小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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やってきた授業参観の日。

その日の学校は我が子の晴れ姿を一目見ようと期待する親たちで溢れかえっていた。

そんな中でカリフと小猫の授業は体育のプール授業だった。

イッセーたちは英語で教室にいるが、カリフたちはプールの方にいる。

「なぜこんなにも集まるのだ? ただ淡々と授業をこなすだけなのに」

ストレッチしながらプールサイドを埋め尽くす親たちに零すと、近くの小猫が答える。

「自分の子供たちを愛しているから来るんだと思う……おじさまもおばさまもそう言ってた。血が繋がっているでもない私や朱乃さんにも……」
「あの能天気二人が血とかそんなの気にするタマじゃねえことは既に承知済みだろ? まあよかったな、と言っておこう」
「……その中には君も含まれているんだよ?」
「そう言うのはあまり分からん」

突っ込まれながらビデオカメラを持って嬉しそうにしている二人を見つけてカリフも溜息を吐く。

ダルそうにしていても授業は始まる。体育の教師が現れると、プールサイドで話こんでいた生徒たちが一斉に集まってきた。

「よーし! 今日は授業参観なので、ありのままの自分を見せる意味合いで50メートルクロールのタイムを測ろうと思う!」
「せんせー、それが何でありのままの自分なんですかー?」
「他人と競う時の闘争本能こそが普段から抑えられた自分なのだ」
「僕たちはサバンナの動物じゃありませーん」
「人は皆、社会という名のジャングルで命懸けで生きる野獣さ」
「先生はありのままを出し過ぎだと思いまーす」

本当にありのままの姿を見せる面子に保護者たちの笑い声が聞こえる。

そこで先生はジャージを脱ぎ捨てて皆に宣言する。

「今日は軽く自由に泳ごう……なんて生ぬるいことは無しにしてタイムアタックだぁ!」
「何言ってんだこの人……」

一人の生徒の突っ込みも突っ切るほどハイテンションな先生は構わず続ける。

「実はな、先生の知り合いには日本水泳連盟のお偉いさんがいてな、言われたんだよ。『高校の教諭はあまりやりがいがないだろう?』と……」

急に語り出した先生に疑問を抱きまくる生徒たちと保護者の皆さん。

それにも関わらずに先生は苦悶の表情を浮かべる。

「確かに見劣りはするかもしれないが、私はな……この教師の道を望んで歩んだんだよ」
「とりあえず授業しませんかー?」
「そこで先生はこの人たちを連れてきた!」
「「よろしく」」
「ぶほっ!」

そう言うや否や、颯爽と現れたこれまたマッチョな四人組がマントを羽織って現れた。

急にざわつくギャラリー

「こちらにお越しいただいたのは将来有望の水泳選手の卵となる方々だ」
「そんな人集めて何する気ですか!?」
「レースだ。この中の誰でもいいから一人に勝って高校生の底力を見せて欲しい」
「全く意味が分からんぞ……?」
「要は馬鹿にされた先生の汚名を晴らしてほしいのだ」
「お前に教師の資格はねええええぇ!」

あまりに自分をさらけ出す教師に皆はまさかの展開に困惑する。

「さあ、誰か行く奴はいないのか?」
「先生は行かないんですか?」
「私は泳げん。ついでに言えば先生は数学の教師になりたかったんだ」
「聞きたくなかったです……そんな逸話……」

なんだか妙な展開になった授業に保護者も生徒も困惑する。

そりゃだって急に日本屈指の選手と水泳しなければならないのか……

しかも負けて恥かくことくらい誰にでも分かる。

こんな勝負を受ける物好きがいるだろうか……

「面白そうだ。出よう」
(((物好きいたああぁぁぁぁぁぁ!)))

クラスで一番どんな意味でも浮いているカリフの挙手にクラス全員が驚愕したが、逆に期待もしていた。

彼等クラスメートはカリフは運動神経はいいと噂で聞いてはいるが、実際にはその光景を見たことが無い。

これはこれで見物だと思ったのは生徒だけでなく先生もだった。

「さあさあ! ここで出るは『駒王学園の番長』こと鬼畜カリフ! 謎が多い転校生だが期待性は充分! さあ、まずは千円から始めるぞ!」
「鬼畜くんに千五百!」
「日ごろから羨ましいことしやがって! 水泳選手に二千!」

