第一章 金瘡小草 --キランソウ--
5月24日 金曜日
目の前に見えるのは白いチョークで書き綴られた黒板と、白髪混じりの教師が教科書を見ながら説明してい
るが、はっきりしない意識と少しぼやけた視界からして、さっきまで眠っていた事を思い出す。その証拠に枕
代わりにしていた教科書にヨダレが少しだけ付着していた。
携帯電話を胸ポケットから取り出して確認すると15時をまわろうとしていて、もうじき授業が終わろう
としているが、一番左後ろの席から周囲を見渡すと半数近くが教科書を枕代わりにして睡眠学習にしてたり、
または携帯電話で何かをしていたりで等で全くやる気の無い授業風景だ。かといって教師もそれを咎める事も
なく、そもそもそれは今になって始まったものでもなくこんな感じで2年に進級出来たのだから、なんて緩い学
校生活なのだろうと今更ながら思う。
春の暖かさから夏の暑さに少しずつ変わろうとしている5月下旬の昼下がりは眠気を助長するのは無理もなか
った。