う。

「……てっちゃん。」

美香が何かいいかけたその時

「ドーーーン」

ごう音が鳴り響き、ドアが倒れる。

倒れたドアの上で美香のクラスの子ども達が数人、子どもながらに気まずそうに愛想笑いをしている。

「先生、こいつが押した」

「違うよ、よっちゃんが聞こえないって言ってさ」

「最初に言い出したの、和也くんだよ」

美香は無言で顔を上げた。

「何してるのよ!!!」

美香の怒った声が校舎中に鳴り響いた。

俺は自分の運の悪さを恨んだ。




その日の夜、私は雑草をとるふりをして、いつまでもあいつを待っていた。

本当に自分でも馬鹿だと思う。

でも少しでも会いたかった。

結局あいつは来なかった。

そりゃそうだよね。

優海ちゃんが泣くほどもめてるんだから、こんな所に油売りにこれるはずがない。









-33-
Copyright ©sakurasaku All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える