小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 日常の始まり


「え〜と? 騒ぎがあったみたいだから来たんだけど、どうなってるの? 錬君。」

 やぁ、三島錬だ。勢い良くKY君と美月の間に出て止めたのはいいが、そこからどうするかを考えていなかったため、止まった状態の三島錬だ・・・・

 まぁ、七草会長が来たので、流れに任せようか・・・・

 ちなみに、俺の体勢はKY君に左手の数珠、美月に右手の御札の格好になっている。数珠は動きを止めるCADになっていて、御札の方は攻撃的な魔法が組み込まれているCADである。俺のハード方面の技術が異常なくらい高いため、このような形になっている。

 美月のほうに御札を向けたのは、エリカに余計な手出しをさせないためである。こういうことには嬉々として飛び込むからな・・・・

「いえ、何か揉めている様だったみたいで、魔法の使用を止めるために、風紀委員として動いたまでですよ。七草会長。」

「そう見たいね・・・」

 まぁ、KY君は特化型のCADの引き金を引こうとしている状態で固まっているので、言い逃れは出来ない。ざまぁwww

「風紀委員の任命はまだなのだったのだがな、錬くん?」

「いやいや、止めなかったら止めなかったで、何かあったんでしょう? 渡辺風紀委員長?」

 俺が摩利さんの役職を言った瞬間、揉めていた一年生は驚いた表情をしていた。エリカは睨んでいたが。

 まだ修次さんとの仲を認めていないのだろう。いい加減、兄離れをしてほしいのだが・・・

「ふっ・・・・錬くんは一連の騒動は知っているのだろう? 詳しく聞きたいのでついてきてくれ。」

「ええ、そうでしょうね。わかりました・・・・・ということで、お前らは帰ってくれ。長くなりそうだし。」

「了解よ。さっさと行きましょ。」

 エリカの発言で二科生組が帰っていく。それにつられるように、一科生組も帰っていった。

「ふう、相変わらずだな、エリカの摩利さんへの態度は。」

「仕方ないだろう。自分の兄をとられたと思っているんだから。」

「仕方なくはないですよ。あいつは拗ねてるだけだから。」

「ねぇ〜、二人して何の話? コイバナ?」

 わけの分からない発言をしている会長を華麗にスルーしながら、生徒会室へと向かう。

 そして、生徒会室であらましを話し終えると、

「まぁよくある話よね。」

「入学したてではよくある話だな。」

 というのが二人の見解だった。いや、俺もそうだけどな・・・・

「入学の際の実力というのは、1年もすればだいぶ変わるからな。2年になれば一科に勝る二科生も普通に出てくるぞ。そんなにはいないがな。」

「ええ、そんな考えだったら、この先はないと思わないとね。まぁ、いまは優越感がたまらないのでしょうね・・・いつまでつづくかはわからないけど。」

 などなど、雑談のようなことを話して、俺は家に帰った。

 家では親父に学校でのことを聞いたのだが、

「いや、そこまで圧力をかけた覚えがないのだが・・・・」

「兼松さんがすごすぎるからじゃないんですか?」

 と、定番のようにのろけ、桃色空間を作るのにそれほど時間はかからなかった。




 翌日になり、師匠のところに行き、これからは毎日は来ないことを伝えると、

「ああ、やっと決めたんだね。ぼくもまさか毎日とは思っていなかったよ。」

 と、ありがたくないことを言われた・・・・なぜ黙っていた・・・いや、聞かなかった俺が悪いのか? この場合。

 とりあえず、師匠には気が向いたときには来るように伝えて、家に戻って学校に行く支度をした。

 そしていつものように教室に着いて、早くから来る幹比古と雑談していると、エリカと達也と美月とレオがそろって入ってきた。

「おう、おはよう。」

「おはよう、みんな。」

 俺と幹比古が挨拶をすると、それぞれ朝の挨拶をしていく。

「そういえば、お前ら。会長と一緒だったんだな。」

「えっ? 何で知ってるんですか?」

「またあんた視たわね? プライバシーの侵害って知ってる?」

 美月とエリカの発言で俺がなぜ知っているかが分かるだろう。原作知識もあるが。

「プライバシーの侵害ぐらいは知っている。俺がもらさなければいいだけだ。」

「はぁ〜〜、毎回おんなじ言い訳ね・・・そのうち大変なことになるわよ?」

「もうなってるよ・・・現在進行形だ。」

「へっ?」

 俺は現在進行形で厄介ごとの只中にいるのは百も承知である。生まれたときから覚悟があるので今更である。

 なにせ、俺はあいつらの実験体だしな・・・・いや、この考えはしないようにしよう・・・・だるまが脳裏にちらついて鬱になる・・・・

「それよりも、美月。今日から特訓だからな。覚悟しておけよ?」

「ふえ? 今日からするの!?」

「ああ、何事も早いほうがいいしな。」

「特訓てのは何のことだ?」

 この疑問はレオである。幹比古もハテナ顔で疑問に思っているようだ。入学式のときの話だからしょうがないがな。

「美月の眼の制御だよ。俺と同じくらい眼が良すぎるみたいだ。」

「なっ、そんなにかい!?」

「なぁ、どういうことなんだ?」

「あんたは黙ってなさいよ。どうせ分からないんだから。」

「なんだと!!」

 レオとエリカが口喧嘩している間に幹比古が美月に詰め寄り、眼の事を聞いている。美月は幹比古に近寄られて、顔を赤くしながら、あたふたしている。

「そこまで強いのか? 錬。」

「ああ、俺の見立てではかなり化けると予想している。俺の後ろのやつもそういっている。」

「俺では見えないんだがな・・・・あの絵を見る限りはかなり大きいのだろう?」

「まあな。普段は感じ取れないが、視ることができる程度に隠蔽させているし。」

 俺の後ろのやつとはもちろん精霊のことだ。あまりに存在の力が強いために、そのうち実体を持つかもしれないぐらい密度が高い。そのときはどうなるかが少しだけ楽しみである。

