小説『続・黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第四五話


 実験という名のフリーダムの試運転が終了した翌日、対抗戦の決勝戦が行われることになった。

シャル「あれ? フリーダムじゃないの?」

葵「残念ながらな。まだ申請が通っていないようでな。だから今回は白騎士で行く」

 何でも一応国連常任理事国の過半数が認可しないといけないみたいだが米露仏はすでにOKを出して問題なく通った。ただ、イギリスと中国はやはり面白くないみたいで、代わりにデータをよこせとか言ってきた。だから、新庄君のデータをそのままそっくりやった。

 ん?大丈夫かって? 何が? あぁそれじゃあ結果データを与えて相手ぼろもうけでこっちはそんじゃんってか? 大丈夫大丈夫。あの後調べてみたが、いろいろとあの頃よりバージョンアップしてた。何でも担い手によって左右されるみたいだ。つまりデータでは第3世代ぐらいだけど実際は第5ぐらい? と言われてもおかしくないみたいだ。事実束もいろいろと参考にするべき部分を見つけていたみたいだ。

シャル「白騎士か。確か接近戦武器もあるけどメインは遠距離や中距離といった距離を取った戦法を得意とする――――だったよね?」

葵「あぁ。シャルのほうはどうなんだ? 接近戦のほうは?」

シャル「残念ながらといったところかな。シールドで防ぎつつ銃でバンッ。これがこっちの対接近戦用接近戦かな」

 ふむ。一夏あたりなら効果的だろうが、

葵「ラウラ相手ではきついか」

シャル「え? どうして?」

 ラウラにはプラズマ刃を搭載した接近戦用装備がある。それで盾を押させられつつ、残った片手で銃を押さえられあまつさえ、レールガンで近距離からドカン。ありえるな。というか彼女ならやってのける。

シャル「・・・・葵ってラウラの戦い方よく知ってるね」

葵「ん? あぁ。まぁ彼女をというかドイツの黒ウサギ隊を鍛えたのは織斑教諭と私だからな」

シャル「へぇ・・・・えぇ!?」

 その言葉はシャルには驚きの言葉だったみたいだ。

シャル「え? じゃ、じゃあほかにどこを指導したの!?」

葵「ドイツ以外はアメリカしかないな」

シャル「で、でもフランスは葵じゃなかったよね!?」

葵「別任務中だったからな。おっと、それより時間だな。行くぞ」

シャル「ちょっと! まだ話し終わってないよ!?」

葵「終わってからいくらでもできるだろ」

 アリーナに向かう。

 そしてゲートをくぐると、そこには

ラ「待ちかねたぞ嫁」

一「ここまで来たよお兄ちゃん! 絶対に勝つからね!」

 ウキウキ? それともわくわくか、まぁどっちにしろ小学生ぐらいの子供が待ちかねた遠足の日が来たかのようにうれしそうに言うラウラ。
一夏は何かようやくこの時が! という点ではラウラと同じだが、何かどこか違う。あえて言うなら、根っこ的なものだ。

ラ「それより嫁。あれじゃないのか?」

シャル「いろいろ手続きで今回話だって」

ラ「そうか・・・・」

 若干シュッとなっているラウラ。あ、やばいあれちょっとかわいいと思ってしまった。

葵「まぁやれるだけやってやるさ」

ラ「ほぉ。白騎士か。リベンジか?」

葵「あぁ。そのつもりだ。負けはしないがな」

 そして、その時が来た。


―――ビィーッ


そして開幕の合図が鳴り響く。


SIDEラウラ・一夏


―――試合開始数分前

一「で、どうやって攻めるの?」

 一夏の質問はもっともだ。たとえ過去、といっても数日前葵に勝てたといってもそれは数的有利があったからである。だが、現状は違う。シャルという厄介な敵がいるという点だ。

ラ「作戦的に言えば二対一で先にシャルをつぶすというのがいいんだが」

一「お兄ちゃんがさせてくれない」

ラ「そうだ。かといって一対一に持っていくと葵に持っていかれたほうが先にたたかれる」

一「零落白夜でも無理なの?」

ラ「やってみないとわからないが、それは対シャル戦に置いておけ」

 そう。実際零落白夜を葵に向けてはなったことがない。それにあの威力は対篠ノ之式ISには確実に有効だろう。では「秋山式は?」と聞かれたら正直に「わからない」というのが正解だ。なぜか。今現在秋山式を持っているのは一番隊体長の青騎士、二番隊体長の葵、そしてまどか、咲夜、そしてつい最近与えられた織斑千冬の計5名といっても実質は4名だけなのだから。

