小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

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 担任は知り合い



「錬ちゃん。昨日言い忘れてたけど、今日からママとの鍛錬は終わりだから。」

「へ?」

 ああどうも、三島錬だ。朝食の席で突然の母さんからの発言で固まってしまった。

「前々からママじゃもう錬ちゃんの相手が難しくなってたのよ。高校生になることだし、これからは自分で考えて鍛錬してね♪」

「ちなみに私との修練はそのままだ。まぁ魔法は自分との向き合いだからな。これまでどおり二人でできなるときもあるかもしれんので、自分のペースでやれ。それができることは教えてきた。」

「わかりました。父上。母上。」

「うん、よろしい♪」

「うむ。」

 どうやらこれからはつきっきりで教えてくれることはないみたいだ。まぁCADの地下設備ができてから、自分の鍛錬ペースが出来ていたので、あまり困らない。それよりだ、

「師匠のところはどうすればいいの?」

「先生は気が向いたときで良いと言っていた。そもそも毎日来るとは思っていなかったようだ。私たちも思っていなかったがな・・・・まぁ向上心があってよいことだな、ハッハッハッ!!」

 おいおいおい・・・・毎日じゃなくて良かったのかよ・・・・いやでもいかなかったらいかなかったで、母さんとの鍛錬だったんだろうな〜・・・あれ、それだともっと早く自分で鍛錬できたんじゃ・・・・まぁいいか・・・

「師匠は今日行っても何も言ってなかったんだけど・・・」

「だいぶ前に聞かれたからな。いまさらと思ったのだろう。」

「マジか・・・」

 もう過ぎたことだし、気にしないことにしよう・・・・

「じゃ、行ってくるよ。」

「いってらっしゃい、錬ちゃん。」

「気をつけてな。」

 さて、学校に行こうか。今日は授業とかはないけどな・・・





 この世界のボックス型電車であるキャビネットに乗り、第一魔法科高校に着いた。一年E組に入ると、まだ早いのかあまり人はいなかった。

 しかし、そこに見知った人物がいたので話しかけることに。

「よう、幹比古。いてくれてると思ってたぜ?」

「ああ、錬か。君が同じクラスだったなんてね。エリカは?」

「あいつも同じだ。これで俺たちは初めてそろったわけだ。」

「そうか、エリカもE組か・・・・まぁ頑張ってね?」

「お前は手伝おうとは思わないのか・・・」

 何に対してかは言うまでもなく、エリカの対応だろう。中学では『対エリカ用最終兵器』だったからな・・・・はぁ〜〜・・・・

「僕はあまり手伝えないよ。今は前の状態を取り戻すのが先だからね・・・・」

「そうか・・・五感は?」

 五感というのは精霊に自分の五感を共有できる度合いを聞いている。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚のうちどの程度共有できるのかは、精霊を使役する魔法師の力量の指標にもなる。

「三つだね。頑張れば四つは。前は全部出来てたけどね・・・」

「あせるなよ。精霊は感情の機微に敏感だからな。」

「分かってるよ。錬がいてくれるから、落ち着いて自分を把握できるし。」

「そうか・・・」

 原作の幹比古は内向的な性格が災いして、自分しか見えていなかったが、俺と出会ったことで周りという客観的な視点を持っているので、話しやすい青年になっている。現に中学では結構な友人がいたようだ。

 それから、幹比古と雑談をしていると、教室に知っている気配が入ってきた。

「おはよ〜〜。」

 初めから俺たちがいると思っての挨拶だ。俺と幹比古は早起きなのは知っているからだろう。挨拶をしてきたのはエリカである。

「ああ、おはよう、エリカ。」

「おはよう、エリカ。」

「うん、やっと三人一緒ね。中学では一度もならなかったのよね。まぁ、これから3年間は一緒よね。よろしくね、錬、ミキ。」

「ああ、よろしく。」

「エリカ・・・いい加減、その呼び方を辞めてくれないかい?」

「いいじゃない、あたしが気に入ってるんだし。」

「はぁ〜〜・・・」

「あきらめろ、幹比古。エリカはこういうやつだ。」

「ちょっと、どういうことよ?」

「わかってるよ、錬。でも、言わずにはいられないんだよね・・・・」

「なによ、あんたたち。いいたいことがあったらはっきりといったらどうなのよ。」

 エリカが加わり、雑談に花を咲かせていると、教室は結構雑然とした雰囲気になってきた。柴田さんも合流し、幹比古との自己紹介が終わると、

「あ、あの、私のことは美月と呼んでください!」

 と、突然柴田さんが言ってきた。詳しく聞いてみると、俺たち三人の仲が羨ましくなり、仲良くなりたいがために下の名前で呼んでほしいようだ。

「じゃあ、美月。あたしも呼び捨てでもいいわよ。」

「エリカちゃんはエリカちゃんで。」

「そ、そう・・・」

「俺は錬でも、錬さんでもいいよ。美月。」

「はい、錬さん。」

「僕は幹比古でいいから。美月さん。」

「ッ///・・・は、はいっ! 幹比古さん!!」

 おやおや、これはこれは・・・・原作とは違い、幹比古には優しげな雰囲気があるので、けっこう女子にも好印象を与えるがこれは・・・・

 二人の雰囲気が初々しいので、早くも二人の空気を察知したエリカと二人でニヤニヤしていると、

「これはどういうことだ?」

 後ろから達也が声をかけてきた。達也が教室に入ってきたのは少し前で、俺たちの雰囲気に入りづらかったのか、少し遠慮していたようだ。

「ああ、こっちの男子が俺のもう一人の幼馴染の吉田幹比古だ。美月となんだかいい雰囲気だから、ニヤニヤしてた。」

「・・・そうか。」

 何か考えているようだが、別に気にするほどでもないかな?

