小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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駆ける駆ける駆ける
白に染められた研究所の廊下を一気に駆け抜ける。

途中廊下の横から警備ロボや、銃を持った警備員も出てくる。
しかし、それらは一切の障害にもならず

両断され、破壊され、吹き飛ばされ、白い壁を赤く染めるだけとなる。


「最愛!次の通路は!?」

「はぁ、はぁ、はぁ、
 み、右です!!
 その、突き、当り、が、実験場、です!」


最愛は能力を使用しているのに、一達に追いつくのがギリギリであるため
呼吸が乱れ、言葉がぶつ切りになってしまうが

必死に道順を、場所を伝える


「私は先に行きますので、最愛のことを頼みます。」

「わかりました、任せてください」

「海鳥を、よろしく、お願いします!」


最愛の言葉にうなずき返し、今から行う自らの行動を伝える
それと同時に一は地面に倒れこみそうなほど体勢を低くする。

エストはこれが一独特の移動技の一つと知っているため、
何の戸惑いもなく返事を返す。

最愛は戸惑いこそするが、エストの反応や
海鳥のことが心配なためか言葉には出さず、海鳥のことだけを頼む


「了解です」


その返事と共に消えたかと思うような速度で移動をする。
実験場に近づけば近づくほど警備が硬くなるが、それを物ともしない。

壁を、天井を、あらゆる場所を飛び回り接近する。
その移動術もまた円神理念流の技の一つ

”円神理念流 速の舞 飛廉脚”

イギリスで使用した歩法術”縮地”の異種
縮地は平地で使用することを考えられているが、飛廉脚は平地以外での使用を考えられている。

ちなみにこの二つの要素を兼ね備えた上位歩法として
”円神理念流 速の舞 奥義 縮地”
という同名のものが存在する。


奥義ではないが極めれば奥義とも遜色が無い技法
しかも前回とは違い、肉体も前世と同じ肉体のため速度も桁違いに速い

その圧倒的な速度で通路を縦横無尽に飛び回り敵を殺しつくす


「っと、この扉ですね」


瞬く間に実験場までの障害物を破壊しつくし、扉の目の前にたどり着く
通った道には切断されたり、圧壊された機械の残骸しか残っていない

一切の疲労を見せず、扉の確認を行う

カードリーダーがあるが、
どうやら一の持っているカードでは対応していないようで開くことができない

扉素材や、中の状況を確認しながらぽつりと呟く


「ふむ、・・・壊しますか」


中では何かが暴れているような音が断続的に鳴り響いているため、
探せばここの扉を開けられるカードを見つけられるだろうが、
すぐさま突入できる手段を選択する。

考えを実行するために、扉の中心に立ち鉄扇を開き構える


「コオオォォォ・・・・行きます」”円神理念流 柔の舞 剣舞”


扉に向かい鉄扇を振るう


この技は刀はもちろん、鉄扇などの刀以外でも使用できる技
手にしたものを刀として扱い、物を切断するというこれもまた単純な技である。

だが言葉だけでは簡単で、強くなさそうにも見える技かもしれないが
この技の真意はいつでも、どこでも武器を使い戦える事にある。

手に持った物を壊すことなく効率的に振るい、物を切断する
それは十分脅威となる技である。

そしてその切れ味は実験場の為、堅固に作られている扉を容易に切り裂く


一瞬の間の後扉は斜めにずれ落ち壊れる。

瞬間響き渡るのは、泣いている狂った笑い声
鼻に付くのはむせ返るような血の、鉄の匂い


「これはこれは・・・」

「あはっははっははは!
 さいっこうに、たのしいいなァ!
 ・・・ああァ?誰だ?お前もここの研究員か?
 なら、ぶっ殺してやンよォ!!!!」

「またですか、この格好が研究員に見えますかね?」


恐らく海鳥と思われる少女から飛んできた槍らしきものを避けながら自分の服装を確認する。


「ここの研究員は和服を着ているのでしょうか。
 まあ、とにかく私は研究員じゃありません。
 あなた達を助けに来た者です」

「ハハッ、そんなウソを信じるとでも思ってンのかァ?
 嘘を吐くならもっとマシなもンにすンだなァ!」

「嘘ではないんですが・・・ね!」


両手から放たれる槍の内一つを鉄扇で逸らし、片方を屈むことで避ける。
この瞬間に接近し殺すことは簡単だが

それでは最愛との約束をはたせない

しかし向こう側は話を聞くつもりは一切感じられない
こちらを殺そうと今も槍を放ち続けている。


(最愛のように怯えているならともかく、敵として断定されている以上
 うかつには近づけませんし。
 ・・・最愛を来るのを待ってみますか。
 それで落ち着けば良し、落ち着かなければ乱暴な手段になりますが気絶させますか。)

「いい加減当たれェ!」

「当たると痛いでお断りです。」


足元に放たれる槍をバックステップで避ける。
粉塵が巻き上がったところを、粉塵をかき分け腹と頭に向かって槍がさらに飛んでくる。

それらに対し、腹をめがけて飛んでくる槍は切り飛ばすことで霧散させ、
残りは頭をわずかに傾けることで紙一重に避ける。


「まだだっ」


回避すると同時に海鳥は能力の応用か、一気にこちらに向かい飛び
頭上から槍を振り落す


「甘い」


速度もあるなかなかの一撃であったが、
その程度の一撃は騎士団長や火織も放つことができる。

つまり見慣れているため鉄扇で軽く防ぐ


「もらった――!」


海鳥は両手から槍を作りだすことができる。
つまり一と鍔迫り合いを行っている槍と、もう一つ別の槍を作りだすことができる。

その槍を至近距離から放つ。
槍の長さは作るたび大きさが変わり、安定していなかったが少なくとも1メートル以下なことはない。

そして一と海鳥の距離は1メートルもない。
つまりこの距離は海鳥の射程範囲内である。

相手の武器の行動を防ぎ、鍔迫り合いという硬直状態を作り出した中での一撃
海鳥にとって最高の一撃、いや大抵の相手なら確実に決まるであろう一撃

しかし


「惜しかったですね、見事な一撃です」


今、海鳥が相手しているのは守護者
化け物じみた実力の持ち主。
その大抵に当てはまらない数少ない人物である。


海鳥の一撃は横に逸らされ、逆に海鳥は手首を掴まれ拘束されている。


「なっ、何が!?」


海鳥が最高の一撃を放つその瞬間
一は後ろに下がらず、鉄扇をスライドさせることで逆に一歩踏み込んだ。
そして海鳥の掌から槍が作られていることを見抜き、
手首を掴むことで槍の方向を無理やり変化させる。

一瞬の判断による行動、懇切丁寧に説明された海鳥は驚愕を露わにする。


「そんなことが」

「出来るのが私なんですよ。
 ・・・・どうやら、私が研究員じゃないことを証明できる人が来たようですね。」

「あァ?何を言って」

「海鳥!」


海鳥のことを知る人物。
一緒に実験を受け、苦しみを分かち合った絹旗最愛

彼女が実験場にたどり着いたことで、この膠着した状況は一体どうなるのだろうか・・・?



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お久しぶりです!

これが年内最後の更新でしょうね。

書き始めてから4か月ぐらいですか・・・・早いものですね〜


今まで応援してくださった方々、ありがとうございます!
皆さんのおかげでここまで書くことができました!

今後も応援・コメントをよろしくお願いします!!


では皆さん、良いお年をノシ

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