小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

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 注目の的


 ああ・・・・どうも、三島錬だ。いま少し気が滅入っているが、気にしなくてもいい・・・

 生徒会室を出た後は、専門課程の見学だったので、目立つなんてもってのほかの俺と幹比古が、他のクラスメイト達と一緒に案内をしてくれる人についていっていたのだ。

 エリカは美月を連れてどこかに行き、達也は西城とどこかに行っていた。おそらくこの二組で回っていることだろう。俺と幹比古はクラスの人たちと話しているのである程度親しくなっている。特に女子と。

 俺と幹比古は世間一般的に言ってイケメンなので、そうなるのは仕方ないし、中学でもそうだったのであまり気にしない。男子の方は嫉妬の視線の割合が大きいが、そういうやつには親しげに話して、俺たちと仲良くすれば女子とも仲良くできるというのを分からせれば、尊敬の視線に変わる。

 俺は意図的に、幹比古は自然と出来ている違いはあるが、そんな感じで俺と幹比古はクラスに馴染んだ。昔の幹比古は内気だったが、俺の影響で明るくさわやかなイケメンになっていた。

 中学の終わりには、幹比古の家族に幹比古のことでお礼を言われていた。昔のままだったら、今でも腐っていただろうと思っていたようだ。まぁ、原作ではそうだったんだけどな・・・・

 とりあえず、俺と幹比古はクラスメイト達と見学にまわっていたのだ。

 そして、通称『射撃場』と呼ばれる、遠隔魔法用実習室に来たときである。ちょうどそのときは3年A組、つまり、七草会長が実習をしていたのである。

 生徒会室での七草会長の怪しげな笑顔をここで振り返っていれば、俺は全力でここから離れていただろうが、そんなことはもう出来ないので諦めるしかない・・・・

 さて、少し語りすぎな気がしてきたが、はじめに気が滅入っているといっていた理由は、いわずもがな、七草会長のせいである。

 彼女は見学に来ている大勢の新入生の中から俺を見つけると、おそらく誰もが見惚れる笑顔を浮かべた。その笑顔の意味をいっている人間からすれば、何か良からぬことを考えていたと思うだろう。もちろん俺は後者だと思ったので、すぐに逃げようとしたのだが、

「三島錬く〜ん♪ ちょっと来てもらってもいいかな〜♪」

 といってきやがったのである。クラスメイトは一斉に俺に振り向き、それにつられて周りの新入生も俺に視線を向ける。俺は左手の人差し指で眉間を押さえ、ため息を漏らした。

[ねぇ、錬? 僕にはエリカに似ている人のように思えるのだけど?]

[ああ、そのとおりだ、幹比古・・・エリカが七草会長に代わったのか? いや、2人に増えたと思ったほうがいいのだろうな・・・・]

[その・・・・どんまい。]

 俺と幹比古は精霊を介して会話をするという、ある意味高度な事をしてやり取りをした。幹比古は目立ちたいほうではないのは知っているため、俺もあえて目立たせるようなことはしない。親友だしな。

「三島錬く〜ん? いるのはわかってるのよ〜。会長命令よ、降りてらっしゃい♪」

 どうやら、俺で遊びたいようだ、七草会長は。とりあえず行かないともっと悲惨になるのは、エリカで経験済みなので、行くことにする。

 その間に、嫉妬の視線が増えてきた。女子からはわくわくするような、何か期待に満ちた視線を感じるので、男子からがほとんどだろう。整った容姿がさらに嫉妬の対象になるようで、俺の顔がはっきりと分かると視線が強くなった。