一「もし効かなかったら損というわけか。ならシャル君に対しては有効なわけだ」

ラ「あぁそうだな。だが、そう簡単にさせてはくれまい。悔しいがあの二人の相性は抜群だ。おそらく今回組まれたどのパートナーよりも名」

 実際葵・シャルのペアはダメージこそあれどイエローゾーンにすら入っていない。どれぐらいかというとかすり傷を負わせれば良い方というぐらいだ。

一「ともかく戦って様子見ってところかな?」

ラ「それでいいだろう。隙を見せればそこに一撃をだな。だが、隙にも注意しろよ。なにせ「お兄ちゃんだからわざとということがある。でしょ?」そうだ。嫁のおかげかこれも?」

一「まぁね。お兄ちゃんは実践だけでなく戦略も教えてくれるからね」

 確かにとラウラは腕を組み肯定した。ほぼ毎日と行なわれていた専用機持ちの訓練に参加したが時には教室で戦略を教えることもあり、これはラウラにとっても大変貴重な勉強となったのだ。

ラ「では行くか」

一「うん。絶対に勝とうね」

ラ「むろんだ」


SIDEOut


SIDE第三者


 始まりは意外だった。

葵「いきなり砲撃とは」

シャル「くっ、うまい具合に分裂させたね・・・・」

 先制攻撃は互いに同じことを考えていた。

 葵がジャベリンを出し二人を分裂させようと考えたように、ラウラたちもレールガンで分裂させようとしたのだ。

 その結果発射までタイムラグがある葵が遅れた。結果葵は急きょ攻撃を中断し相手の作戦に乗ることにしたのだ。

 一方のモニタールーム。

千「これは意外だな・・・・」

ナ「えぇ。いきなりの先制を教官がとられるなんて」

真「それにコンビネーションも悪くないですね」

 シャルの攻撃が深くなってきて間合いもシャル寄りになってきていた一夏をワイヤーを使いラウラ自身のもとへ下がらせ、AICを使いシャルの攻撃を防ぎ、レールガンで彼女との間合いを修正、ついでに葵が攻めてきてもけん制になる。そして遠心力を使い再び一夏の間合いへと修正する。

簪「・・・・うまい」

鈴「うん。悔しいけどあの二人が葵たちを苦戦させていることはだれが見ても確実ね」

セ「でも、不思議ですわね」

箒「何がだ?」

セ「なぜ反撃に打って出ないんですの葵さんは?」

 そう。葵の武器は何も遠距離に限ったことではない。

???「あらきまってるじゃない。相手を油断させこちらの好都合なタイミングに合わせるためよ」

真「なるほど! そのために。でも神無月君の武器って大体知られてますよね?」

千「ジャベリンという砲、アルヴォPD2というビームガン、シールドに、それに内蔵されているビームソード。それとは別にビームソード」

楯「今考えると今で結構な装備ね。それを使いこなしてるあたりさすがとしか言いようがないけど」

???「まぁあれ使うと広域殲滅型だからね〜」

 葵のもう一つの技。見てみたいと内心全員が思っただろうが、それ以上に気になったことが、

千「・・・・・山田君。私たちは今誰と話をしていたんだ?」

真「お、織斑先生。奇遇ですね。わたしも気になっていました」

ナ「・・・・・今振り返るのが怖いんだけど?」

鈴「なら一、二の三で振り向きますか?」

セ「OKですわ・・・・」

簪「・・・・了解」

箒「こ、来い・・・」

楯「じゃ、じゃあ行くわよ・・・」

 そして合図とともに後ろを振り返るとそこにいたのは、

ハ「あらあらどうしたのみなさん? まるでお化けを見たような」

千「こ、ここは関係者以外立ち入り禁止なんだが?」

ハ「あら、私は関係者なんだけど。そこにいるシャルル・デュノアの国家代表ですから」

ナ「・・・・は、ハミル・エルエフランス大統領!?」

 ハミル・エルエフランス大統領。またの名を生命の神蓮鏡である。突然のお偉いさんの登場にここにいる皆が驚いていた。だが神様が自分の目も前にいるとはだれも思わないだろう。

