小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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今まで爆音が鳴り響いていた広場は静まり返っている
すでにこの場は以前の面影はなく、荒れ果てている

すでに逢魔時になり、空は血のような赤に染まり
場には静けさが響き渡る。


広場に立つは一人のみ。
気を保っているのは、一人の少年を抱きしめ治療を行っている少女。

彼らの戦いはすでに終わり、
そしてまた新たなる存在が現れる。


「・・・・・新手が来たようだな」


その言葉の通り広場には霧が生まれ始める。
霧には魔力が込められ、認識阻害・防音・人払いの術式が込められている。


「これは?」

「・・・・大方、周りの被害を減らすことと魔術の秘匿が目的だろう。」


その言葉にオリアナは目を見開く。
確かに一は連絡を取っていたが、来るのが予想よりも早いのだ。

それはジルにとって、自分を討伐しに来た敵である。
しかし彼には一切の怯え・恐怖がなく、あるのは絶対の自信のみ。


「一!!ご無事ですか!!?」

「神裂!!勝手に先行をするな!!!
 ええい、A班は協力者の魔術師と負傷者の救助!
 B班は敵の牽制を行え!!」

「騎士団長!民間人らしき人たちがいます!!」

「くそっ、A班民間人たちも一緒に救助だ!」


霧を切り裂くように走る人影が広場に現れ、
またその人影に続くように幾人もの人影が広場に侵入してくる。

一番最初に広場に侵入するのは、ネセサリウスの一員であり聖人の神裂火織であり、
その後ろに続くは騎士団長と騎士達であった。


「そこのあなた!
 一の知り合いかしら!?
 だったら手伝ってちょうだい、お姉さんだけでは手が足りないのよ!!」

「あなたは?」

「それはいいから、早く!!」

「っ、ひどい怪我・・・
 どうやらそのようですね、わかりました。」


オリアナは神裂を呼びよせ、一の治療をさらに進める。
騎士もまた騎士団長の指示によって倒れ伏している魔術師、巻き込まれた民間人の救出を行い、
使い魔達を殺してゆき、

騎士団長はジルと剣を交えている。


「一お兄さん!!」

「こら!そっちに行くんじゃない!!」

「ガウッ!」「フシャーッ!」

「うわ!何だこいつら!!」


神裂が治療に加わることで、治療にひと段落ついた所に走り寄る小さな少女。

先まで一の言うことをしっかりと守るために、結界から外に出ず見守っていたが
騎士たちによって結界が破られ、また他の子たちも無事救出されたため

守る約束や心配事がなくなることで、
いてもたってもおられず、思わず一のところに走り寄ってきたレッサーであった。

レッサーにとって確かに怪我や戦いが怖かったが、それ以上に一が心配であったのだ。


「一お兄さん!しっかり!」

「誰ですかこの少女は?」

「一が助けた少女よ。
 大丈夫よ、もう怪我も大体治したし死ぬことはないわ。」

「ホントですか!?」


神裂が目の前にいる少女についてオリアナに尋ねるが、
オリアナは神裂に適当に答えながら、
レッサーに治療は無事に済んだから安心しろと伝える。


「ええ、大丈夫です。
 そこのあなた、一のことを頼みます。
 私はあちらに行ってきます。」

「こっちは任せときなさい・・・油断しちゃだめよ。」

「わかっています。」


別段軽く扱われたことを気にしていないのか、
神崎もレッサーに無事を伝え、一をこのようにしたジルの所へ行こうとする。

お互い同じ男を好きなことを感じたのか、
少ない言葉でお互いを信じることができ、
神裂はオリアナに一のことを安心して任せることができ戦場に向かって走って行った。

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