小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 風紀委員会



 ああどうも、三島錬だ。そろそろこの挨拶も面倒になってきた・・・・止める気はないが。

 美月の特訓は俺の精霊でなれてから、幹比古の使役する精霊で制御方法を体感し、最後の確認で通常の精霊を視ることで制御方法を確立する流れになる。

 しかし、最初の段階で美月がぼ〜、として特訓にはなっていない。

 仕方ないっちゃ仕方ないがな・・・・俺の精霊は最高だからな!!(錬には親の影響が出ています)

 幹比古は何をしているかというと、CADの調整をしている。汎用型のCADで幹比古の魔法を再現できるようにしているので、その発動速度を上げるための調整だ。

 俺との修練でだいぶ処理速度は向上しているのだが、まだまだだと思っているみたいで、前向きな姿勢はいい傾向だろう。

 ちなみに、俺特製の特化型CADも幹比古専用のがある。これまた形が特殊で、扇型のCADであり、どうやって出来ているのかは秘密である。なので、調整も俺にしか出来ないが・・・・

 俺特製のCADを持っているのは幹比古の他にはエリカしかいない。両親と夜島には神社を継ぐときに試験として作るように言われているので、作っていない。

 達也や深雪にも作ろうかと思ったが、達也は自分で出来るし、深雪も達也のほうがいいだろうと思ったので、作っていない。

 エリカ専用のCADはいつか語ることがあると思うので、その時にということで。

「あ〜、とりあえず今日は終わろうか。」

「・・・・・・」

「・・・おい、美月。」

「・・・・・・」

「美月さん?」

「ほえ?・・・・・・あっ//// な、何ですか!?」

 俺の声は聞こえなくて、幹比古の声は聞こえるのか・・・・

「まぁ徐々に慣れていけばいいよ。錬の精霊は特別だしね。」

「は、はい・・・」

 美月がぼ〜としていたのを幹比古に見られて恥ずかしがっているようだ。

 その後は俺だけが先に帰ったのでどうなったかは分からないが、あの二人ならうまく言っていることだろう。

 そして翌日、ホームルームで達也に昨日の放課後について聞いてみた。

「で? 服部副会長と模擬戦を?」

「まぁ、な・・・」

「えっ、すごいじゃないですか! たしか、服部先輩って入学以来負けなしって噂じゃなかったですか!?」

「ああ、そうらしい・・・・」

 今達也に聞いているのは、昨日の放課後に達也に対して反発があった服部副会長との模擬戦で達也が勝ったことだ。どうも、深雪が服部副会長の態度が気に入らなかったみたいで、深雪のためにやったようだ。達也の場合、普通はやらないからな。

 ちなみに、この話を聞いているのは俺と美月の二人だけなので、好戦的な二人は聞いていないし、これからも知ることはないだろう。

 その後、遅れてきたエリカやレオなどとも雑談に興じながら過ごし、放課後になった。

「じゃあ行くか。」

「そう、だな・・・」

「何だ? 気が重そうだな、達也。」

「当たり前だ。そういう錬は気にしていないようだな。」

「何を?」

「二科生ということを。」

「ふん、そんなもん気にしていられるほど、風紀委員は甘くないよ。」

「どういうことだ?」

「おそらく昨日も言われていただろうが、風紀委員は実力が物をいい、立場は二の次だと言うことだよ。」

「・・・・そういうものか?」

「ま、実際にやっていたらわかるだろうよ。」

「お前も今日から風紀委員なんだがな・・・・」

 原作知識を参考すれば、風紀委員がどういうものかは分かるだろう。まぁ、風紀委員は実力主義が基本なのはどこでも一緒だと思うが・・・・

 そして、風紀委員会室に着くと、すでに全員がそろっていたようだ。

「よく来たな、二人とも。まずは席に着いてくれ。」

 摩利さんに促され、俺たちは席に着いた。

「それでは全員そろったな?」

 摩利さんが部屋を見渡しながら話し始めた。

「また馬鹿騒ぎの一週間がやって来た。風紀委員としては最初の山場だ。昨年みたいに風紀委員が率先して馬鹿騒ぎを起こすようなまねはするなよ?」

 苦笑いが起こっているのがおそらく生徒会枠と部活連枠の人たちで、不機嫌そうな顔をしているのが教職員枠の人たちだろう。

「それでは卒業生の補充が間に合ったので、紹介をしておこう。二人とも、立ってくれ。」

 俺と達也が立つと、胸の部分に視線が刺さった。驚いた表情はしていないので、あらかじめ知っていたようだが、興味深い視線と不機嫌な視線に分かれた。どちらがどちらかは言うまでもないだろうが。

「一人は噂が上がっていたので知っているものも多いと思うが、1―Eの深島錬と同じく1―Eの司波達也だ。」

 そこでようやく達也に視線が向き、今度は二人を除いて驚いた表情をしていた。こっちも二科生とは思わなかったのだろう。驚かなかった二人は昨日のうちに会っていたのだろう。

