小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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その部屋には窓がない。

いや窓どころか、階段、エレベーターなど移動に必要なものが一切なく
建物としての機能を一切はたしていないビル

核にすら耐え、空間移動が無ければ入ることすらできない
最硬にして最低の建物


その中に二人の人物はいた。


一人は和服を着こんでいる中学生ぐらいの少年、一一。

その眼はいつもの仕事時の眼
一切の油断は無く、敵を判別し必要ならば殺すことも厭わない殺人貴の眼
そして身内を、大切なものを守り通す守護者としての眼

国や自らの部下という身内を守るためには、
『人』でなければ守れないと考えたため、

彼は誰よりも『人』らしい『人』であった。



一人は部屋の中央のビーカーに逆さまに浮いている人物

それは男にも女にも、大人にも子供にも、聖人にも囚人にも見える。
『人間』としてあらゆる可能性を手に入れたか、捨てたか

それは『人間』という説明しかできない存在であった。


その部屋には『人』と『人間』が対面していた。


「はじめましてかな、守護者」

「そうですね、アレイスター」


いつもならば、年下や身近な者でしか呼び捨てで呼ばない一が最初から呼び捨てで呼ぶ。

いつも冷静に、礼儀正しい一にしては珍しい光景である。


「いきなり呼び捨てかね。
 君はもっと礼儀正しい少年だと聞いていたのだが」

「あなたには礼儀が必要なさそうですから。
 本能があなたを危険だと、敵だと訴えていましてね。
 まあ、だからといっていきなり敵対することはありませんが」

「ふむ、なるほど。
 それは守護者としての感かね?」

「さあ?どうでしょう?
 私個人かもしれませんし、守護者かもしれません」


この二つの違いは大きい。

アレイスターの計画上、日本に影響はあるだろうが・・・

守護者としての敵ならば、日本に多大な影響を与えない限り、
もしくはきちんとケアをすれば敵には回らない。

しかし一個人としての敵ならば、何が一の琴線に触れるかが分からない以上
下手な策を打てない

守護者はそれだけ脅威となる可能性を含めているからである。


「・・・・そのような異分子を下手に入学させるわけにはいけないのだが、
 それをした瞬間に敵にまわりそうなのでね、
 入学するにあたっていくつか条件を出させてもらおうか」

「妥当でしょうね。
 私があなたを信用していないように、
 あなたも私を信用していないでしょうからね」

「そのとおりだ。
 君も分かっているだろうが、学園都市には世界最高峰の技術が集まっている。
 そのため学園都市の技術を盗もうとする存在は多数いる。
 学園都市の裏の顔として、それらを駆逐する組織も多数存在する。
 君にはその組織の一員となってもらおう。
 なに、学園都市もまた日本の中の一つだ、君の守護の対象だろう?」


こちらを試すような物言い。

まあ、こちらとしても罪の無い一般人を守るのは本業
その条件は私にとっては一切の問題はない

だが好き勝手に動かされるのは癪である。

また、信用など一切ない関係上
既にあちら側のフィールドにいるため、こちら側にとっての好条件とる必要もある。


「いいでしょう。
 但し、その組織のメンバーは私が集めさせてもらいます。
 代わりに、そちら側の指令に従いましょう。」

「構わん。
 次に君にも能力開発を受けてもらおう。」

「同じく構いません。
 ですが、こちら側の研究として
 能力と魔術の融合を試させてもらいます。」

「ふむ?
 まあ君には科学や魔術の勢力争いなどには興味が無いのか。
 まあ、構わんよ」


魔術を極め、科学に走ったアレイスター
魔術も科学も同じと見なし、融合に走る一。

ある意味では似た者同士、既存の考えに乗っ取らない二人

普通ならば認められないことに、あっさりとOKを出すアレイスター


「どうせそちら側は、危険な任務を出すのでしょうから
 私の組織の一員に魔術の知識を教えさせてもらいます。」

「ふむ、構わんと言いたいところだが・・・
 おそらくそれは君の一族の一員となってしまうのだろう?
 こちら側の計画の手伝いを行ってもらう。
 それならば構わん」

「・・・・ふむ。
 こちら側の誇り・矜持を傷つけ任務ならば構いませんが」

「こちら側としては、
 それだけの条件で守護者という駒を得られるのだ、
 無理な任務は出さんよ」


何か裏がありそうな返答であったが、
お互い利用し、利用される関係

これぐらいが落としどころと両者とも判断する。


「では、これからよろしくお願いしますよ
 理事長」

「ああ」

「では」


そういうと、瞬間移動能力者と共に部屋から出ていく一

人の気配が無くなった部屋から呟きが漏れる


「予想以上に手ごわそうな『人』だったな」

「実に興味深い観察対象だったよ。
 アレイスターが言う過去、そして新たな時代の両方を含めることのできる時代の担い手
 『大和の時代』と『ホルスの時代』さあ、これからどうなるのかな?」

「そうか、君にとっても興味深いか。
 やはり要注意人物だな・・・・しかし、
 彼を利用すればプランの大幅な短縮が見込めそうだ・・・」




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更新です

疲れた・・・・今回はあまり書く元気がないので、

では、応援・コメントこれからもよろしくお願いします

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