プロローグ
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体を震わす。
『寒い…』
そう思った。
少年は真っ白な小部屋にいた。
服は着ている。
といっても、厚着ではないし、肌の露出も多い。
だから寒いと感じたのかもしれない。
だが、それはありえない。
実際はこの部屋は快適な温度に調節されている。
正直に言うと、少年が寒いと思ったのは体が震えたからである。
震える=寒い
こういう等式が、少年の中で成り立っているのだ。
そもそも『部屋』ではなく、『箱』と言った方がイメージ的には正しい。
少年は、先ほどから熱心に話し込んでいる自分の周りにいる人を観察し始めた。
話をしているのは2人だけで、あとの人はパソコンのキーボードを叩いたり、メモをとっている。
共通点はみんな同じ服を着ていることだ。
この場所と同じ色の。
少年は興味深そうに観察を始める。
「冗談は嫌いだ」
男の人だ。
「私だって同じよ」
今度は女の人。
「あり得ない………まずこんな実験から冗談みたいなものだったろう?」
ジッケン?
なにそれ?
「そうね。でもここに、私たちの目の前に、成功例があるわ。それも予測以上の完成度で」
セイコー?
カンセー?
何をいってるのだろうか。
「どうする?」
「決まってるじゃない。育てるのよ」
少年は首をかしげる。
それを見て女は笑顔で言った。
「兵器として」
少年に震えが走った。
兵器という単語の意味はわからない。
だが、わかったこともある。
震えるのは寒い時だけでは、ない―――