小説『短編恐怖物語集』
作者:Maifa(アクアマリン)

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龍一「ゲッ雨降ってるよ・・・最悪だ・・・。」


今日は天気予報晴れだって言ってたのになぁ・・・
それに傘持ってきてねぇし。


崇「あれ?龍一傘ねぇの?」


龍一「あぁ。
   お前はどうして持ってんだよ・・・。」


崇「貸してもらったんだよ。
  隣のクラスの知り合いが折りたたみ傘持っててさ。
  ・・・そう言えば・・・」


崇は何か思い出したように言った。


崇「ホラ、職員室横の倉庫の近くに教員用の傘がたくさんあるだろ?
  その中に、1本だけ誰も使ってないビニール傘があったから貸してもらえよ。
  先生に頼めばOK貰えると思うぜ。」


あぁ・・・あの妙に古びた白のビニール傘か・・・。
あの傘って、普段は置き傘になってるらしいけど、誰かが使っているのは見た事がない。


龍一「そうだな、じゃあ許可とってくるよ。」







  ガラガラッ


龍一「先生、傘忘れてしまったので・・・倉庫横にあるビニール傘貸してもらってもいいですか?」


教員『えっ・・・?』


俺が言った瞬間、職員室に居た先生たち全員が顔を曇らせた。
そんな様子を見て俺が「?」を頭に浮かべていると、最近来た新人の先生がこう言った。


「いいわよ。
 じゃあ明日また持ってきてね。」


教員『!?』


新人教師の発言にさっき以上に驚いた先生達。
俺はちょっと不信感を抱きながらも「分かりました。」と言って、異様な雰囲気の職員室を抜け出した。







ビニール傘を広げると、所々小さな穴が開いていた。

まぁ、無いよりはマシだろう。
しかし・・・・


龍一「・・・・・・なんだ・・・この痕・・・?」


傘のビニールの一部には何かで引っ掻いたような跡。
それに加えて薄く赤いシミがある。

はっきり言って不気味だが、この土砂降りの中を傘なしで帰るわけにもいかず、仕方なくその傘を使って帰った。






 ザァァァァァーーーー


時間が経つたびに強くなっていく雨。


龍一「・・・・・・・」


背中に、突き刺さるような視線を感じていた。
それは雨のようにだんだんと強くなっていく。


 フッ


耐えられなくなり後ろを一気に振り返った。
だが後ろには誰も居ない。
と言うより、俺しかいないんだ。


龍一「何なんだよ・・・」


妙に怖くなってきて、俺は少し歩くスピードを速くした。
だけど相変わらず付きまとってくる[視線]。

俺はちょうど街灯のある所で止まって再び後ろを見た。
しかしやっぱり人は居ない。


龍一「一体何なんだ・・・っ!!?」


ふと視界に入った地面。
街頭で照らされた俺の影が映っている。
映っている影は俺、傘、鞄・・・・・・・




           
              傘の上に乗っかっている、何か大きな物体。



恐る恐るギチギチと鳴る首を回し自分を覆っている傘を見た。


龍一「ヒィッ・・・!?!?」



透明なビニール傘の上には・・・













           

      長い髪を垂らし、顔を血で真っ赤に染めてニタァと笑みを浮かべて爪を立てている女が居た。              



龍一「ウワァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」


俺は傘を放り投げ雨に濡れる事に構わず家に向かって一直線に走った。


「ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」



女の無機質な笑い声を背中に浴びながら。

その翌日、先生達に事情を話したら教えてくれた。
あの傘は、数年前に雨の日に交通事故で亡くなった女子生徒が使っていた傘だったらしい。
昨日俺に許可を出した先生も、その話を知らなかったらしい。



あの傘は、その女子生徒の怨念が籠ったモノだったのだろう。





倉庫の横を通りかかった時に、俺は見た。




昨日道端に置いてきたはずのビニール傘が、真っ赤に塗れて倉庫横に置かれているのを・・・・・。

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