小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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背中に当たる日差しが強すぎて痛い。蝉がうるさく鳴いている。あと2カ月近くこれが続くとなると憂鬱だ。

うちのクラスのささ虫の研究が、教育委員会から注目されたらしい。今度偉い人が沢山見に来るので、校長先

生が水槽をもう一つ増やすと張り切っている。もちろんささ虫を捕獲し、世話をするのはこの私なのだが。

「あと20匹ぐらいか」

はてしない数にため息をつく。

その時、後ろから声をかけられた。

「先生、今日も虫とってるの」

この声は……もしかして……

後ろを振り向くと、やっぱりそうだった。

 「何しにきたんだよ」

どすのきいた低い声に、晃っていう男は一瞬たじろいだが、再び話しかけてくる。

「いやー先生に、この間のこと謝罪しようと思って」

「はっ?」


「こんな美しいレディに暴言をはいて、本当に申し訳ありません」
   
晃っていう男はなぜか真剣な顔で目をみたまま、こっちに近づいてくる。

「これ受け取ってください。僕の気持ちです」。

晃っていう男はバラの花束を差し出してきた。

男から花束を貰えるという初めての事態に困惑したが、私の答えは決まっていた。

「……私はねそういう心のこもってない謝罪が一番嫌いなんだよ!」

 と吐き捨て、花束を遠くに投げてやった。

「えっ!?」

晃って男はしばらくして、またブツブツ言い始めた。。

「……わざわざこの俺が、抱かれたい芸能人ランキング一位のこの俺が、謝りにきてやったのに」

「はぁ」

「俺に花束をもらえるんだぞ。お前どうかしてる。Fランクの分際で」

やっぱりこの男はどうかしている。

「……人間として大事なことを忘れてる。今度こそ決着つけてやる、さあ来い」

私はやったこともない空手の構えのポーズをとって威嚇してみた。

案の上、晃って男は後ずさりしている。

「……あっ。あそこに」

晃って男は急に後ろを指さす。

「えっ?」

思わず指さす方向を振り返ってしまった。

「何もなかった」

といい、晃って男は逃げようとするが、途中で足をすべらせて転んだ。

その様子を見て腹を抱えて笑ってしまった。

「いい気味だ!!」心の底から声が出た。

けれども晃って男は足をずっと押さえて、低いうなり声を出している。

「大丈夫?」
   
顔色も悪い気がする。

「立てない。ちょっと手を貸して」と晃は言ってきた。
  
ヤバいことになった。私はあわてて手を差しだす。

その瞬間私は晃に手を引っ張られ、川の中に転んだ。やられた。

「ざまあみろ!」満足そうに笑っている。

ここまで来たら小山村の狂犬と言われる私を誰もとめられない。

「てめーよくもやったな。くらえ」
 
せっかく捕獲したささ虫が入ったバケツの水をあいつにかけようとするが失敗した。

「全然かかりません円」

小学生と同じことを言っている。

そのうちまた晃が転ぶ。

「いてえ」

また足を押さえている。

「もうその手には……」

といいかけたその時、私は晃の足から血が出ているのに気がついた。

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