何故か競泳が始まってしまったプールで現金が行き交う。

そんなカオスとなった状況をカリフは大いに楽しんでいた。

「はっはっは! ここまで大事になったからには仕方ない! 精々儲けさせてもらおう!」
「……手加減、しないよね?」
「手を抜く? 有り得んな! そのまま捻ってやる」

そう笑うカリフと溜息を吐く小猫に二人の人影が近付く。

「ほう、私たち日本ランカーを相手に捻る……とな?」

カリフの前に四人のランカーが腕を組んで現れた。

「私は東島孝介」
「フィッシュ竹中」
「ふん、数は揃えたようだが、果たして上手くいくかな?」

睨み合う高校生と日本選手は飛びこみ台に向かう中、カリフは小猫に向き直った。

「設けた金で新しくできたスイーツカフェに行くぞ。今日は面白い日だ大いに笑ってやる!」
「……ガンバ」

あっさりとスイーツに釣られた小猫はどこからか出したのか、両手に小さな旗を持って応援する。

「これでも日本を背負う身だ。遠慮無くいかせてもらう」
「殊勝な心構えだ。だが、これ以上の言葉は必要ない。そっちの頭にヒレが付いている訳の分からない人類を見習ったらどうだ?」
「彼は三十文字以上話すと噛んで会話ができなくなる」
「ただのバカかよ……」

軽く話しながら台に上がり、お互いに集中を高めている中、生徒たちの声は聞こえてこない。

「位置について……ヨーイ……」

聞こえるのは心地よい緊張でリズムを刻む自分の胸の鼓動と……

「ドン!」

勝負開始のホイッスルの音だけだった。



この日の出来事が日本の水泳の未来を大きく変えるだろうとはだれも予想できなかった……









「と、言う訳で私たちのクラスは競泳でした」
「こ、小猫ちゃんの所も? 俺たちは英語の授業なのに粘土捏ねさせられて、気付いたらオークションになってた。なんなのこの学校?」
「気にしたら負けです。イッセー先輩」
「それにしてもこの私、よくできているわね」
「はい、部長のことを考えてたら自然と……ただそれが原因でオークションになったわけですが……」
「こっちはカリフくんが潜水だけで五十、百メートルを潜水で圧勝してました。ほら」

小猫はカリフの勝った戦利品の十万円を部員全員に見せると、全員から嘆息の声が上がる。

「流石は私の夫。世界に通用するのは戦いだけでは無い」
「夫だなんて本妻の私をさし置くのは遺憾ですが、カリフくんが自慢だというのは同意ですわ」

ゼノヴィアと朱乃はどこか嬉しそうにしている。

現在、体育の教師と今後の話し合いをしている合間に部員全員は昼休みを堪能していた。

「今度、稼いだお金でクラス単位で焼き肉に行くことになりました。カリフくんプロデュースで」
「あら、楽しそうじゃない。行って来なさいな」
「ありがとうございます」

そんな話をしていると、外野が騒がしくなっているのに気付く。全員の関心がそっちに向く。

「何かあったのかしら?」
「確か、魔法少女の撮影会があるとか何とかで……」

木場の答えにイッセーたちは首を傾げ、気になって見に行くことにしたのだった。




先程の体育教師から今後とも御贔屓にと、互いに得をする取引を済ませたカリフは悠々と昼休みの学校を闊歩する。

弁当は朱乃に預けていたのでそれを取りに行ったのだが、朱乃はクラスにいなかった。

「まあ、大体行くとこなんて決まって……え?」

歩いていたカリフはお目当ての朱乃を廊下で見つけた。他の部員も全員で固まっている。

意外な場所で見つけたことはもちろん、何だかカメラのシャッター音で賑わしかった場所。気になってカリフはイッセーに近付く。

「おい、なんだこの取り巻きは?」
「いや、それが……魔王さまが……」
「サーゼクスか? 何やら騒がしいようだが……」

そう言ってカリフがその場所をチラっと一目見た時、そこで一人の少女と目が合った。

「あ☆」
「……はい?」

少女はカリフと目が合って嬉しそうに笑い、カリフは素っ頓狂な声と共に目を丸くする。

「カリフ、この方は……」

そこへ、リアスが紹介しようとした時、カリフの表情が一気に歪んだ。

「セ、セ、セラフォルー! お前、なんでこんな所に……!」
「愛に不可能は無いの☆ 今日こそ熱いヴェーゼを受け取ってー!」

急にカリフへ飛びかかってくる魔法少女にカリフの行動は神速で動いていた。

向かってくるセラフォルーの首の襟を掴んで停止させた。

ぶら下がるセラフォルーはプリプリと頬を膨らませてカリフを怒る。

「もー! いっつもいっつも意地張ってー!」
「こういうのはオレが奪うならまだいいが、奪われるのは俺の性に合わんからな」
「積極的なのが好みって言ったー!」
「それとこれとは話は別だ」

