小説『魔法科高校のイレギュラー』
作者:rassan()

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 会頭に遭遇



 やぁ元気にしているか、三島錬だ。

 委員会の顔合わせが終わり、摩利さんから風紀委員での活動内容を確認し、レコーダーとCAD携帯許可証(魔法科高校ではCADの所持は許可がいる)をもらい、CADを取りに来たところだ。

 様々なCADを持っている俺だが、通常はブレスレット形態の汎用型CADを使っている。古式魔法の家系である三島家だが、一般的な魔法師の魔法を使わないといった変なプライドはなく、逆に現代魔法を取り入れて地陣魔法はほぼ現代魔法の形になっている。ただ、精霊を介するので古式魔法という分類になっているだけなのだ。

 なので、地陣魔法の発動速度もCADに頼らずとも現代魔法に劣ることはない。思考速度を上げることによりCADなしでも現代魔法に劣らない発動速度を出せるのだ。

 ただし、思考速度を上げることは必要なときだけにしないと、日常生活に支障をきたすので、非常時にしか使用しないように親父に言われているため、CADを使っている。

 また、俺特製のCADだと隠密性は上昇するが、風紀委員など対外的に見せるためにははっきりとCADを見せないといけないので、『昨日』のうちにブレスレット形態のCADを取り寄せ、俺専用に調整しておいたのだ。

 (実際は夜島があらかじめ用意していたのだが、余計なことは言わない夜島は言わなかっただけで、なぜ用意していたのかというと、風紀委員か生徒会などに入れられると予測し、通常のCADが必要になると予想していたため)

「達也はこれからどうするんだ?」

 ちなみにここまで達也と来ている。達也は委員会室にあったCADを借りてきているため、俺に着いてくる必要はなかったが、なんとなく着いてきたようだ。

「ああ、俺はエリカと待ち合わせだ。部活を回るのについていく予定だ。」

「ああそういえばそんな事いってたな。・・・・なんで達也となんだ?」

「・・・そういえばそうだな・・・・風紀委員は錬もだしな・・・」

 俺の指摘に少し考え込んでいる達也だが、エリカのことだしな・・・・

「エリカのことだし、なんとなくだと思うがな。」

「そ、そうなのか?」

「ああ。その場のノリで生きているようなやつだし、あいつ。」

 自分でも誘った理由を分かってなさそうだしな、エリカのやつ。

「じゃあ、そろそろ行くか。ま、お互い気張りすぎんようにがんばるか。」

「ああ、俺は教室に行くことにする。」

 そして、達也と別れ、ある程度巡回していると一際目立つ人がいた。挨拶をしておいたほうがいいだろうと、後姿を見ながら近づいていく。というか前に実際に会っている『あの人』だから、知っているのだが。

「どうも、『十文字克人』殿。」

「ん?・・・ああ、あなたか、三島殿。いや、今は錬と呼んだほうがいいだろうな。」

「ええ、俺も今は十文字会頭と呼んでおきます。そちらの事情については父親から説明されていますので、きちんと理解していますから、『別の呼び名』は言いません。」

「ああ、そうしてくれると助かる。十文字家に関することだしな。」

 十文字会頭とは以前、『ある出来事』で親父と一緒に会っている。そのことは機密事項のため話せないが、『別の呼び名』に関することだといっておこう。

 その時に年齢も近いこともあり、親しくなったのだ。

「そういえば風紀委員になったそうだな。まぁ兼松氏の息子なら当然だが。」

「・・・え〜と、そのことで聞きたいんですが、父はそんなに有名なんですか?」

「うん?・・・そういえばまだ習っていなかったか。現代に生きる『世界最強の精霊使い』として、一年のうちに教わるはずだ。」

「さ、最強ですか・・・」

 マジか、親父よ・・・・いや、確かにすごいと思っていたが世界一とは・・・・

「まぁその称号はすぐに取って代わるかもしれんがな。」

「えっ?」

「錬が後を継ぐのだろう? 地神神社を。」

「え、ええ、そうですが・・・」

 何が言いたいんだ?

「どういうわけかは知らないが、地神神社の神主となる者は代々強い精霊使いになり、さらに前の代よりも強力になるそうで、兼松氏の父親の時代にはすでに『最強の精霊使いは地神神社の神主』と言われていたみたいだぞ?」

 ええ〜〜〜!! マジっすか!? ていうか俺ってどんな家に生まれたんだ!? ありえないだろ!!