 その後、他の面々を落ち着かせ、今日の放課後から特訓を開始することになった。そのときに幹比古も一緒にする予定だ。美月と幹比古ならお似合いだし、いい雰囲気だからだ。リア充になるのも時間の問題だろう。

「で? 達也は生徒会室で昼食を?」

「ああ、深雪と一緒にな・・・なぜ俺が・・・・」

「まんざらでもないだろう?」

「まぁそうなんだがな・・・」

 雑談の中で、達也と深雪がお昼に生徒会室に呼ばれたことが出てきた。

「錬もどうだ? 昨日はそこで昼食をとったのだろう?」

「いや、学食に行ってみたいからいいや。」

「そう、か・・・はぁ〜・・・・」

「まぁ、がんばれや。」

 無責任に聞こえるかもしれないが、誰も好き好んであそこに行きたいわけでもないので、遠慮することにした。

 どうせ、達也は風紀委員になるだろう。昨日の時点で、達也を風紀委員に推薦したしな。七草会長は小躍りしそうなくらい嬉しそうだったな。達也を自分の近くに引き込むつもりだったのだろう。

 そのときの達也の紹介は、

「実技試験の評価基準があいつには合わないだけで、実力で言えば摩利さんよりも上だと思いますよ?」

 といったときの驚きようはすごかったな。理由を聞いてきたが、そのうち分かるとしてごまかした。

 そんなこんなで、あっというまにお昼休みになり、学食でカレーやラーメンなど、ある程度食べて午後の授業に向かった。

(錬はよく動くので、一般の高校生の約5倍くらい食べるので、周りの生徒が驚愕していたのを錬は知らない。ちなみに、生徒会室では他の人に気を使い、一人前で済ませていた。)

 午後の授業では、さっさと課題を終わらせ、のんびりいつものメンバーで駄弁っていた。こういうときは監督する人がいなくてよかったと思うところだろう。

「で? 説明してもらおうか、錬。なぜ俺が風紀委員に選ばれたんだ?」

「おっ、マジか、達也。やったじゃねぇか。一科の連中の悔しそうな顔が眼に浮かぶぜ。」

「何馬鹿なこと言ってんのよ・・・・で、何で錬に聞いてるの?」

「ああ、俺が達也を推薦してやったんだ。ていうか、七草会長は元々、お前に生徒会枠の風紀委員をやってもらいたかったみたいだったぞ? 俺が何も言わなくてもそうなっていただろうよ。」

「幹比古でもいいだろう、それなら。」

「僕じゃ無理だよ。まだ、CADでの扱いが難しいんだ。昔よりも実力が劣る現状ではね・・・」

「・・・・すまん。軽率だった。」

「いいよ、気にしてないしね。」

 幹比古がなぜ二科生なのかという話題ですでに大抵のクラスメイトは理由を知っている。幹比古が気にしていないので、クラスメイトも変な同情心はない。幹比古の心が強くなった影響だろうが、これでますます女子にもてている。・・・・少しだけ、イラッとした。変わりすぎるだろうと・・・・

「劣るといっても微妙だけどな。いつの話だ、ということだし。」

「錬をみてると、自分の実力があやふやになる時があるんだけどね・・・・」

 実際に幹比古の実力はあの頃よりも格段に上がっているのだが、俺を基準に考える節があるため、幹比古は自覚がない。客観的にみて、達也よりも少し劣る程度なので、だいぶ実力は上なのが分かるだろう。

 これからの数々の騒動で自覚していくと思うので、俺から言うことは特にない。こういうのは自分で気がつかないといけないと思うしな。

「ま、一人だけ二科生っていうのも寂しいもんだからな。お前を巻き込んだわけだ。」

「巻き込むなよ・・・」

「錬にしては珍しいわよね? そういう時は他の人は巻き込まないようにしてたのに。」

「そうじゃないぞ? 巻き込んでも大丈夫なやつがいなかったから、巻き込んでいなかっただけだ。」

「だからって俺を巻き込むなよ・・・・」

「まぁ、お前なら大丈夫だ、達也。がんばれ。」

「お前には言われたくないんだがな・・・・」

 などなど、雑談をして、放課後になり、達也が生徒会室にまた呼ばれたり、レオとエリカは口喧嘩をしながら、仲良く? 帰っていった。

 あいつらはお互いに計っているかのようにあの空間を作るから、もうくっついてしまえと思うのは一般的な意見だろう。あの空間が桃色になれば、言うことはないだろう。今は火花が散っているが。

「じゃあ、俺たちは特訓といこうか。」

「はい! よろしくお願いします!」

「あんまり、緊張しない様にね、美月さん。精霊は感情に敏感だから。」

「あ//// は、はい、幹比古さん////」

 で、すでに桃色な空間が形成されようとしているのは、俺の後ろから並んでついてくる美月と幹比古である。

 もうお前ら、くっつけよ! 甘すぎるだろ!! 両親のを体験している俺は耐性があるが、すれ違う生徒は羨ましそうな視線と嫉妬と殺気を含んだ視線を二人に向けている。前者が女子で、後者は男子女子両方だ。

 二人は二人だけの世界に入っているようで、周りの視線には気がついていないようである。俺が気にしてもしょうがないので、足早に訓練棟に向かうことにした。

-21-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える