なんだか親しげに話す二人にイッセーたちは疑問符を浮かべる。

「あの、カリフはレヴィアタンさまと知り合いなんですか?」
「そう……みたいね。これは私も初めて知ったわ」

降ろしたカリフが抱きつこうとするセラフォルーを抑える姿に誰もが疑問に思うが、ソーナとその場にいたサーゼクスとグレモリー卿……リアスの父親の様子が違った。

「ソーナ、何か知ってるのね?」
「会長?」

リアスと匙の問いに同意するように全員がソーナに視線を向ける。

ここでソーナはいつもの厳格さもどこか影に潜めて疲れた感じで眼鏡をかけ直す。

「……他言無用でお願いします」
「構わないけど……」

全員が頷くのを確認してソーナは意を決した。

「……お姉さまが今でも婚姻を拒否しているのは知ってますね?」
「ええ、対して好きな人がいないって理由だと聞いているのだけれど……」
「あれは印象を悪くしないためのデタラメな噂です。本来はお姉さまには想い人がおられるのです」

そこまで聞かされると、イッセーとゼノヴィア、アーシア、匙以外の面子が眼を丸くして驚愕する。

「え、まさか、あのレヴィアタンさまが……」
「気持ちは察しますが、事実なのです」
「え、でも、この流れだと……まさかそんな……」
「あの、一体何の話を……」

ここでイッセーが割り込んで聞いてくると、そこにサーゼクスがにこやかに答える。

「簡単な話、彼女は彼に惚れているのだよ。それも重度にね」

―――

――




『『『はいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?』』』

ここでイッセーたちの絶叫が廊下に響いた。

それもそのはず、まさか自分たちのトップが同級生にゾッコンだと聞かされれば驚かない方がおかしい。

「ま、ま、ま、魔王さまがカリフに!? なんでまたそんな……!」
「そこは『二人だけの秘密』らしいです。だけどお姉さまは間違いなくカリフくんを溺愛しています……そう言い張って断って来た縁談は数知れず……」

ソーナから放たれる苦労人オーラにイッセーたちもなんて声をかけていいか分からない。そんな最中に今度はセラフォルーがソーナに抱きついて来た。

「そんなに心配しなくてもお姉ちゃんはいつでもソーたんのお姉ちゃんだよー☆」
「『たん』はお止めください! それになんで今日のことを……!」
「ふっふっふ……魔法少女に不可能はないんだよ? カリフくんを追って三千里、ソーナちゃんの同行も全てマルっとお見通し。だけど、もし授業参観に来れなかったらショックできらめくステッキがより一層……」
「ご自重ください。魔王であるお姉さまにきらめかれたら小国が数分で滅びます」

そんな会話の横ではサーゼクスとグレモリー卿は面白おかしく事の顛末をイッセーたちに暴露していく。

「セラフォルーは独自でカリフくんの動向を何年も前に追っていたらしくてね、何度もその度にプロポーズを繰り返しているらしくてね」
「いやはや、若いというのは羨ましい限り。見ていたら母さんと出会った頃を思い出して……」
「あ〜……それはまた大物に惚れられましたね。彼……」

木場は苦笑、イッセーは乾いた笑みを浮かべ、匙に至っては……

「ちょっと待て……もしレヴィアタンさまとカリフが結婚して俺と会長のできちゃった婚が完成したら、カリフは俺の義兄になるのか!? 後輩を『にいさん』って!? しかも最強で最凶で最狂で最恐の兄が誕生かよ!?」

そして、朱乃、ゼノヴィアともなれば……

「あらあら……これはどういうことかしら? どういう経緯でセラフォルーさまと?」
「お前、恋愛事には興味無いみたいなこと言ってなかったか?」
「ほう……いつにもまして威圧感がすげえなオイ」

