小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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二人ともが無事に逃れることはできぬはずの攻撃。

ジルとて二人を同時に相手する脅威さを先ほどまでの戦闘で確認している。
そしてその強さの秘訣は、二人の驚異的な連携と判断した。

そのため考えた行動方針として、
まずは二人を引き離すことを優先
そして二人を同時に倒せる攻撃ではなく、片方を確実に倒しうる攻撃で仕留める。

それは見事に功を奏し、赤髪の少女を空中に追い詰め

一の足止めに成功したことによって、確実に一人を仕留める状況を作り上げた。


なのに


「何が・・・起きた?」


いや起こったことは分かる。
一が赤髪の少女を救った、ただそれだけ。

だがそれがありえない、間違いなく不可能だったはずの結果を覆しているのだ。
そして一番ありえないことが、その過程が一切認識できなかったこと。


ありえぬ状況、ありえぬ事態に背筋に冷たいものを感じる。

決して勝てぬもの、挑んではならぬもの、人が持つべきではない力

本能がそれを理解し、警報を鳴らし続ける。


そして悟る、ああ私は負けるのだと。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「恋、無事ですか?」

「??????」


恋を抱き上げ、無事かどうかを聞く。
例え全力が出せず弱くなっていたとしても、恋とて最強の部類に属する強者。

次に襲う自分の状況を正しく理解し、待ち構えていたのに
いつのまにか一に抱きとめられ、救助されている。

わけのわからない状況に?を出しまくる。


「恋?」

「っ・・・・無事・・・・でも、何?さっきの?」

「私の能力です、詳しくは後で説明します。」


そういうと恋をおろし、海魔の方を見つめる一

その表情に緊張は無く勝敗を確信した表情である。
そして今まで閉じられていた右眼が開かれている。


「(・・・・・虹・・・色?)」


ジルに切られるまでは、吸い込まれそうなほど綺麗な漆黒の闇の瞳だったのに対し
現在は通常では存在せぬ虹色の虹彩異色症(ヘテロクロミア)になっている。

人間では、いや自然としては見ることのできない色の眼

存在することは無い以上な色彩
このような眼を持つ人がいたとしたら、気持ち悪いと差別やいじめの対象となるだろう。

だが、


「・・・・・きれい」


人間は異端を嫌う、しかしそれと同じように異端を神聖視することもある。
アルビノの人は様々な国で迫害されてきた、しかしアフリカではアルビノ人は神聖視されている。

所詮異端は人の受け取り方次第、
そして一のことを愛している恋が、彼女たちが気持ち悪いと思うどおりは無い。


「ふふ、ありがとうございます。恋」


それは一とて分かっている。
自分のためにここまで追いかけてきてくれているのだ。

疑う方が彼女たちに失礼である。
それでも、やはり口で言われるのは嬉しいものである。


「さて、そろそろ終わらせるとしましょう。
 ・・・・・恋、あなたの全てを私に預けてもらえますか?」


海魔を見るのをやめ、恋を見つめ手を差し出す。

その言葉は契約の言葉

契約は神聖なものであり、未来を変えてしまうもの

自らを他人に委ねることのできる覚悟と信頼があって成り立つ契約

しかし


「恋の全ては一のもの。
 全てを使ってもいい」


それは恋達にとっては今更なこと、何のためらいもなく恋は一の手を取る。

その手のぬくもりは、互いにとって大切なものであり命と同等なもの。


この術は信頼が、互いを思いやる心が生み出す奥義


「恋、これからもよろしくお願いしますね。」

「ずっといっしょ」


二人を中心に魔力が吹きあられ、光が包み込む。

その光の中見た恋の表情は、とてもきれいな笑顔だった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「衛宮一族が秘奥・纏」