「つまり、錬は兼松氏よりも優れた精霊使いとなるから、その称号も受け継ぐのだろう。」

「へ〜・・・そ、そうなんですか・・・・知らなかったですね・・・」

「そうなのか? あの方が話さないとは思えないが・・・」

 いや、聞いたことねえよ。何だよその話。

「まぁとにかく、風紀委員になるだろうとは思っていたし、お前に関しては何も心配はしていない。」

「まぁ、ありがとうございます。」

 信頼してくれているのが分かるので、素直にお礼しておく。この人がこういう発言をするのは珍しいし。

「それでは、巡回に戻ります。」

「ああ、こちらも羽目をはずし過ぎないように気をつけておくように、回っておく。」

 十文字会頭と別れ、また巡回に戻る。正直、巡回するよりも意識を拡張して学校全体を視たほうが早いのだが、それをするには一箇所に居続けなければならないので、サボっていると思われてしまう。

 さらに、そのときの情報処理も面倒なので、素直に巡回することにしている。

 しかし、達也のほうが気になったので、そちらを視てみると、すでに『桐原』先輩を伸した後なのか、剣術部との立ち回りをしていた。意外と時間が経っていたようだ。

 摩利さんに連絡しようか迷ったが、連絡したら面倒に巻き込まれると思いやめた。

 ちなみにここまでの巡回で魔法の使用による被害拡大を防ぐために、魔法が発動した『後に』阻止している。

 普通は出来ないだろうが、俺の精霊の眼を用いると、何の魔法を使用するか、どのタイミングで発動するかがわかるため、被害が出る前に発動した魔法に対する対抗魔法を使用し、風紀委員として捕らえていく。

 俺が風紀委員と名乗ると容姿に着いても噂が出ているのか、すぐに俺と分かり素直に謝ってくるので、こちらとしても面倒がなくて助かる。

 新入生や二科生というよりも、地神神社の息子という意識が多くを占めるのだろう。

 騒動に巻き込まれるということもなく、つつがなく仕事は終わった。

 これといって疲れたということもなく、これなら楽だな〜と思っていたのだが、

「錬。聞こえているか? お前のことだから俺に憑けていると思ったのだが。」

 突然十文字会頭から精霊を介して俺に連絡を取ってきたのだ。

 あまり意識していないのだが、俺の精霊が気を利かせているのか、俺の思考にあがっている人物には精霊をつけておくことがある。どういう基準で選んでいるのかは分からないが、たまにこのように意識がつながることがあり、少しびっくりすることがあるのだ。まぁ少しなのであまり気にしないが。

[ええ、たまたま憑いていたみたいですね。どうかしましたか?」

「えっ? 錬君?」

「ど、どこにいるんだ?」

「・・・・これは・・」

[・・あ〜、もしかして、十文字会頭以外にもいるんですか?」

「ああ、ここは部活連本部室で七草と渡辺とお前のクラスメイトの司波というものもいる。」

「どういうことだ、十文字。なぜ深島の声が聞こえる?」

「錬の精霊に五感共鳴をして声を届けているのですよ、渡辺委員長。」

「そんなことも出来るんだ、精霊魔法って。」

[ええまぁ。そんなことよりどうしたんですか? 俺を呼んだりして。]

「ああ、お前のことだ。現場を精霊を介して見ていたのではと思ってな。」

「なるほど。剣道部と剣術部の言い争いの事実関係の把握しているかということか?」

「ああ、どうだ? 見ていたか?」

[まぁ、視ていましたが・・・」

 この発言に達也は驚いている。おそらく視られていたとは思っていなかったのだろう。達也の眼には精霊は映らないしな。

「そうか、桐原が挑発したと剣道部はいい、剣術部の言い分では剣道部が先に手を出したといっていたのだが、実際はどうだったのだ?」

 さて、どうするか・・・余計なことは言わないほうがいいだろうな・・・・別に気にすることはないと思うが。

[どちらの言い分も正しいとはいえないですね。桐原先輩は過度な挑発には聞こえなかったですし、先に手を出したといいますが、女生徒と桐原先輩で最初にやり合いましたし、そこからは達也も見ていた筈ですから。]

「そうか・・・」

[俺の見解としてはどちらにも非はありどちらにも非はないといったところですかね。]

「こちらの考えも同じだ。風紀委員会としては、今回のことは懲罰委員会に持ち込むつもりはない。」

「感謝する。本来ならば停学処分も致し方ない。本人もよく理解しているだろうし、今回のことを教訓とするように言い聞かせておこう。」

「剣道部のほうはいいの?」

「喧嘩両成敗だ。結局は手を出しているのだし、文句をつけられる筋合いはない。」

[あの〜、もういいですか? 魔法を断っても。」

「ああ、すまんな。事実関係をはっきりさせたかったから。」

[いえ、それでは。]

 そして、精霊とのリンクを切り、帰り道を歩く。

 ちなみに、今までの会話の最中はずっと動いていた。つまり、並列思考により会話をしていたのだ。並列思考の分割数は数え切れないくらいあり、その一部で行使していたのである。この程度は当たり前のようにできるようになっていた。

 (普通の魔法師は並列思考が出来るだけで優秀であり、それを無数に出来る錬は異常であるため、当たり前の感覚が一般とは違う)

 さて、明日も今日みたいに適当にがんばるか〜

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