カリフ相手にどこか迫力を醸しながら詰め寄って行く。カリフも思わず『女の力』に生唾を飲み込みながら面白そうに笑っていた。

「うぅ……もう耐えられません!」
「あぁんソーナちゃん! お姉ちゃんを置いて行かないで!」

あの冷静沈着なソーナが涙を潤ませてその場を去っていく。

「付いてこないでください!」
「お姉ちゃんを見捨てないでええぇぇぇぇぇぇ! ソーたああぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「『たん』付けは止めてくださいとあれほど……!」

自棄になった愛すべき妹を追って行こうとしたセラフォルーは途中で気付いたようにカリフに振り返ってニッコリと微笑む。

「じゃ、また会おうね☆ 今度こそ認めさせるんだから!」
「いつ、いかなる挑戦でも受けて立とう。セラフォルー・レヴィアタン」
「じゃあね! チュ♪」

投げキッスと共に魔力で作られたハートが真っ直ぐとカリフに飛ばしてセラフォルーはソーナを追って行く。

カリフは向かってきたハートに腕を伸ばして……

「ふん」

ペシっとまるでハエを叩き落とすかのように弾いた。

そして、弾かれたハートはイッセーと匙の元へと向かい……

「イッセー! 避けて!」
「匙先輩!」
「「へ?」」

突如、ハートが二人の前で眩い光を発したと思った瞬間!




校舎の中が爆ぜた。

「なんで……」
「こう……なるの?」

爆発に呑まれた二人は爆煙と共に黒く焦げ、その場に倒れる。

「イッセー!?」
「匙! しっかり!」

生徒会メンバーとオカ研メンバーが二人を介抱する横でカリフはサーゼクスの横に移動して話しこんでいた。

「やれやれ、愛ってのは重いぜ」
「それほど彼女に愛されているのだよ。光栄に思わないと」
「男の冥利に尽きる……てところかな? はっはっはっは!」
「いや、笑い事じゃないんですが……」

グレモリー卿の大笑いに木場の突っ込みも空しく慌ただしい空気の中に消えていくのだった。



ドタバタの授業参観から翌日が経った。

一同は昨日の喧騒から気持ちを切り替えて旧校舎に集まる。

全員は旧校舎の一階のとある部屋の前にいた。

「こ、ここは一体……」
「昨日言ったもう一人の『僧侶』の封印場所よ」

部屋の前を『KEEP OUT!!』のテープで幾重に、頑丈に塞がれている生々しい部屋にイッセーたち新人悪魔たちは緊張を隠せない。その上、何やら封印の術式まであるのだから一層不気味だ。

「昨日、サーゼクスが来たのはこのためだったか……」
「ええ。夜には封印が解けて旧校舎の中を自由に歩き回れるのだけど本人が拒否しちゃって……」
「重傷じゃないですか? それ……」

イッセーと同じく、カリフも中にいるまだ見ぬ眷族に不安を覚える。

「契約はどうしてんだ? ただ引きこもってるだけじゃあただのお荷物だ。『義務』あっての『権利』じゃなかったっけ?」
「そこなんですが、意外にも眷族の中でも一番の稼ぎ頭なんですよ?」

カリフの問いに朱乃が答えると、イッセーとカリフは意外そうな表情を浮かべる。

「依頼者の中には直接悪魔には会いたくないって人もいるからこういったパソコンを介して契約を結ぶこともあるにはあるの。中の子はその方法でダントツの契約数を結んでいるのよ」
「ふん、取り柄の一つはあったようだな……いや、一つだけでは済まないってとこか」
「理解が早くて助かるわ。それが封印されている理由なのよ」
「それはどういう……」
「会ってみたら分かるわ」

