小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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Side-レイゴ

「確かに幸福の席は決まっているでしょうね。
そして仲間が傷つくのが耐えられなかった。そこまでは理解できますね。」


私は呆然としている神裂さんに話しかける。


「そう幸福の席が定まっている、大切な存在が傷つくのが許せないそれは理解できますよ。
私だって他人と知人ならば知人をとりますよ。
しかしあなたはそうではないのでしょう?
あなたの魔法名。その意は救われぬものに救いの手をでしたよね?」

「え、ええ。そうです。」

「素晴らしい魔法名だと思いますよ。
しかしこの名から考えてあなたは、あらゆるものを救いたいのでしょう?
ならば何故ここにいるんです?」

「何故って、仲間を傷つけたくないからここに・・・」


やはり理解できていないようですね、自らの矛盾に。
ならば突きつけてあげましょう真実を。
天草式メンバーのために、周りの人のために、そして何よりあなたのために


「ならば聞きましょう。
あなたにとってネセサリウス人たちをどう思っていますか?」

「?何もわからない私に親切に接してくれたいい人たちですよ。」

「そうですか。ならばネセサリウスの人たちは大切な存在になりえますか?」

「はい。それが一体どうしたのですか!」

「次に!天草式にいたら仲間を傷つけてしまうのに
ネセサリウスにいても仲間を傷つけることはないのですか?」


その言葉に神裂さんの目が揺れた。
こんな誰にでも気づけそうなことに気付かない。
いえ、無意識にですが気づかないように目線を逸らしていたのでしょうね。


「もし本当に周りの存在を気づつけたくないのならば、
あなたはフリーランスでいるべきなのでしょう。
しかしあなたはここにいる。」

神裂さんが目に見えて狼狽えている。

「確かにあなたの周りを気づつけたくないのは本心なのでしょう。
しかしそれと同じくらいあなたは孤独を嫌っているのでしょう。
あなたは天草式からここに逃げた、しかし孤独を恐れ手を引いてくれたこの組織に来た。
で?次はどうするのです?
このままでいたらあなたは、また逃げ出すことになりますよ?」

彼女は目を移ろわせ、おびえている

「確かに大切なものは自分の身から離したら狙われにくくなるでしょう。
しかし狙うやつらは狙いますよ?
その時にあなたは耐えられますか?
逃げたせいで大切な存在が傷つくことに。
それにあなたが逃げれば逃げるほどに大切な存在は増えていき確率は上がりますよ?」

「な、ならば!どうすれば良いのですか私は!
ただ目の前で傷ついていく人たちも見ろとでもいうんですか!!」

彼女は耐えきれず叫んだ

「誰もそんなことは言ってないでしょう?
例えばですね、何度も言っているように幸福の席の数は決まっていますね。
しかし幸福の形は決まっていないんですよ?
あなたの幸運により周りが不幸になるんならば、
あなたにとって最高の幸福の状態である皆が傷つかない結果掴み取ればよいではないですか。」

「そんなものただの理想論ではないですか!」

「ええ、そうですね。しかし不可能とは決まっていません。」

「それに私にはそんな力はありません!」

「ええ、あなたにはないでしょうね。
しかしあなた達ならば?」

「はぁはぁ、わたし・・・たち?」

「はい。
あなたは勘違いをしているのですよ。
確かに聖人は強力です。ですがそれだけで全てが決まるような世界ではありませんよこの世界は。
それなのにあなたは大した怪我をしたことがない。
それは、天草式のメンバーあなたを必死に守っていたからなのではないでしょうか?」

「え・・な、何を」

思い当たる節があるのか神裂さんの動きが固まった

「あなたは幼いながらも戦っていたのに、怪我をしていない。
それはあまりにも不自然です。そこからも想像ができませんか?
それなのにあなたは自分の幸運のせいだと、彼らが弱いからと勝手に決めつけているのではありませんか?」

「わ・・・た・し・・は」

「彼らは自分たちの意思で、
あなたを守るために戦い傷ついたのではないのでしょうか?
あなたは一人で考え勝手に決めつけ、彼らの思いを無碍にしたのですよ」

「私は間違えたのでしょうか?」

彼女はうつむき座り込んでつぶやく。

「ええ」

体を、声を震わせ

「私はどうしたら良かったのでしょうか?」

「今まで一緒に戦っていたのです。お互いのことは知り尽くしていたでしょう。
少しずつかもしれませんが供に強くなればよかったと思いますよ」

「そうかも・・・しれませんね。
でも・・・もう私には」

彼女の声は沈み込んでいる。
それこそ絶望の淵にいるかのように

「・・・・そういえば、知っていますか?
今天草式をまとめているのは建宮という人なのですが。」

「・・・・・・・・・」

「彼は肩書がおかしいのですよね、
もう女教皇はいないというのに代理なんですよ。」

「・・・・・・っ」

「何故かと聞いたんですがね、そうしたら彼は
我らのトップはただ一人と答えたんですよ」

彼女の肩が震え、こちらを見つめてくる。

「彼らはあなたのことを怒っておらず、待っていますよ。」

「そ、そんな。私は・・・」

「彼らからの伝言がありますよ。
『私たちは女教皇を頼りすぎました。あなたも一人の女の子だということを忘れ、
あなたのことを考えず私たちだけで勝手に考え行動していました。
それがあなたを傷つけることになるなんて考えもせずに。
今私たちは修行をしています、今度はあなたの体だけではなく心も守れるように。
守られる存在ではなく、あなたと共に戦えるように。
だから待っていてください、私たちも必ずあなたのもとに行きます。』
・・・・だそうですよ?」

私の言葉を聞いていくうちに彼女の目から涙がこぼれ始めた

「私は、私は一体どうすれば!!」

自らの自責の念・罪悪感・彼らの思いに混乱してしまい取り乱す神裂さん

「落ち着いてください。大丈夫です、大丈夫です。
泣かないでください。」

取り乱し自分を傷つけそうな雰囲気があるため、私は抱きしめ頭をなでてやる。

「あああああ、私は一体どうすれば!」

「ほらほら、落ち着いてください。
そうですね、昔と同じようにすればいいと思いますよ。
今の天草式も昔と同じあなたの教えを大切にしているようです。
だからこそあなたは昔のように人を助ければいいと思います。
天草式の皆さんが『この方が我らの女教皇なんだぞ!』と誇れるように」

「それで・・・私は許されるのでしょうか。」

「許されるも何もあなたを恨んでいる人はいないですよ。
ただあなたは自分らしく生きればいいと思います。
それが彼らの願いなんですから。
・・・・ただし」

「「他人をもっと頼ること」」

神裂さんが私の言葉に合わせ喋った

「フフ、よくわかっているではないですか。」

「ええ、あれほど言われれば馬鹿でもわかりますよ。
・・・・すぐに昔の私に戻りますから、もう少し胸を貸してください。」

「いったでしょう?仲間を頼れ・・・と
私これからネセサリウスの一員です。
だから仲間です、自由に使ってください」

「ありがとうございます。」

私は自分の胸の中でなく彼女を抱きしめなで続けた。
そこにいるのは聖人でも女教皇でもなく、ただの神裂火織がいました。


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長い!!

書きすぎた!!!

-19-
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