光が収まった先には、恋の姿は無く一だけであった。
しかしその恰好は先ほどまでとは変わっている。

その手に持つは鉄扇から、紅くまた炎に包まれている方天画戟。
服装もまた、着物に袴だけだったのに対し

現在は羽織を着付け、
また恋のように首元にマフラーの様な布を、腰の部分にマントのような布を着けている。


着物や袴の色は恋の服装に合わせた白と黒。

そして羽織は恋の操る炎の色であり、旗の色でもあった真紅
そして羽織に書かれている柄は恋の転生した先である神

十二天将にて最強の将である騰&#34421;、天に上る蛇、つまり龍


それらは圧倒的な力強さを感じる出で立ちである。


「今から放つ一撃は、私たちの最後の一撃です。
 そしてこの戦いを終わらせる最期の一撃。
 心して受け止めなさい」


一はその場で、方天画戟を後ろに構え力を込める。
今までにない圧倒的な力、それは神の炎

恋だけでは使えなかったが、纏を行うことで
恋が本来使える力の一端が使用可能になった。


「う、う、う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


海魔が全ての触手を使い、ジル自体が魔術を発動させ
出来うる限り全ての攻撃を行い一を止めにかかる。


しかし攻撃を行うために込めている炎が漏れ、それらを焼き払う。

本来ならば完全に制御できなくてはならないのだが、準備も何もなく
状態も万全ではないためコントロールできていない。

そう、一は一切狙わずただ攻撃の準備による影響が敵の攻撃を防いでいるのだ。


「我が思いに答えよ」


ただ漏れ出しているだけで、その力

万全の状態ならばコントロールできていたかもしれないが、
出来ない以上隙も大きく、危険性も高かったため使えなかった。


しかし今、そのコントロール手段を手に入れた。


「アイオンの眼よ!!」

”神炎・神火剛戟”


一は方天画戟を振るう。
ただそれだけで、触手を、魔術を、海魔を燃やし尽くす。

望む未来を掴み取る能力。

それによって、神炎を完全にコントロールしジルを打ち倒す未来を選び取る。
強制的に確率を変更させ、自分の望む未来の確率を選び取る。

強制的に選び取り、変更するため
過程があると別の可能性が生まれてしまう以上、無視してしまいただ結果を与える。


それによって、海魔は抵抗も許さず焼き尽くされる。

そこに残るは、意識して対象外にされたジルのみ。
魔導書は魔力を焼き尽くされただの本と化している。


倒れているジルの元に近寄ると声が聞こえる


「くくく、化け物じみた力だな。
 何もできなかったよ・・・・虹の魔眼か。
 世界最高位の魔眼の色だな、その力もうなずける。」

「そうですね、あまりにも恐ろしい力ですよ。
 それで、まだ戦いますか?」

「・・・いや、やめておこう。
 勝てる気がしない、敗者は素直に勝者に従うさ。
 それに、何か気持ちの整理がついたようだ。」


ジルはこちらを見つめた後に、空を見つめ喋る。
その眼には狂気の炎が無くなっている。


「おそらく、お前たちに当てられたのだろうな。
 まだまだ捨てた物じゃないのかもしれないな、
 それに彼女も俺がこのようなことをすることは望んでなかったような気がする。」


何かを思い出しているのか、目をつぶり思考にふける。
彼の言葉をしっかりと聞くために、見つめ口を挟まない。


「素直に捕まり、もう一度清教を知ることにするさ。」

「そうですか、何かあったら言ってください。
 力になりますよ?」


私の言葉面白いものを聞いたかのように、体を震わせる。

そして私を見つめ、喋る


「先ほどまで、殺しあっていたものに言う言葉か?それは?」

「日本では罪人でもやり直せるものなんですよ。
 自分から変わりたいと思っている人の手助けをするのは当然でしょう?
 それに、昨日の敵は今日の友とも言いますし・・・ね?」

「くくくくっ、そうだな。
 何かあったらよろしく頼むよ友よ。
 その変わりお前が困ったことがあるならば、今度はこちらが助けに行こう」

「それは心強いですね
 ・・・・では」


そういうとジルに背を向け、皆が待つ方法に向けて歩き出す。
背後から彼の別れの言葉を聞きながら、歩いていく。


(さてさて、皆に何を言われることやら)
(・・・?・・・・お疲れ)
(だったら、いいのですけどね)
(わからない・・・でも・・・・久しぶりに一緒に戦えて良かった)


恋と念話をしながら、私はこちらに向かって走ってくる彼女たちを迎え入れるのでした。



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短くなかったですね、文


まあ、いっか。

ようやく戦闘話が終わりました!

出ましたね〜一のチートな眼。
眼の色を悩んだのですが、型月では虹が最高位だったな〜と思い虹色にしてみました。

実際にはあり得ないですけどで、虹色とか・・・


次からは原作に向かい一気に駆け抜けるつもりです!

原作ブレイクもありますが、まあ寛大な目でよろしくお願いします。


では、コメント・応援今後ともよろしくお願いします。

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