今、俺は学校の保健室にいる。
さらに恐るべきことにあの凶暴虫食い女改め凶暴女に手当をされている。
すると、凶暴女が耳を疑うことを言い始めた。
「ごめん、私が悪かったよ」
「えっ。何でおまえが謝るんだよ。俺が勝手にこけたんだよ」
「……悪かったよ」といい凶暴女は俺の足の傷口に消毒のガーゼをあててきた。
「いてえ!!」俺は叫んだ。こいつは謝るときまで凶暴だ。そんなことより、これを確認しなければいけない。
「あのさ、俺と約束してくれ」
俺は真剣な顔でこいつをみる。めったに見せないリアル真剣顔だぞ。覚えとけ。
「……何を?」
「……だから、ネットに俺の悪口かかないって」
「かかねえよ!」と言い放ち、消毒のガーゼを俺の傷口につけてきた。
こいつは約束するときでさえも凶暴だ。
「いてえ」俺は思わず悲鳴に近い叫びをあげた。
「人の評価ばっかり気にしてたら、ろくでもない奴になるぞ」
こいつは人気商売の俺様に向かって馬鹿なことを言いやがった。
「気にして当たり前だろう。俺は、俳優だ。人の評価がすべてだ。お前みたいなお気楽な公務員先生とは違う
んだからな」
「……お気楽で悪かったな」
こいつは消毒ガーゼをまた傷口につけてきた。こいつは怒るときも凶暴だ。
「いてぇ、……俺は国民全てに好かれるよう頑張ってるんだ。幸いにも俺にはその素質がある!」
と言うと、こいつはこの俺様に向かって呆れた顔をしやがった。俺がなにか言い返そうとした瞬間、保健の先生らしき人があわてて保健室に入ってきた。
「美香ちゃん、また来たわよ」保健の先生が小声でこいつに耳打ちしたが、ばっちり俺まで聞こえた。
「……ちょっとあとよろしく」
こいつは俺様の手当てを保健の先生と代わり、小走りに出て行った。
「なんかあったんですか?」
「ううん。いつものこと」
笑顔で誤魔化された。なんだ一体。
<章=意外な一面>
保健の先生に礼をいい、帰ろうと学校の廊下を歩く。
それにしても……。
転んで膝を怪我するなんて、俺小学生か!と一人突っ込みを心の中にいれる。
「晃、川で転んで膝を怪我」なんて週刊誌に書かれたらどうしよう。
この間の八股の記事より恥ずかしい。
やだやだ。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると
俺が一番嫌いなヒステリーな叫び声が聞こえてきた。
俺が別れを切り出すとたいてい女はこんな声を出す。
やだやだ。
声の発信元を通りかかった時、また聞こえてきた。
「だからね、うちのよっちゃんが家に帰って来て泣くんです。美香先生が怖いって」
俺は興味本位で半分開かれたドアから発信元を覗く。
部屋にはあいつとばばあ3人組が向かい合って座っていた。
「いや、ですから、授業中におしゃべりしたので、こちらとしても注意しないと」
あいつが本当に困った顔をして答えていた。
「注意の仕方ってもんがあるでしょ」
違うババアがあいつに向かってヒステリー声を出す。
「そうよ。もっと優しく言えばいいじゃない。子ども達には必要なのは怒ることよりも愛情よ」
また違うババアが言う。
俺は見てはいけないものを見てしまった気がしてドアをそうっと閉めた。
「……怖くなかったら注意なんて聞かねーだろ」
俺はさっきのあいつの困った顔を思い出す。
あいつも色々大変なんだな。