小説『短編恐怖物語集』
作者:Maifa(アクアマリン)

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今日、俺は珍しく風邪を引いてしまって寝込んでいた。


龍二「コホッ・・・・めんどくさ・・・」


俺は部屋の時計を見ながら呟いた。
母さんに、午後から病院に行って診てもらえと言われていたのだ。


龍二「仕方ない・・・・・行くか。」


マスクを着けてジャンパーを羽織り、俺は家に鍵を掛けて病院に向かった。

今日母さんは、ペットショップの仕事が2時で終わりと言っていたから俺が帰る頃には帰ってるだろう。
・・・・そう思っていたんだ・・・・・。



―――――――

――――

――


  ガチャッ

龍二「ただいまー・・・コホッコホッ・・・」

手に薬の入った小さな紙袋を持って帰宅した。
薬をまだ飲んだわけじゃないから、咳は治まらない。
おまけに帰る時に雨が降っていた。
傘を持って出ていないから思いっきり濡れた。

・・・・・・絶対に悪化するな。

俺はとりあえず濡れた頭や服を拭こうとタオルを探した。
だが、何処にもなかったので母さんに聞こうとした。


  この時俺は、母さんが帰ってきていると思い込んでいた。


龍二「ゴホッ・・・・母さーん・・・母さーん!」

おかしいな・・・・いつもならすぐ出てくるのに・・・・

いくら呼んでも出てこないので、仕方なく自分の部屋にあるタオルを使おうと2階に足を進めようとした。
だが、一応もう一回呼んでおこうと思って、階段の傍で声を出した。

龍二「母さーん!」


返事は無いだろうと思っていたので、期待はしていなかった。
だが、俺の予想は違っていた。







 














                      『はぁい』                      
















その声が、異常に廊下に響いた。


龍二「え・・・・2階から・・・・?」

なんだ、居ないと思ったら2階に居たのか。
どうりで返事がないわけだ。

そう解釈した俺は、階段を駆け上がろうとした。

  ガチャッ

龍二「え・・・・・」

俺はドアに居た人物に驚きを隠せなかった。

 「?どうしたの龍二、そんな所で固まって。」

龍二「な、何で・・・・・









                   母さんが・・・・・・?」




早和子「何よ。いちゃ悪い?
    それよりびしょびしょじゃないっ!早く着替えなさいっ!」

龍二「あ、あぁ・・・・!!!」

俺の近くに来るために、母さんがドアを閉めた時、見てしまった・・・・。






          ドアの隙間からこちらを笑いながら覗いている、青白い顔をした女性を・・・―――。   



その後、俺の風邪は薬を飲んだが悪化し、高熱も出た。

眠りにつく時、考えた。


一体、あの女性は何だったのか・・・・

2階から聞こえた“はぁい”と言う声は、誰のものだったのか・・・・

答えが分からぬまま、俺は深い眠りに落ちたのだった。





―――――瞼を閉じる時、視界の隅に、黒い人影が映ったような気がした・・・。

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