小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

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 入学式後


「いいですか。だいたい、錬さんはいつもいつも・・・・・・」

「はい・・・・はい・・・・」

「はぁ〜〜・・・」

 ああどうも、絶賛深雪に説教をされている三島錬だ。その場で正座をさせらている俺とそれを見下ろしながら説教をする深雪、さらにその隣で人差し指を眉間に当てため息をついている達也という構図になっている。周りは遠巻きに見ているだけだ。

 なぜこうなっているのかは明白である。深雪の第一声が、

「そこに直りなさい!!!」

 と圧倒的な威圧感と共に俺に正座を求めてきたからだ。

 どうやら俺が二科生であることを言わなかったことがよほど気に障ったのか、それとも入学式からのもろもろによるストレスかはわからないが、深雪の第一声に、あっやっちまったと思ってしまった。

 どうやら俺に対する我慢の限界を迎えていたのか、この機会にとばかりにこれまでのからかいに対することも言っている。なかには他のやつらに聞かれてはいけないこともあるが、そこは俺である。空気の壁で周りには聞こえていない。あらかじめ展開していただけだが・・・・

「聞いていますか!! 錬さん!!」

「まことに申し訳ありませんでした。」

「うっ・・・」

 俺が見事に綺麗な土下座をしたため、深雪の勢いが途切れたようだ。

「そのくらいでもういいだろう、深雪。錬も反省しているようだし。」

「・・・・わかりました。錬さん、早く立ってください。少し恥ずかしいです・・・」

 達也が助け舟を出してくれたので、この危機的状況からようやく抜け出せた。深雪に言われたとおり、立ち上がると、タイミングを見計らったように、

「で? 突然話が聞こえなくなったのは錬の仕業だとして、あんたがからかったのに怒ってしかってくれてたのよね? 司波深雪さん?」

「あなたは? いえ、自己紹介からですね。私はお兄様の妹で司波深雪と言います。深雪とお呼びください。」

「え、ええ。あたしは千葉エリカよ。エリカでいいわ。それに敬語じゃなくてもいいわよ。同じ学年なんだし。」

 折り目正しく頭を下げた深雪にエリカが少したじろぐ。まぁ実際お嬢様だし、マナーも完璧だしな。

「ええ、よろしくね、エリカ。」

「ええ、よろしく、深雪。」

 どうやら俺を通してすぐに意気投合したようだ。深雪も気軽に話しかけるエリカとは気が楽だろう。

「もう、いいかしら? 深雪さん? 錬君?」

 声のしたほうには朝にも会った七草会長がいた。ていうか早速下の名前かい・・・・

「あっ、はい。すみませんでした、話の途中に・・・」

「いいえ、大丈夫よ。今日は挨拶だけだから。詳しい話はまた日を改めてね。」

 それだけ言うと生徒会の面々は去っていく。服部さんであろう人は達也だけににらみをきかせていた。なぜ達也だけ? 俺、睨まれないことないよな? むしろにらまれる要素しかないと思うが・・・・

「ああそうそう。錬君も司波君も『またね』。」

 七草会長は一度振り返り、それだけ言うと今度こそ去っていった。

 俺もまたって言ってたからにはもしかしたらもしかするかも・・・・まあ確定じゃないしそれまでは気にしないでおこう・・・・

 ちなみに服部さんはやっぱり達也しか睨んでいなかった。

「達也、お前あの人に何かした?」

「いいや、知らん。」

「そういえば、生徒会の人たちは会長から深島さんのことを聞いてたみたいでしたよ?」

 柴田さんが言うには、俺が説教をされている間に俺の情報を七草会長が話していたみたいだ。まぁ調べようと思えば俺はすぐにわかるし、親父も知っている七草会長なら、俺が何で二科生かわかるはずだ。すでに俺に魔法を教えてくれる人は最高の人がいるのだから。

 そこから行くと地神神社の息子の俺と深雪の兄なのに二科生の達也では見る目が違うのかもしれない。あくまで予想だが。まぁ面倒ごとはないに越したことはないので良かった良かった。

「それで・・・・そちらのかたは?」

「あっ! はい。柴田美月と言います。よろしくお願いします。」

「こちらこそお願いします。」

「同じクラスメートで、俺と同じ眼だからエリカが話しかけたんだ。」

「なるほど、そういうことでしたか。わたしはてっきり・・・」

「あ〜勘違いしそうだったな?」

「いえ、そんなことは・・・」

 な〜んかネガティブになってんな・・・

「・・・・お兄様、すみませんでした。」

 これはどっちだ? いまのやりとりか、それとも服部さんのほうか?

「何に対して謝っているのかはわからないが、深雪が気にすることではないよ。」

「まぁそうだな、気にすんな。」

 ま、達也がこんなことで気にするようなやつではないことだけは確かだな。

「しかし・・」

「錬にも言われているように、本当に気にしていないよ。」

「なぁ、それよりこの後どうする?」

 このままでは埒が明かないので、エリカに目配せする。それにエリカも気づいたようで、

「ねぇせっかくだから、お茶でも飲んでいかない? おいしいケーキ屋さんがあるらしいんだ。」

「いいですね! 私も行ってみたいです。」

 エリカの提案に柴田さんが速攻で賛成した。やはり女子は甘いものが好きなのだなと思わせる返事の速さだった。

「お兄様?」

「ああ、わかってるよ。俺も深雪のためにどこかでお祝いをしておきたかったしね。」

「そこで自分を入れないのが達也だな。」

「む・・・」

「へ〜、司波くんって『あれ』なのね・・・・」

「妹さん思いなんですね・・・・」

 エリカの『あれ』は柴田さんの感想からわかるだろう。あえて口にしないのがエリカという所か・・・

 とりあえず、エリカの提案どおり、お店に行ったのだが、そこのお店はデザートのおいしいフレンチのカフェテリアだったので、5人で昼食をとってから、雑談をして過ごした。

 そして、俺は鍛錬に行かなければならないので、途中で抜け出した。そのときには達也に睨まれたが、どうせ男一人がい辛いとかそんなことだろうから無視した。

 その後は家に帰り、鍛錬と修練をして部屋の布団に寝転んだ。

 今日から原作が始まったのだ。これからいろいろなイベントがあるから、対応できるかは不安だが、頑張ろう、と気合を入れて眠った。



 錬は知らない。自分の影響で原作キャラたちがどうなったか。そして、自分自身の能力がいかに常識はずれであるかを。このことを知るのはもうまもなく。その日を楽しみにしておいてくれたまえ・・・・

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