小説『短編恐怖物語集』
作者:Maifa(アクアマリン)

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今日は休日だ。
久しぶりに家族で遠出していた俺は、帰りの車で眠りについてしまった。

 キキーーッ

急なブレーキで体が揺れ、俺は一気に目が覚めた。

龍一「ん・・・何なんだよ・・・」

目を擦りながら母さんに尋ねる。

早和子「黒猫が急に飛び出して来たのよ。
    急いでブレーキかけたから引きはしなかったけど・・・。」

龍二「黒猫って・・・なんか不吉。」

勝広「そんな事言いなさんな。
   ・・・・あ、こっちの道が近道なんじゃないか?」

父さんはそう言って明らかに山の入り口である細い道を指差した。

龍一「え、コッチ?
   どっちかて言うと遠回りだと思うけど・・・。」

勝広「大丈夫だと思うぞ。カーナビでもこっちの方が近いし。」

早和子「じゃあそっちに行きましょう。」

龍二「まぁいいじゃん兄貴。」

龍二が俺の方に手を置いて言う。

龍一「・・・・・」

正直、俺は遠回りでもよかった。
だって・・・なんか、ずごく嫌な予感がするから・・・
さっきの黒猫のせいか、俺は不安でいっぱいだった。





  (この先、右折です。)

俺たちはカーナビの言うとおりに道を行った。
あれから少し考えて、カーナビがあるからいいか。という軽い気持ちで受け入れた。

 でも・・・あの時、俺が意地でも止めていたら、あんな怖い体験をしずに済んだのかな・・・?


 ガタッ  ドシャッ

早和子「・・・・ねぇ、何かおかしくない?」

龍二「あ、あぁ・・・。
   カーナビじゃあ、こんなに長くないよな・・・?
   もう30分以上も走ってるぞ・・・。」

さすがの母さんや龍二も気づいたのか、不安な表情を浮かべる。

勝広「引き返すか・・・。」

父さんの言葉で、車は一時停止し、向きを変えようとした。
だが、その時・・・

  (残り1キロで○○区に到着です。
   200m先の角を左折です。
)

そのカーナビの声で、母さんたちは喜びの声を上げた。

早和子「よかった!もう着くのね!?」

龍二「ハァ、どうなるかと思った・・・。」

勝広「じゃあ進むとするか!」

龍一「・・・・・」

俺は頭を抱えるようにして足元を見た。
さっきから頭痛がハンパねぇ・・・

 ガタッ ガタッ

どんどん車が進んでいく。
そしてカーナビが言った200m先の角まで来た時、俺の頭は鈍器で殴られたような痛みを感じた。

龍一「っ!!と、止めろっ!!!早く車を止めろっ!!!」

勝広「はっ!何を言って・・・」

龍一「いいから止めろっ!!!!」

俺の怒鳴り声で父さんはブレーキを踏んだ。

  キキーーーッ!!!
    
最初よりも勢いのある揺れ。
車内には龍二や母さんの声が広がった。

早和子「っもう!何なのよ一体・・・」

龍一「ゴメン・・・でも、無意識に・・・」

そう。本当に無意識だった。

龍二「・・・おい、兄貴・・・母さん・・・
   外出て、左見てみろよ・・・」

微かに龍二の声が震えていた。
父さんと龍二は外に出て目を見開いたままだった。
俺と母さんは二人のように車を降り、左側を見た。

龍一・早和子「「!!!??」」

龍一「・・・ウソだろ・・。」

目の前には、崖。
ゆっくりと下を見てみれば、100mはあるであろう。木々が遠くに見えた。

もしこのまま左折していれば、俺たちは今頃死んでいただろう。
そう思うと、体が震えた。
それは全員そうだった。

俺たちが呆然としている時、車の中でカーナビの音が響いた。

   













                   (コノ先、左折デス。)                   













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