 いまさらであるが、視線に気が滅入っているわけではない。このような視線は今までも受けてきたし、気にするほどでもない。こういう形で目立ちたくはなかっただけだ・・・

 後数日の猶予があると思っていたのに、数時間しか平穏な日常を送れなかったら、誰でもそうなると思う。

 とりあえず、下に降りて、3年生のそれも一科生の中に1年生の二科生がいるという奇妙な形になった。

「それで? ほとんど目的は達成できたのだとして、これからどうなさるおつもりですか、か・い・ちょ・う?」

「あら、やっぱり気づいた? だって大々的にしたほうがいいと思うじゃない?」

「はぁ〜〜・・・・」

「ため息は良くないわよ?」

 あんたのせいだ、あんたの・・・

「じゃあもういいです・・・どうぞ、会長から発表を。どうせすぐに広まるでしょうから。」

「ええ、それじゃ・・・・ううん、え〜、みなさん、突然ではありますが、こちらの深島錬君が教職員枠の風紀委員につきました。」

 とたんに騒がしくなる実習室内と見学側。まぁそうだろう、なんせ、俺の制服にエンブレムねぇもん。

「なぜ、二科生が、と思われる方がいるでしょう。彼は『あの』地神神社の深島兼松氏の息子であり、その親の方針で二科生なったそうです。」

 さらに動揺が周りにはしる。普通はそんなのねらわねぇよって感じだしな。俺も意図していたとはいえ、ほとんど偶然だしな、あの成績は。

 それにしても、この動揺だと、親父も有名人みたいだな。新入生の反応はあまりよくないが、3年生はすごく驚いている。何した、親父・・・・

「彼の実力を疑っている人も多いでしょう。魔法の素質は遺伝するといっても、才能は別です。そこで彼にはデモンストレーションをしてもらいます。」

 ああはい、これがあの時の笑顔の意味ですね、エリカで慣れてます。

 こういうときのために、いつでも軽く披露できる物は用意している。中学でもエリカに見せてとお願いされることがしばしばだったので、芸が細かくなっている。これも特典の影響である。実にどうでもいいが・・・

 とりあえず、御札を出し、準備を整える。

「オン」

 その言霊と共に御札が土になり、金になり、水を生み、木ができ、火が出る。そして、火から土ができて、御札に変わる。五行を現す御札だが、CADもなしにここまでの速さはなかなか出せない。

 現に見ていた幹比古以外の全員の息を呑む姿が視える。ちなみに幹比古は苦笑いだ。おそらく以前よりも『遅かった』のが分かったのだろう。本気を見せる場面でもないし、ましてや、全力なんてもってのほかだ。デモンストレーションなので本気を見せる必要もないし。

「以上が軽いデモンストレーションになります。」

 頭を下げて、終わりを告げる。わずか数秒の出来事だったが、まだ動ける人はいないようだ。しかたなく、みんなをこちらに戻すとしよう。


 パンッ


 拍手にサイオン波を乗せて、気つけをする。これは一人一人に別々のサイオン波をあたえているので、何気に超高難度の魔法である。魔法と呼んでいいかは分からないが・・・・

 これを披露した時は、さすがの親父もあごが外れるくらい驚いていた。どうやらものすごく精密な操作でないと、危険な行為のようだった。それでも親父は、

「さすがは私と真理の息子だな!!」

 といっていたので、そんなに気にしていないようだった。

 少し脱線してしまったが、みんなをこちら側に引き戻し、俺のお披露目は終わった。

 そこからは俺に対する質問攻めが怒涛のように押し寄せてきた。

 なぜ、二科生に? とか、さっきの魔法はどのように? とか、握手してください、とか、サインください、とか、抱きしめてください♪ とか、弟子にしてください!! とか、それはもういろいろだった。

 ちなみに、達也と西城とエリカと美月はその場にはいなくて、別の場所にいるのを視たので、この騒動は知らない。しかし、こういうものはすぐに広がるので、ホームルームで聞いてくるだろう。

