小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>




「・・・最愛?
 なんで、ここに・・・?」

「海鳥を助けに来たに決まっているじゃないですか。
 ただ、海鳥を助けに来れたのは私の力じゃ無いですけどね」


最愛がここに来たことに驚いたのか、今までの剣幕が少し収まる。
ただ驚愕が狂気を上まったというだけで、狂気がなくなったわけでは無い。

しかし一度思考停止をしたため、理性の入り込む余地が出来た。
そのため先程までの言葉が通じない状態からは幾分か良い方向に進んだといえる。

今この状況において、どれだけ説得できるかが救うための鍵と言えるだろう。


「最愛以外の力?
 それはこいつのことか?」

「こいつなんて言っては超ダメです!
 その人は一一さんで、私たちを助けに来てくれた人です。」

「あ?じゃあ、言ってたことは本当だったってことか。」

「ようやく信じてくれましたか?」

「そうだな、最愛が嘘を吐く理由もないからな
 ・・・なあ、一だっけか?2つほど頼みがあるだけど。」

「なんでしょう?」


落ち着いてきた海鳥の手を放し、見つめる。

手を離されてからといって、暴れる様子も見せずうつむいている海鳥。
その表情は長い髪に隠され、見ることはできない。


「最愛のことをよろしく頼む。
 最愛ってさ寂しがり屋でさ、それに人に依存しちゃうタイプなんだ。
 助けに来てくれただけで、満足すべきだろうし図々しいだろうけどさ。
 今、最愛が頼れるのって一だけだと思うんだ。
 だから・・・・頼む」

「海鳥・・・・?」

「途中で見捨てるなど、無責任なことはしませんよ」

「・・・・ありがとう。
 あと、もう一つなンだけどさ。
 ・・・私を殺してくれ。」


海鳥の口から洩れる声は何かを我慢しているような、震えている声。

拳をきつく、きつく握りしめ。
血が地面にしたり落ち、小さな水たまりができている。


「もう限界なンだ。
 前の実験の時から、私の頭の中に何かが入ってきてさァ。
 私に破壊しろ、壊せ、人を殺せってうっせェンだよォ。」


先程まで抑えられていた狂気が再び表面に浮き上がってくる。

最愛が心配そうに海鳥を見つめ、
エストは一に頼まれた最愛を守るために警戒を強くする。


「嫌なのに、私はそんなことしたくないのに。
 もう、我慢できねえンだよ。
 だから・・・だから!」

「殺してくれと?」


海鳥の悲痛な叫びを、どこまでも冷静な一の声が割り込む。

海鳥の言葉にショックを隠せない絹旗や、
その冷静な言葉に顔を上げる海鳥。


「それが海鳥の本当の願いだとしたら、それはもちろん叶えてあげましょう。」

「本当に決まったるだろ」

「そうですか?私は逃げているように思いますが。」

「なンだと?」

「確かに周りに迷惑をかけるのは怖いでしょう、
 自分じゃなくなってしまうのもまた恐ろしいでしょう。
 確かに倫理的に言うならば死んだ方が良いのかもしれません。
 しかし人として言うならば、『それがどうした』でしょうかね」

「・・・・・・」

「自らの意思で死ぬことが悪だとは言いません。
 それが必要な時もあれば、譲れないこともあるでしょうからね。
 ・・・自らの意思で死ぬということはとても勇気がいることです。
 その点海鳥の覚悟は凄まじいものでしょう。
 しかし、それは本当にあなたの意思ですか?脅迫概念の様なものに選ばされているのではないですか?」

「それは・・・」

「私はそうは思いません。
 なぜならば海鳥、貴方は私に殺してくれと頼んでいるからです。」

「っ!」

「自分本心が少し見えましたか?
 そうです、自らの死を願うのならば自分で命を絶てばよいのです。
 しかし、貴方はそれをしなかった。
 なぜでしょうか?
 答えは簡単です、貴方はまだ生きたいと願っているからです。」

「・・・・ああ。
 ああ、ああ、ああ!そうだよ!!
 私だってまだ生きたいよ!!!
 だけど!誰がそんなことを望む!!誰が私を助けてくれる!!誰が私を受け入れてくれる!!!
 物を壊したいと考える私を!人を殺したいと考える私を!
 いったい誰が!?」


糾弾されてるかのように身を縮こまらせていた海鳥が叫ぶ
今まで溜まっていたものは吐き出すかのように、泣き叫ぶ

隠していたものを、一による指摘によって浮き彫りにされ、
遂に海鳥の許容量を超えたのだろう

海鳥の言葉は正しいのだろう。
誰が好き好んで快楽殺人者と共に生きようと考えるだろうか。

しかし、それは世間一般の考えであって


「私は!、海鳥と一緒に超居たいです!」


全人類の答えではない。

世界中を探せばきっと一緒に居たいというような物好きもいるだろう。


「だそうですよ?
 少なくともここに1人、私も含めるならば2人受け入れてくれる人がいますね。
 それに、私はあなた達を助けに来たと言ったはずですが?」

「でも、こんな危険人物を・・・」

「自分で言いますか・・・
 まあ、先も言ったように私は途中で見捨てるような無責任なことはしません。
 ですので、貴方が私の手を振り払わない限り、
 私は貴方を助けるために行動をします。」

「私は・・・生きていてもいいのか・・・・?」

「当たり前じゃないですか。
 海鳥と私は友達です、私が友達を見捨てるような薄情な存在だと超お思いですか?
 私は海鳥と一緒に生きたいと超思っています。」

「もちろんです。
 海鳥、貴方の思いを聞かせてください。」

「・・・・助けて
 助けて!私はまだ生きていたい!!」

「お任せを、お嬢様」


誰にも頼れず、自らの本心を隠し
一人でいた少女。

声の無い悲鳴を上げ、助けを求めていた少女は

差しのべられた手を今掴んだ。



--------------------------------------------------------------------

久々の投稿です

少し量が少ないですかね?


投稿してなんですが、ここのサイト大丈夫なんでしょうか?
ハーメルンの方を主としようかな〜と考えている今日この頃です。

しかし恋姫を書くのが難しいです。


ではでは〜今後とも応援・コメントよろしくお願いします!

-63-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える