小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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日が沈み始めた夕方、
オレンジ色に染まった居間の中に五人の人影が。

一やレッサー、オリアナ達である。

恋以外の皆が少し怒り気味で、一のことを見つめる。


皆がその体制になってから、はや十分。
一番最初に口を開いたのはレッサー


「何勝手に決めているんですか、一さん」


その言葉はやはり一を責めるもの

彼女たちとて一の仕事や矜持を理解している。
またこの状況になったら、一が仕事を引き受けることも

しかし自分たちに一切の相談無く、決めたことに怒っているわけでは無い。
一が自分たちに黙って仕事をしようとしていることに怒ってるのである。


「しかしですね、この問題にかかわると・・・」

「わかっているわよ、それぐらい」


しかし一とて言い分はある。

一が引き受けた仕事は、魔術勢力が科学勢力に助力する事。
一の場合は衛宮一族当主という盾はあるが、彼女たちには無い。


さらに彼女たちの今後のこともある。

オリアナの場合は、
科学と魔術が混ざることを良しとしない人は多いため、
オリアナの夢を邪魔する人が出てくるかもしれない。
そのため彼女の夢が遠のくかもしれないという可能性から。

レッサーは巻き込まれたのが最初の原因でありこれ以上巻き込んでいいのか、
学園都市の裏側は想像以上に黒いため、レッサーが耐えられるのか。

そしてエストは生まれてから時間があまりたっていないので、人としての幸せを感じさせてあげたい


などという理由があり、仕事に巻き込むことを躊躇っていた。


逆に恋の場合は、前世から付き従っている存在であり、
お互いのことをよく理解している。

また一自身恋には仕事を手伝ってもらうつもりであり、
恋もそのことが分かっているため、特に説明などせずとも怒ってはいない。


「私は一のための剣です。
 一の思いも分かっているつもりです、それでも私は一と一緒にいたい。
 ご主人様(マスター)のために戦いたい。」


どうしたものかと考えている一、
その袖を引きながら上目づかいで自分の思いを訴えるエスト。

その眼は涙目で、潤んでいるものの
彼女の強い意志がこもっている。


「むぅ」

「一、お姉さんたちもエストと同じ意見よ。」

「はい、それに私はまだ恩を返せていないですし」


エスト以外からも言い寄られ思わず黙ってしまう一。

彼女たちのことを考えるならば、無理にでも断るべきなのだろうが・・・


彼女たちの思いを一方的に無碍にしたくはない

この思いがそれを踏み止どませる。

人は自分で道を選ぶべきである。
自ら考え、行動するからこそ『人』は『人』なのである。

そして『守護者』は命だけではなく、心、未来も守ってこそ『守護者』である。


「・・・この仕事は人をおそらく殺すことになるでしょう。
 それでも大丈夫ですか?」

「そんなこと、今更よ」

「それが、必要ならば。
 それで一を助けられるならば、共に戦えるのならば」

「大丈夫です・・・と、言いたいですが。
 実際恐いです。
 でも、私も戦いたいです。変わりたいです!」


皆が答える。

その覚悟はあると

自らの夢のためにも必要な道のりのため、大好きなご主人様のため、弱い自分を変えるため

全員が自分でしっかり考え、行動を選んでいる。
それを止める権利はないし、止める手段もない。


「・・・・ふぅ」


一は一つため息をつきながら席を立つ
エストたちには見えなかったが、
その表情には諦めと、喜びが浮かんでいた。

懐からケータイを取り出すと嫌そうな表情を浮かべながら電話を掛ける


『何の様かね、こんなにも早くに連絡が来ると思わなかったのだが』

「予定が変更しましてね、アレイスター。
 至急暗部組織に在籍していない、暗部の人
 もしくは候補生のリストを下さい」


電話の相手は学園長

そして話の内容は、仕事のメンバーに関しての話題。

一は早急にメンバーを集めることで、
自分たちの入る隙間を無くそうとしているのかと思い

悲しそうに目を伏せるもの、文句を言おうとするが


「大丈夫・・・・一を信じて」


今まで一言も発さなかった恋の言葉によって止まる。

その間も話は進んでいき


『ふむ、了解した。
 ある程度の選定を行い君に送ろう。
 しかし、自分でメンバーを探すのではなかったのかね?』

「ええ、本来はじっくり信用できる存在を探していくつもりだったんですが。
 至急必要になってしまいましてね
 ・・・・候補の中にスパイなどを紛れ込ませないでくださいね」

『そんなことはせんよ。
 第一通じるとも思っていないしな。
 ならば素直に応じ、貸を作ったほうが得策だ』

「ならばよろしくお願いします。
 それと、単純な仕事を一つ。
 内容は・・・・・でお願いします。」

『了解だ、ではな』


話が終わり、一がこちらを向く

真剣な表情に皆気を引き締める。


「あなた達の思いは分かりました。
 止めることも出来ないことも。
 ですので仕事に関わることの許可を出しましょう。」

「本当ですか!?」


その言葉に三人とも顔を見合わせ、
歓喜の声を上げかけるが

それに対しまったの声がかかる


「しかし、条件があります」

「何かしら?」

「あなた達が、その思いを譲れないように私の思いも譲れません。
 一般の人と同じ幸せ、生活を感じてほしいというものは・・・ね。
 ですので、あなた達には裏と同時に表のつまりは学生としての生活もしてもらいます。
 まあ、当然と言えば当然ですが、裏の住人とて生きている以上
 表でも生きていく必要があります。
 しかし魔術師は隠れ潜むもの、しっかりとそれをこなしてもらいます。」