「それよりも、おはよう。あと、師匠のところはこれからは気分次第で行くことになったから。」

「そうなのか? まぁそうか。どのくらいの頻度で行っていたのかは分からないが。」

 毎日毎朝って言ったら引くかな? 言わないけど・・・



 予鈴がなるまで雑談していたが、さすがに予鈴が鳴ったのでそれぞれ席に着く。俺は幹比古の隣の席のようだ。達也はあのタイピングで『西城レオンハルト』に話しかけられている。予鈴が鳴ってしまっているので、エリカと西城の掛け合いが見れなかったのは少し残念だが、どうせ後で見られるだろうからそのときまでとっておこう。

 達也のように俺も高速タイピングは出来るが、わざわざ目立つ必要もないため、視線ポインタでやっている。脳波アシストも使えるが、タイピングよりも早く終わってしまうため、一番遅いものでやっている。ちなみに脳波アシストが一番速いのは、特典の影響である。

〔5分後にオリエンテーションを始めますので、自席で待機してください。IDカードを端末にセットしていない生徒は、速やかにセットしてください〕

 教室の前面のスクリーンにメッセージが表示された。黒板とかは前時代過ぎて骨董品扱いの時代なので、これが当たり前の教室での風景だ。

 そして、本鈴がなり、『あの人』が現れた。無駄に気配を消しながら入ってきたので、俺と達也を意識して入ってきたのだろう。俺の知覚にかかっている時点で隠れていないが・・・・

「はい、欠席者はいないようですね。それでは皆さん、入学、おめでとうございます。」

 無難な挨拶から始まり、こちらの警戒心を取り除く。まぁ単純であり、正攻法である。

「はじめまして、この学校の総合カウンセラーの『小野遙(おのはるか)』です。」

 はいはい、遙さんですね、わかります。この人は達也のさらに後から師匠のところに来た人で、隠密の適性があったため、師匠のところに教えを受けに来た人である。毎日通っていた俺とは面識があるが、達也とはない。

 面識があると入っても、俺も朝しかいないため、数回だけ会ったことがあるだけだ。そのときの訓練で、遙さんの相手をしていたが、すべて見破っている。遙さんの悔しそうな顔はなかなか愉快だった。

 その後はもう一人のカウンセラーである柳沢さんの紹介やカウンセリングの仕方があったが、聞き流した。内容は頭の中に入っているのだが。

「それでは、選択科目の履修登録を行って、オリエンテーションは終了です・・・・あらっ?・・・・履修登録の終わっている人は退室してかまいませんよ。ガイダンス開始後は退室は認められませんので、今のうちにお願いします。」

 という遙さんだが、誰も席を立たないので、流したようだ。少なくとも、俺と幹比古と達也は終わっているだろう。

「それと、深島錬君。履修登録は終わっているようなので、今から職員室に来てもらえますか?」

 はい? こんな教室で何で名指し? 目立っちゃうでしょ、遙さん! やめて、平穏に過ごさせて!!

「わかりました・・・」

 まぁそんな事いえるはずもなく、素直に従う。当然俺に注目するクラスメイト。エリカと美月ははてな顔。達也と幹比古は憐れなとでもいいたげな顔。その他は困惑がほとんどである。俺はある程度予想しているが・・・

「それでは行きましょうか。」

「はい・・・」


 そして、廊下に出てしばらくすると、

「錬君。単刀直入に聞くけど、何で二科?」

「親の方針ですよ。俺が二科に行けば一人は一科に行けるから。俺は担任が要らなくてもいいので。」

「それもそうか・・・でも、二科は・・・」

 おそらく、差別表現のことだろう。カウンセラーだからなこの人。本質的には。

「ああ、大丈夫ですよ。親から許可はもらってるので。」

「・・・・そう、なのね。地神神社の息子にどうこう出来る訳ないしね。それなら安心だわ。」

「ええ、そうですね。」

 などなど、軽い雑談をしながら、職員室に入った。

 そして、軽い挨拶があり、学年主任や理事長と思しき人から一言。

「教職員枠の風紀委員をあなたにお願いいたします。」

 と頭を下げながら、非常に丁寧な対応をされました。

 予想はしていたよ・・・してたけどさ、

「はぁ、わかりました・・」

 丁寧すぎて、どう返していいのかわからず、非常にゆるい返事になってしまったのは致し方ないと思うんだ・・・・

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