小説『短編恐怖物語集』
作者:Maifa(アクアマリン)

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ある日の夜


 ザーーーーッ

  ガチャン!

龍二「ふー・・・なんで雨なんだよ・・・」


小さく文句を言いながら家の廊下を歩く。


龍二「母さん、頼まれた物買ってきたよ。」


濡れた頭をタオルで拭きながらさっきコンビニで買ってきた弁当を渡した。
この弁当は、今日学年の修学旅行から帰ってくる兄の龍一の物だ。
母さんは洗い物とかいろいろあったから、母さんの代わりに俺が買ってくると申し出たのだ。
それに俺も欲しい物あったし・・・

早和子「ごめんね龍二。
    雨すごかったでしょ?」

龍二「まぁ・・・でも仕方ないよ。
   晩御飯の後で材料もなかったんだろ?
   俺も買う物あったからちょうどよかったよ。」

早和子「そう?
    ありがとうね。あっこのままじゃ風邪ひいちゃう。早くシャワー浴びてらっしゃい。」

龍二「あぁ。」



〜〜〜風呂〜〜〜


ジャーーーッ


龍二「・・・・・」


目の前の鏡を見ながら頭をお湯で濡らす。

俺の家の風呂の鏡には、湯気で鏡が曇らないように特殊のシートを張り付けてある。
だからシャワーをしていようが自分の顔や背後が分かる。


・・・・ょ・・・・

龍二「ん?」


今、何か聞こえたような・・・・気のせいか?


気のせいだと勝手に思い、再びシャワーを再開した。


・・・・・ぇ・・・・ょ・・・


龍二「・・・・やっぱり聞こえる。」


  キュッ

一度シャワーを止め、目を閉じ、耳を澄ませた。


・・・・・だ・・・て・・・・して・・・・ぉ・・・


龍二「・・・っ」


何故か行き成り「俺」の中に「恐怖」が湧きあがって来てもっときつく目を閉じた。


・・・・出して・・・・出してよぉ・・・


龍二「・・・・?」


何故か声がすぐ近くから聞こえる。
だけど近くに誰もいない。気配すらない。

俺はゆっくり瞑っていた目を開けた。


龍二「・・・ッ!!??」


声が出なかった。


目の前にある鏡には、自分の顔が映っていた。



 
 










                異常なほど目を見開いて気味悪く口を曲げている【俺】が――――               




これは、俺の顔じゃない。
鏡に映る俺じゃない俺を見た瞬間、本能的に悟った。



ココは危険だ・・・・。


俺は声にならない悲鳴を上げながら風呂を出た。






もしかしたら、鏡に映っていた俺は、鏡に引き込まれてしまった霊の現れなのかも。
鏡から出たくて、鏡に映っていた俺を使って外に出ようとしたんだ。

あのまま風呂に居たら、俺が鏡の世界に取り込まれてしまったかも。
そう考えると、本能とは大したもんだ。



  
鏡には、霊の想いも映ってしまうんですよ・・・・?

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