 原作通りなら、『辰巳鋼太郎』と『沢木碧』なのだろう。辰巳先輩はがたいがいいほうだったのですぐにわかり、もう一人が沢木先輩と言うことなのだろう。

「『あの』深島兼松氏の息子であるのなら心配はありませんが、そっちのやつはどうなのですか?」

 でたよ、また親父が・・・・ほんとに何やったんだよ、親父・・・・

「心配は要らんよ。司波は服部に模擬戦とはいえ勝ったからな。」

 摩利さんの発言でどよめきがさらに広がった。そりゃ入学以来負けなしの服部副会長が1年のそれも二科生に負けたのだから。ま、達也なら納得だがな。

「そ、それは本当なのですか? にわかには信じられないのですが・・・」

 さっき質問した人がまた聞いた。普通は信じられんだろうしな、普通なら。

「ああ。あたしと生徒会の面々の目の前でやり合ったから、生徒会長からも同じ事が聞けるぞ?」

 それを聞いて質問した人は嫉妬のような視線を達也に向けた。ちなみにこの人は先ほどから不機嫌な視線を向けていたので、教職員枠の人なのだろう。

「他に質問のあるやつはいないな?」

 摩利さんが喧嘩腰の口調で聞く。達也はその口調に少々驚いているようだが(表情はまったく変わっていないが、錬や深雪は分かる程度)、このぐらいでないと、この委員会の長は務まらない。

「それでは、新入生には私から説明をしておくから、各自レコーダーの確認後、巡回に行ってくれ。それでは、出動!」

 摩利さんの合図でそれぞれ委員会室から出て行く。出て行くときに達也は辰巳先輩と沢木先輩に声をかけられていた。どうやら原作同様、気に入られたようだ。

 先輩方が出て行き、部屋には俺と達也と摩利さんだけになったところで聞きたかったことがあったので聞いてみた。

「摩利さん? ひとつ聞きたいことがあるのですが。」

「何だ? 錬君。」

「どうしたんだ? 錬。」

「ああ、部屋がやけに綺麗だから、摩利さんの悪癖が直ったのかなと。」

「うっ・・・」

「・・・・ああ、それか・・・」

「達也の様子を見るに、達也が片付けたみたいだな。まぁ、予想通りだが・・・」

「し、仕方がないだろう! 片付けようとしてもなぜか片付かないんだから!!」

「仕方がなくないでしょう。片付けと言うのはきちんと整理すると言うことだとあれほど言っていたのに。」

「あたしなりに頑張っている!」

「いや、ひとつのことをやっているのに、しまうのをいっぺんにしようとして、それが積み重なって片付かないって前に言いましたよね?」

「・・・そうか、それで全然・・・」

 俺が説明していると、達也が納得顔になっていた。おそらく手伝おうとしてもらって全然進まなかった理由が理解できたみたいだ。

「そ、そんな事言っていたか?」

 ・・・・この人は・・・・自分に都合の悪いことは忘れるのか?

「ええ。」

「そ、そうか・・・」

「まぁ、そのことを聞きたいわけではなかったですが。」

「違うのか?」

「ええ、達也に聞いたほうが早いな・・・どのくらいあった?」

 これだけで達也には分かるだろう。

「ああ、かなりあったぞ。掘り出し物が。」

「掘り出し物? 何のことだ?」

「CADのことですよ。こういう場所には珍しいものが多いですからね。試験用のCADを試すには絶好の場所ですし。」

「しかし、旧式だぞ。」

「確かに旧モデルですが、エキスパート仕様の高級品ですよ。ここにあるのは。」

「そうなのか?」

「ええ、このシリーズは・・・」

 達也の説明があり、俺の補足を聞いた摩利さんは、

「・・・・それをガラクタ扱いしていたのか。」

 と、脱力しながら聞いていた。そりゃ、そんなもんが無造作にこんなところにあったらそうなるだろう。

「それよりも、錬君も詳しいな。司波は服部との模擬戦で知ったが。」

「俺は一から作ってますから。」

 なんでもないように俺が言うと、

「は? 一からというとハードからか?」

 信じられないような表情で摩利さんが聞いてきた。

「ええ。ですからこんなのもありますよ。」

 といいながら、数珠型CADを取り出す。

「何だ、数珠なんか取り出して・・・・いや、まさか、これがCADか!!」

「まぁ、普通はそう思いませんよね・・・」

 摩利さんはさらに信じられないといった感じで、達也はため息をついている。達也はあらかじめ知っていたので驚いてはいないが、これを見る度にため息をついている。まぁ、普通はありえない形をしているからな。

「一つ一つの珠に別々の役割を与えて、それが連鎖するようにすると出来ますよ。意外と。」

「いやいや、高校生というか大学生や現役の研究者でも無理じゃないか、そんなこと・・・」

「ですよね・・・」

「まぁいい。驚きすぎてどうでもよくなってきた・・・期待の新人ということだな!」

 無理矢理感はあるが、納得したようだ。

 それじゃ、委員会の顔合わせも終わったし、取締りと行きますか!!

-22-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える