ハ「一応ここにいさせてもらうわね」

 そういうと彼女は近くにあったパイプいすを勝手にだし座る。

ハ(さて葵はどうこのピンチを乗り切るか。まぁ何もなくて「はい、負けました」なってことはないと思うけど)

 うっすとらと閉じた目を開けモニターをにらみつけるように見る。





 そして再びアリーナへ。

葵「さて、ちょっと苦戦どころかだいぶ苦戦してきたな」

 そうつぶやく葵にオープンチャンネルで悲鳴を上げながら文句を言ってくるシャル。

シャル『どうにかして挽回できないの!? というかなんでそんなに葵は余裕たっぷりなの!?』

葵「いやだってまだ本気というか、それほど本気を出していないからな」

シャル『出そうよ!?』

葵「地球壊していいなら出すよ?」

シャル『・・・・葵冗談でも怖いよ』

 冗談ではないんだがと思いながらもそれを口に出さない葵だ。まぁ行っても信用されないということがわかっているだからだ。

葵「シャル。私の後ろにいろよ。じゃないと巻き添えを食うぞ?」

シャル『う、うん』

 葵がそう言うと、シャルは急いで一夏との間合いを取り、葵の背中にぴったりとつく。

葵「そこまでしなくてもいいが」

シャル「しないといけないような気がする。というかしないと怖い」

葵「左様で」

 そういいながら葵はアルヴォを取り出し、銃に魔力(表ではぴーむエネルギーとしてとらえたられている)を込める。

ラ「ビームためているだと!?」

 その光景にラウラは驚いていたが次におこることは全く的外れだった。ラウラの考えは簡単に言うとチャージショット。つまり溜め込んだエネルギーをでかい砲撃として放つ。これがラウラの考えだった。一夏もこれには同じ考えをしていた。

 砲撃から逃げるとしたら距離を取る、砲撃を放った射線上から回避する、盾で防ぐの三つだ。

 最後の盾で防ぐは一夏の零落白夜同様ラウラのAICをもってしてもさてはて葵の砲撃を防げるかが問題だ。そもそも秋山式の砲撃を篠ノ之式で防げるのかという問題と、葵の力をラウラで防げるかという二つの問題が出るため却下だ。一つ目も距離を取ったところでこの狭いアリーナでどこまで取れるかが問題だ。となると残された、

ラ「射線上からの回避――――だな」

 その行動を選択し一夏に伝える。一夏もこれを同意し治具座国動き的を絞らせないようにした。

 だが、葵の行動は予想外にもほどがあった。

葵「シャワー・オブ・バレット!」

 たまったエネルギー溜をそのまま自分の頭上に向け放った。すると、エネルギー溜がある程度頭上に上がったところで突然破裂。そのままエネルギー弾となって雨のように頭上から無差別に降り注ぐ。

ラ「しまっ!?」

 ラウラにしろ一夏にしろ盾という装備を備えていない。つまりぎりぎりで回避しようにも直撃は免れない。結果としてエネルギーを持っていかれるだけ持っていかれた。

 先制攻撃によって有利に事を運んでいた一夏・ラウラペアだったが葵のたった一撃で
形成は不利だし、もしくは若干葵・シャルペアに持っていかれた。
観客としてはこれほど燃える戦いにかたずをのんでいるほどだろう。だが、それをぶち壊す来訪者が訪れた。




真「!? 頭上より高エネルギー反応!」

千「なに!?」

ナ「識別は?!」

真「これは・・・・ISではありません! 別の物体! 画像来ます!」

 そういって映し出された画像にそこにいた誰もが驚愕した。

セ「人間!?」

鈴「そんな馬鹿なことがあるわけないでしょ!」

簪「でも・・・これ人間・・・・」

 そう映し出された画像には魔号事なき人間が映し出されていた。

箒「でも人間にしてはあり得ないだろ・・・・」

楯「この速度IS並よ」

 速度はIS並。ならISを装備しているならおかしくないんじゃない? という疑問を持つ方もいるだろう。が、

千「さっきも言っただろ、エネルギー反応がISではないと判断している。つまりあれはISを装備していないナニかだ」

ハ(来たのね・・・・【不の者】が)

 そして、アリーナに貼られていたシールドを破り会場に乱入する。






???「ほぉ。大英雄(殺人鬼)がここにいるとはね」


SIDEOut

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