小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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さっきまで青色が幅をきかせていた空も段々と赤色に場所をとられはじめてきた。

いつも使う高層ホテルの最上階のバーは時間が早いせいか今日はとても賑やかだった。



「これで満足だろ」

俺がそういうと美香は気まずそうに黙って何も答えなかった。

「こんな所どこがいいんだよ。俺の育った街の方がな」

そういいかけた時、携帯の電話が鳴り慌ててその場を離れた。




あんなこと言うんじゃなかった……

私がまるでオシャレなバーとかホテルとか好きみたいだ……

「これで満足だろ」

晃が呆れながら言ったが私には返す言葉がなかった。

気まずさがピークに達した頃、タイミングよく晃の携帯が鳴りバーの外へ出ていった。

夕焼けに染まっていく街を見ながら、トロピカルジュースを一口飲む。

「やっぱり彼女なんじゃない?」

後ろのテーブルにいる同じくらいの女性達の言葉が耳に入ってきた。

「まさか、そんなわけないじゃん」

「そうだよね。晃があんなレベルの女と付き合ってるのか心配して損しちゃった」

もう耳にタコができるぐらいこの言葉は聞き飽きている。

聞こえていないふりをして、またトロピカルジュースを一口飲んだ。

「そうだよ。晃はそんなに安っぽくないよ」

最後の一言で致命的なダメージを受けた。

私と一緒に居るところが見つかると晃の価値まで下がってしまうかもしれない。

どうして今まで気がつかなかったんだろう。

「またせて悪いな」

晃が呑気に口笛を吹きながら戻ってきた。

「いいえ、とんでもございませんよ」

後ろの席にも聞こえるようににこやかに丁寧に答えてる自分がいた。


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