第二十二話 偉大な魔導士
リオンを追いかけて遺跡の奥へと入ったグレイとカイル。しかし途中でカイルは進路を変えた。
「なんだよカイル。一緒にリオンを止めてくれるんじゃなかったのか?」
「バカヤロウ。身内の問題だろ?てめえで解決しやがれ。カイルさんだってなんでもしてくれるわけじゃないんだよ?それに負けたままじゃ名折れだろうが。言っとくけどてめえじゃねえぞ。」
「わかってる。」
「「フェアリーテイルのだ」」
グレイと別れ魔力の源へと走って行く。途中傾いた遺跡が元に戻った。そこに、ナツと対峙している仮面の男がいた。
「げっ!!カイル!?てことは俺達を連れ戻しに!?」
「それは後ね。ナツ、こいつ譲れ」
「わかった。俺はグレイのとこにいってくる」
それを聞いたカイルは驚き、目を見開いた。
「ダダこねるかと思ったが……意外と素直だな」
「エリゴールの時譲ってくれたろ?そんかわり絶対勝てよ!!」
目線だけを後ろに向けたカイルはふっと笑い
「フン、誰に向かって言っている?」
ナツもニヤっと笑うと上へとかけて行った。
「まさか黒の騎士王が来ていたとは……想定外でしたね」
「遺跡を戻したのはてめえか。それとそのわざとらしいおっさん喋りやめろウルティア。油断誘おうってんなら相手が悪りいぞ」
仮面の男はふっと笑い、正体を明かした。長い黒髪に水晶を浮かばせた美女が現れる。
……ウルティアだ。
「流石…と言ったところかしら?カイル。初見で見抜かれるとは思わなかったわ」
「お前とは何度かやりあってんだ。わかんねえわけねえだろう。あとカイルって呼ぶな」
苦笑を浮かべるウルティア。両手を横に掲げる。
「連れないわね。まあそこが魅力でもあるけど」
「ムーンドリップを教えたのはてめえだな。何で教えた?リオン程度じゃデリオラは倒せない事ぐらいわかんねえてめえじゃねえだろ?」
「もちろん。でも楽しそうじゃない?無敵の化け物が復活したら。ムーンドリップは再開されたわ。時期にデリオラは復活する。」
「したところでこの俺がいるんだぞ。すぐに叩き潰してやるよ。その前にてめえをふんじばって牢にぶち込んでやるけどよ」
ウルにあやかって氷の精霊王フリージアを呼び出す。まずはゴーストで様子見だ。
「貴方とは戦いたくないんだけど……仕方ないか。見せてあげるわ、ロストマジック。時のアークを」
水晶が宙に浮き、四方八方からカイルに襲いかかる。が、全ての水晶を凍らせて、砕いた。
「やっぱ一筋縄じゃいかないわね。ならこれでどう?」
指を鳴らすと、天井が崩れ落ちてくる。また全て凍らせ、その氷塊をウルティアに飛ばした。が溶けて消えてしまった。
「物体の時を操る魔法、時のアーク。相変わらず厄介だが脅威は感じねえな」
跳躍し、瞬速でウルティアに迫る。ウルティアは水晶を出して応戦しようとするがあっさりかわされ、間合いに入られ、蹴りをかまされた。壁まで吹き飛ばされる。
「ぐはっ!!!」
「生きている物の時は操れない。それじゃあ俺には勝てねえよ。死なない程度に氷漬けにして評議会に引き渡してやる」
手を翳し、魔力を集中させた。その瞬間大きな破壊音と怒声が遺跡に響き渡った。
「復活したか……クソ、グレイ達はなにをやってたんだ」
「ごほっ、私の役目は終わったみたいね。それじゃあさよならカイル。また会える日を楽しみにしてるわ」
地面が脆くなり、そのまま落ちて何処かへと消えたウルティア。
「逃がしたか……まあしょうがねえ。それより今はこっちだ」
飛び上がりデリオラのもとまで駆ける。そこには怒声をあげつづけているデリオラの姿があった。
「ぐ、グレイ。お前じゃ無理だ……こいつは俺が…」
「お前の方がもっと無理だわドアホ。さあどうする?グレイ、ナツ」
アイスドシェルを使おうとしたグレイをナツが止める。激昂するグレイ。
「死んで欲しくねえからあの時止めたのに……俺の声は届かなかったのか…」
我に帰ったグレイ。ナツは拳を握りしめ、戦闘体制を整えた。
「よく言った、ナツ。後は任せろ」
ナツを守るようにカイルが立ちはだかる。
「カイル!どけ!おれが戦う!!」
「まあそう言わずに俺にやらせろよ。新しい精霊王の力。試し撃ちするにはちょうどいい相手で」
そこまで言うと、デリオラは勝手に崩れ落ちていった。皆があぜんとする中、カイルだけは理解していた。
「そうか……デリオラはもう死んでたんだ…ウルの氷の中で少しづつ命を奪ってたんだ……恐れ入ったな。女の魔導士に敬意を抱いたのは初めてだ。誇れ、グレイ。お前の師匠は偉大な魔導士だ」
グレイは涙をこぼしていた。不意に彼の耳にだけ、ウルの言葉がささやきかける。
お前の闇は私が封じよう
「かなわんな……俺にウルは越えられん」
「ありがとうございます。……先生」
さて、デリオラは片付いた。後はこの不可解な島を救うとするか…まあ八割がたはわかってるんだけど