 質問攻めも一段落し、エリカからも案の定、ホームルームで詰め寄られ、達也からは呆れ顔、美月からは心配するような顔で見られた。そして、

「お前、すげ〜な、風紀委員かよ!! ああっと、俺は西城レオンハルト。レオって呼んでくれ。」

「ああ、まぁありがと。俺は深島錬だ。錬と呼んでくれ、レオ。」

 と、西城改め、レオとの自己紹介もした。

「まぁ、錬だったら風紀委員も納得よね。だって普通に強いし。」

「まぁ、錬だしね・・・」

「錬だからな・・・」

 エリカと幹比古、達也は俺の実力を知っているので分かるだろう。レオも、

「まぁ、錬は強いだろうな。俺の直感が言ってる。ぜってー勝てないって。」

 と勘で理解していた。

「へぇ〜あんたでもこのくらいは分かるんだ?」

「ああん? なんだと?」

 と、エリカとレオのやり取りを見ながら、俺たちは和んでいた。

「本当に大丈夫なんですか?」

 美月だけはまだ心配なのかこんなことを言っているが、

「じゃあ、眼鏡をはずしてごらん?」

「え?」

「それで分かると思うから。」

「・・・・錬さんがそういうのなら。」

 そして、美月が眼鏡をはずすと、

「っ!!」

 すごくびっくりした顔をした。それもそうだろう。なんせ俺の後ろには、この世のものとは思えない絶世の美女が美月に微笑んでいるのだから。

 もちろんこれは精霊に俺からお願いして、そのような形になってくれているだけだ。しかし、それが俺の実力を理解するうえで一番早い。その証拠に、

「・・・・・すごい・・・」

 美月はぼ〜、と俺の上を見上げたまま固まっている。

 ちなみにこの精霊は感じ取れる人限定なので、幹比古に見せたときに、エリカがずるいといい、俺にせがんで絵にしたものを渡したことがある。渡した絵が良すぎたために、全国のコンクールで優勝したのはどうでもいい話である。

 俺は普段、この精霊しか周りにいない。というよりも、この精霊に他の精霊が混じることで、この精霊はある意味、大精霊と呼んでも差支えがないくらいすごすぎるのである。なので、感じ取れる人にとってはこの精霊がそばにいるだけでも安心感が生まれるようだ。

 どうでもいいかもしれないが、精霊の容姿は全体的に金色で半透明であり、ロングヘアの巫女さんでやまとなでしこの雰囲気の顔である。

 後は巫女服からでも分かるはっきりとしたバスト、くびれたウエスト、安産型のヒップ。まさに理想の体型である美女である。ちなみにスリーサイズは92-64-92である。

「な? 安心したか、美月?」

「・・・はい・・・そうですね・・・」

 どうやら精霊に魅了されたようだ。まぁ仕方がないかな、なんせ、俺の理想のだからな!!

 ちなみに金色なのは土精霊が多いためである。実にどうでもいい話だが、火なら橙、水なら水色、風なら黄緑色である。

「じゃあ、帰るか。」

「そうだね。」

 俺の言葉に反応した幹比古を筆頭に、俺の周りにいた面々が帰り支度をする。

 そして、校舎を出て、達也が深雪を探し、深雪がこちらに気がついてこちらに来たのだが、

「待ちたまえ!!」

 と、なにやら空気が読めていないKYなやろうが出てきた。原作でもあったが、そいつかどうかは分からない。だって特徴ねぇんだもん・・・・

「何か用ですか?」

 と、なぜか美月が少し怒っているように見える表情で聞いていた。

 ・・・どうやら、原作でのやり取りが起こっていた様だ。

 エリカとレオも好戦的に構えている。達也は呆れている雰囲気があるし、深雪は少し不機嫌だ。幹比古は何がなんだか分からず困惑していたが、相手の胸を見てある程度納得したようだ。

 そこから、お互いに言い争いになり、ついには、

「ウィードの分際で口出しをするな!!」

 はい出ました、KY君の発言ゲット〜。風紀委員の証はないが、今止めないでいつ止める? となるので、ここで出張ろうか。フハハハッ、こういうやつをいたぶるのは、大好物だよ、俺は。

 俺がニヤニヤしているのが分かったのか、少し離れたところにいる達也と深雪と幹比古はそろってため息をついていた。

「私たちとあなたたちで何の違いがあるんですかっ!!」

「・・いいだろう、見せてやる!!」

 と、美月に答え、KY君はCADに手を伸ばそうとするが、

「はいはいはい、そこまで〜。こっからは校則違反っていうか、犯罪になっちゃうからね〜。」

 といいながら、美月の前に出て、KY君の動きを止める俺である。

「お、お前は何なんだ!?」

 驚きの表情で俺を見るKY君。突然動けなくなったら驚くかな・・・んでもって、何ってそりゃ、

「風紀委員ですけど何か?」

「はっ?」

 呆然とした表情のKY君。

 さってと・・・・これからどうしよう・・・・

 言いたいことをいって満足し、その後を何も考えずに出てきてしまったため、すぐに七草会長と摩利さんが来てくれてよかったと思う俺であった・・・・

-20-
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