第十二話 最強のローレライ。その名は騎士王
カゲの後を追いかけたカイル達はじーさんに笛を聞かせようとしているカゲを見つけ出した。
「やべえ!止めねえと!!」
茂みの中から飛び出そうとするナツ達をカイルとゴールドマインが引き止めた。
「なにすんだよ!カイル!!」
「カイル!止めねばマスターの命が!!」
「お前らじーさん舐めてんだろ。あんな殺気と怖気モロだしの奴にじーさんが気づかねえわきゃねーだろ。これから面白くなんだから黙って見てろ」
震えるカゲにじーさんが口を開く。
「何も変わらんよ。人とは弱い生き物なんじゃ。じゃがそれは罪ではない。だから仲間がいる。ギルドがある。仲間がいれば人はいくらでも強くなれる……そんなものなどなくとも…な!」
崩れ落ちるカゲ。じーさんには全てお見通しだったのだ。
「「マスター!(ジッちゃん)」」
茂みに隠れていたエルザ達がマカロフに駆け寄った。
「な、なんじゃ!お前ら!こんなところにおったのか!!」
「流石です。マスター!!目頭が熱くなりました!!」
抱き寄せるエルザ。だが鎧にぶち当たりとってもいたそう。
「すげえな!ジッちゃん!」ペシペシ
「そう思うならペシペシせんでくれい…」
「さて、色々あったがこれでやっと一件落着」
カイルがそう言いかけた時、笛から煙が立ち上り、言葉を発した。
「どいつもこいつも情けねえ。仕方ない。俺が自ら貴様らの魂を食らってやろう」
煙から巨大な化け物が現れた。
「な、何あれーー!!」
「さしずめララバイの真の姿ってとこだろ」
「最悪の黒魔導士ゼレフが生み出した悪魔……まだ存在していたなんて」
「さて、どの魂から食らってやろうか?」
それを聞いたナツは驚愕し、
「なにーー!魂って食えるのか?うめえのか!!」
「ナツ、人間には無理だぞ」
カイルが冷静に突っ込むと再びララバイが動き出す。
「決めたぞ、貴様ら全員だ!!」
一斉に逃げ出すギルドマスター達。しかしエルザ達は立ち向かおうとしていたが、カイルが剣を一振りし地面を二つにわり、彼らを止めた。
「バカ、お前らは出るな。俺がやる」
「な!い、いくらカイルとは言えあれを相手に一人は無理だ!!」
「そうだ!みんなで力を合わせて!」
「待て待て、止めたのはちゃんと理由がある。お前らは駅の戦いで消耗してる。あいつ相手はキツイだろ?エルザにいたっては論外だ。それ以上はお前の命に関わる。それに…」
「「「それに?」」」
「心外だなエルザ。この俺があんな雑魚に負けると思うか?」
自身の膨大な魔力をエルザ達に向ける。
「ナツ、よく見ておけ。ああいうデカブツとの戦い方って奴をレクチャーしてやる」
「あい」
カイルの魔力にびびったナツはハッピーになっていた。
背中から長剣を抜き放ち、ララバイと対峙する。
「話し合いは終わったか?小僧」
「ああ、俺が相手だ。木偶の坊」
「命知らずもここまでくれば笑えるな。いいだろう、まずは貴様から食らってやる」
「最近リートばっかりだからな。来たれ氷の精霊王。我が契約に従いてその姿を現せ。フリージア」
その瞬間カイルの隣に薄青のドレスに薄青髪の美女が現れた。豊満な胸がドレスの中で窮屈そうにしている。
「だ、誰?」
ルーシィがつぶやいたが、誰も返事をしなかった。皆カイルの戦いを見逃さんと見入っている。
「久しぶりに私を呼んだな、奏者。しかもサモナル(召喚)で。そこまで強敵なのか?」
「ああ、ゼレフ書の悪魔だ。それより抱きつくのはやめてくれないか?お前冷たいんだから」
先ほどからカイルの首に手を回し、後ろから抱きついている。豊満な胸がカイルの背中でうにうにと形を変えて押し付けられている。
「うーん。あったかいな、奏者は。この感覚、久しぶりだ」
「ほら、レリーズ(展開)いくぞ。用意しろ」
はーいと答えるとカイルの手を握った。
「汝、魔を滅する氷結の精霊王よ、ローレライの名の下に我が剣となりて具現せよ。
ラブィアス!!(神をも凍てつかせる氷結の剛槍)」
カイルの周りを吹雪が吹き荒れ、手の中に美しい青い槍が現れた。握りしめ構える。
「いいか、ナツ。この手の相手にはスピードやタクティクスより優先されるのはパワー。ようするに火力だ」
ララバイが口から砲弾のようなものを放つ。しかしカイルがラヴィアスをひとなぎすると全てが凍りついた。
ララバイのところまで飛び上がり、槍を振るう。するとララバイの全身が次々に凍りついていく。
「絶対氷結……終わる世界…」
そしてララバイ全身を氷に覆われた。カイルがパチンと指を鳴らすと、跡形もなく砕け散る。
「なんだ、この程度か…少しは期待したんだが」
「な、何あれ……」
愕然とするルーシィにエルザがつぶやく。
「そのものは王である…全てを支配し、操る存在であるから…
そのものは騎士である…弱きものを守り、民達の剣となるから…
故に………黒の騎士王(パラディン)なり」
「え、ええええええええ!!!パラディンってカイルの事だったの!!!」
「なんだ、知らなかったのか?」
「し、知らないわよ!噂ばっかりで写真とか一つもないし!!私はパラディンに憧れてたのに「そうだったのか?」
戦いを終わらせたカイルがルーシィに問いかける。ルーシィは顔を赤くして
「う、うん…私がフェアリーテイルに入った理由の一つだし…」
「へーそうなのか、嬉しいよ。ありがと」
「どうじゃ!!凄いじゃろーー!!」
マカロフがギルドマスター達に自慢している。
「いやー今回はフェアリーテイルにカリが出来ちまったな。」
「なんのなんの!ふひゃひゃひゃ……あ」
何かに気づいたマカロフはそーっと逃げようとする。
「じゃああれが精霊王なの?」
「ああ、氷の精霊王フリージア。サモナル(召喚)だとゴースト(憑依)タイプじゃ半分しか出せない精霊王の力をマックスまで使えるようになる」
「精霊王ってみんな女、しかもあんな美女ばっかなの?」
「ああ、まあローレライによって性別は変わるらしい。100年に一人現れるローレライは例外なく精霊王達に魅入られてんだよ。俺が男だから精霊王達も女になるそうだ」
「その中でも精霊王を武器にできる歴代ローレライはお前を含め四人だけなんだろう?」
エルザが確かめるように問いかける。
「ああ、精霊魔装はとんでもない魔力を使うからな。並のローレライじゃでき……ない」
「?どうしたんだ、カイル……あ」
ふと振り返ってみると定例会の会場が全て凍りついていた。
「……やりすぎた……」
「あ!!定例会の会場がーーー!!」
「はははは!見事に凍りついてんなーー!!」
「捕まえろーー!!」
「よし、任せろ!!」
なぜか拳を鳴らすナツ。
「お前は捕まる側だ!!」
ナツを放置して逃げるカイル達。
「済まん、じーさん」
「いーのいーの、どうせもう呼ばれないでしょ」
「げ、元気をだせ、カイル!」
「そ、そうよ!カイルは私たちを守ってくれたんだから!」
「ははは、ありがと」
ララバイ篇終了ーー。次回は裁判。今回の代償としてカイルに悲劇の依頼が評議会から出される。果たしてカイルの運命は!!
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