「でも、それをしたら時間が減るわよ?」


オリアナの疑問はその通り。
専念しない以上、時間は限られてくる。
身体は一つなのだから、それは当然である。


「ええ、ですので先ほどの電話。
 つまりは人員を増やし、ローテーションを作ったりするわけです。」


その言葉に、そこまでする必要があるのかという疑問の表情を浮かべるオリアナ
オリアナとしてはずっと裏で生きているため、
必要性がそこまで感じられないのだろう。


「疑問に思っていますか?そうですね・・・
 あなた達はこれからの仕事をするにあたって、衛宮の一員となってもらいます。
 つまりは戦いの多い人生となるでしょう。
 自分を、自分の最初の思いを見失わないためにも、
 自分にとっての普通・日常・幸せを感じ、見つけてもらいます。
 もちろんここで見つけろも言いませんし、別に裏稼業の方で見つけても構いません。
 大事なのは確固たる自分の柱となる物ですから。
 これがないとストレスがたまったり、壊れてしまうかもしれませんからね」

「一にとって、それは何ですか?」

「ん?私にとってですか?
 それは今ですかね。
 私のことを思ってくれる人達がいる、
 その人たちの思いを無駄にしない、その人たちと笑いあう事ですかね。」


自分のことを思って、転生してくれた存在。
自分のことを思って裏稼業に手を染めようとしてくれる存在。
このような人たちがいるからこそ、私は戦えているのでしょうね。

彼女たちといる事こそが、私にとっての普通、日常、幸せ

正直なところ、国を守るのは一族の為であって自分の為ではありませんからね。
しかし国を守ることで自分の大切な存在を守れる。

歴代の方々もそうだったんでしょうね、きっと。
人がそう簡単に国の為と命を投げ出すことはできませんから。

国を通して人を見て、その人を守るために国を守る。
ただ力が強く、今まで国ごと守れたからこそ衛宮は守護者なのでしょう。

でなければ『人』であることを大切にしないでしょう?


「ならば私は大丈夫です。
 私にとっての幸せはマスターと共にいることです。」


エストが堂々と胸を張りながら自分の考えを喋る。
エストにとっては一が最も大切な存在であることがよくわかる言葉だ。


「まあ、エストの場合は恋と同じくそういう意味では必要ないでしょうね。
 ただ人間としての幸せも十二分に感じてほしいですから、
 学校には通ってくださいね?」


エストの言葉に微笑みながら、頭をなでる。

誰でも好意を向けられるのは嬉しいものである。
しかもエストの場合は純粋無垢であるため、
打算など一切ない完全なる好意であるからこそ尚更である。


「ん、気持ちいです。一」

「そうですか。
 ・・・そして条件はもう一つあります。」


エストの頭と、すり寄ってきた恋の頭をひとしきり撫で、
話を再開する。


「あなた達の覚悟を目で実際に見させてもらいます。
 冷酷で、残酷で、辛いでしょうがやってもらいます。」

「何をです?」


無意識にレッサーを見つめていたためか、レッサーが疑問の声を上げる。

次の条件はオリアナにとっては経験済みの事柄の為、問題はない。
エストの場合も、問題は無い。
一の為と・・・いや、一の役に立ちたい自分の為と割り切れるだろう。


「・・・・人を殺してもらいます」


しかし巻き込まれるまで、ただの一般人だったレッサーに耐えられるだろうか?
レッサーの覚悟が本物かどうかが問われる瞬間である。


(ならばよろしくお願いします。
     それと、単純な仕事を一つ。
         内容は確実に人を殺す必要があるものでお願いします)




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更新がずいぶん遅れてしまいました。
楽しみに待っていてくださったかすいません。

実は恋姫を作り始めていたためと、テストがあったため止まっていました。


恋姫なんですが、数話ストックが出来たら掲載するつもりです。

あと、仲間として連れて行く武将が予想以上に多いことになってしまいました(汗)

「圧倒的ではないかわが軍は!」を地で行きそうなぐらい優秀な将が大量に加わってしまいました。
何人かは名前だけになってしまうかもしれませんね(汗)男キャラとかで・・・
出来る限りは書くつもりですが

まあ、どうなるかは自分でもわかっていません!(エヘン)

自分の気が向くままに書いていきます。
とあるである程度なれたとはいえ、舞台が全く違うので
優しい目で見てやってください。

あと、微妙にアンチが入ると思います。
特に三国

といってもヒロインではないというわけではありませんよ?
O・H・N・A・・・・教育は入るでしょうが。

気に入らないところがありますからね〜
キャラ自体は魅力的で好きなんですけどね・・・・

でも一部のキャラ以外は出番は少ないかもです。
予定は未定ですが・・・・


では、今後とも応援・コメントよろしくお願いします!

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