小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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保健の先生に礼をいい、帰ろうと学校の廊下を歩く。

それにしても……。

転んで膝を怪我するなんて、俺小学生か!と一人突っ込みを心の中にいれる。

「晃、川で転んで膝を怪我」なんて週刊誌に書かれたらどうしよう。

この間の八股の記事より恥ずかしい。

やだやだ。

そんなことを考えながら廊下を歩いていると

俺が一番嫌いなヒステリーな叫び声が聞こえてきた。

俺が別れを切り出すとたいてい女はこんな声を出す。

やだやだ。

声の発信元を通りかかった時、また聞こえてきた。

「だからね、うちのよっちゃんが家に帰って来て泣くんです。美香先生が怖いって」

俺は興味本位で半分開かれたドアから発信元を覗く。

部屋にはあいつとばばあ3人組が向かい合って座っていた。

「いや、ですから、授業中におしゃべりしたので、こちらとしても注意しないと」

あいつが本当に困った顔をして答えていた。

「注意の仕方ってもんがあるでしょ」

違うババアがあいつに向かってヒステリー声を出す。

「そうよ。もっと優しく言えばいいじゃない。子ども達には必要なのは怒ることよりも愛情よ」

また違うババアが言う。

俺は見てはいけないものを見てしまった気がしてドアをそうっと閉めた。

「……怖くなかったら注意なんて聞かねーだろ」
   
俺はさっきのあいつの困った顔を思い出す。

あいつも色々大変なんだな。

-9-
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