夕方の東京駅は家族連れでごった返していた。
流れていく人の波に反してどれだけ歩幅を小さく歩いても、一向に晃は追いかけてくる気配がなかった。
特急の待合室に腰かけ、持っていたお茶を飲む。
ふと上を見ると、大型ビジョンでCMが流れている。
「安心、安全、オリーブオイル」私はすぐに立ち、待合室を出た。
今はあいつの顔なんて見たくない。
向き音なアナウンスが一本早い特急電車が到着したことを知らせてくれた。
鞄を右手に抱え、左手でエスカレーターのカバーを掴みながらゆっくりエスカレーターに乗った。
いつもよりも重い鞄がやけに哀愁を背負っていた。