小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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晃がマンションの一室を訪ねている。

戸がそっと開いた。

「待った?」

「もう、しょうがないわね」

女はそう言うとフェロモン全開で晃の体に絡みついた。



「先生、先生」

子ども達に言われて我に返った。

私は授業中に何を考えていたのだろう

「先生、よっちゃん教科書読み終わったよ」

「あぁ、ごめん」

「次何すればいいの?」

「はい、じゃあ次はワークを出して下さい」

私この頃どうかしてる。

この間会ったのは一か月前、連絡とったのは一週間前……

気がつくと呪文のように唱えている。

本当に私は馬鹿女だ。恋で自分を見失ってる。

わかってる、わかってるけれどどうすれば自分を取り戻せるのか見当もつかない。



仕事を終えて、学校の外に出る。

久しぶりに山を見ると段々と赤や黄色に染まりつつある。

夕方になると風も冷たく、ジャージの上には薄手のブルゾンが手放せなくなった。

トニーのカウンターに座り、佐和子と二人で久しぶりに麦酒を浴びるほど飲んだ。

「一か月も会ってないし、一週間も連絡とってないんだよ!ねぇもう私のこと飽きたのかな?」

佐和子は穏やかな表情で言った。

「さあ、人の心なんて誰にもわからないもの」

「だってかぼちゃの写真付きでメール送ったらさ、いつ返事来たと思う?」

「3日後に、「よかった」ってたった4文字で返ってきたんでしょ」

「よく知ってるね。さすが佐和子……まさかエスパーだったんじゃ」

「この話しもう4回目よ」

冷静な佐和子の言葉で一瞬酔いがさめた。

「うん、そんな気がした。ごめん……」

「もう、気になるなら自分で電話かけて確かめればいいのに」

「……だって、電話かけて知らない女出たらどうする?今、晃シャワー浴びてるのって」

「もう、美香ちゃん!」





車の横揺れが気持ちよくて、寝不足の優海はついついあくびがでちゃう。

でも今日は眠れない。あと少しで久しぶりに晃さんに会えるんだから。

「優海、その大事に抱えている箱何?」

牧子さんに気付かれちゃった。牧子さんって鋭すぎて困っちゃう。

「駄目よ。牧子さんの分はないんだからね」

「さては……晃さんに作ったの?」

「うん。牧子さんよくわかったね。何でもお見通しなんだから」

「でも、晃さん恋人ができたとかって聞いたけど……」

優海、どうしようもなく切なくてプリンが入った箱をギュッと抱きしめたの。

「……いいの。だって好きなんだもん。わかってるけど優海どうしても好きなんだもん」

自然と涙がポロポロ流れてきた。

牧子さんは鞄からハンカチを取り出し、優しく優海の涙を拭いてくれた。

ハンカチは薔薇の匂いがしてなんだか心が落ち着く。

「来月ラブアゲインが公開になるから、これからまた晃さんと仕事一緒になることが多いわ。頑張りなさい。私も社長も応援してるから」

「うん。ありがとう」

優海のつらい恋を応援してくれる人が沢山いて嬉しい。今度は嬉しくて涙が出てきちゃった。






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