話しながらも朱乃と二人で封印を解き、封印の刻印を消し去る。

「開けるわよ」

リアスがドアを開けた時だった。


「いやあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

部屋の中から絶叫が聞こえ、イッセーたちは驚愕する。

リアスは溜息を吐いて朱乃とともに中へ入って行く。

『ごきげんよう。元気そうでよかったわ』
『な、な、何事なんですかぁぁぁぁぁぁ?』

中から酷く狼狽した声とリアスの安堵した声が聞こえてくる。

『あらあら、封印が解けたのですよ? もうお外に出られるんです。さ、一緒に出ましょう?』

まるで怯える小さな子供に優しく語りかけるような声で朱乃が促すが、新しく聞いた中性的な声の主は頑なに拒否する。

『やですぅぅぅぅぅぅぅぅ! 外に出たくない! 人が怖いぃぃぃぃぃぃぃ!』

イッセーはその様子に顔を引き攣らせていた。

「これは……引き篭もりって聞いてたけど重傷なんじゃあ……」

イッセー、アーシア、ゼノヴィア、カリフは首を傾げているも、木場は苦笑し、小猫は溜息を吐くだけ。

一種の好奇心に突き動かされたイッセーはドアを恐る恐る覗いていたが、それに業を煮やしたのがカリフだった。

「どけイッセー」
「へ? うお!!」

振り返ると、顔面に靴底が迫って来ていた。危険を感じて反射的に避けることはできた。

その代わり、その蹴りは封印のドアを容赦なく破壊した。

「「!?」」
「ひいいいいいぃぃぃぃぃ! 何ですかああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

突然の出来事にリアスと朱乃は驚愕し、中の金髪の美少女が怯えている。

「待て待て! お前、それは強引過ぎるだろ!」
「知るか」

イッセーの一言を無視してギャスパーの前へとズンズンと進んでいく。

「カリフくん。あまり手荒なことは……」
「安心しろ。今は顔合わせ程度で済ませる。“今は”な……」
「そんな強調して言わないで。本当に恐ろしくなるから……」

二人は最も懸念していた事態が初っ端に起きて狼狽する中、カリフは怯えてへたり込む美少女の目線にまで合わせる。

「だ、だ、誰なんですかあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「初めまして。オレは鬼畜カリフってんだ。以後、よろしくギャスパーとやらよぉ」
「ひいいぃぃぃぃ! 眼が血走ってて怖いよおぉぉぉぉ!」
「カリフ!」

物凄い形相を近付けてくるカリフに朱乃とリアスは二人でやんわりとカリフを引き離す。

可愛らしく装飾され、部屋の一角に棺桶が置かれていること以外は案外女の子っぽい部屋にイッセーたちは入る。

「おぉ! 金髪美少女と……迫る強姦っぽいぞお前……」
「ひいぃぃぃ! また新しい人たちが来たあぁぁぁぁぁ! 誰なんですかあぁぁぁぁぁ!?」
「あ、新しく入った『兵士』の兵藤一誠だ。君がギャスパーだね?」
「ビ、『僧侶』のアーシア・アルジェントです。よろしくお願いします」
「『騎士』のゼノヴィアだ」

ともあれ、自己紹介を済ませたイッセーは新たに紹介された眷族が美少女だということに歓喜を見せる。

「イッセー、一見は女の子っぽいけど実は男なの」

意外にも二人に押さえられているカリフが衝撃的なことを口にした。

「男って……こんな美少女がそんな……マジで?」
「いいえ、この子は趣味で女装してるのであって本当は男の子なのよ」
「そ、そんなああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ひいいいぃぃぃぃぃぃ! ごめんなさいごめんなさいいいぃぃぃぃ!」

ここで、イッセーの絶叫にびっくりしたギャスパーも悲鳴を上げていたが、イッセーの憤りは止まらなかった。

「なんでこんなことが……! 一瞬だけアーシアとお前のダブル金髪美少女の『僧侶タッグを期待したんだぞ! それを……」
「もういい黙れ」
「へぶぅ!」

そろそろ鬱陶しく感じたカリフはイッセーをジャーマンスープレックスで床に頭を叩きつけ黙らせる。その過程で部屋のテーブルに叩きつけるのも忘れない。

「ひいいぃぃぃぃ! テーブルがぁぁぁぁぁぁ!」

見事に大破したテーブルに頭を突っ込んで煙を出すイッセーにカリフは構うことは無かった。

「見た目女に球と棒が生えてるくらいで喚くな。話が続かん」
「……下品な単語禁止」

いつの間にか部屋に来ていた小猫から突っ込みをもらいながらポケットや学ランのポケットをまさぐる。

「今日の要件は簡単だ。要はこいつを……」

そして、カリフは取り出した。

「部屋から出せばよいのだろう?」

大量の聖水を染み込ませたロザリオを……








「いやああああああぁぁぁぁぁ! 殺されるううぅぅぅぅぅぅぅ!」
「さあ選べ。恐怖から逃げてこの部屋の中で串刺しになるか、恐怖を克服して『生』の道を進むか……」
「お止めなさい!」
「あらあら、これは……」
「祐斗! 小猫とゼノヴィアもカリフを抑えて! できるなら取り押さえて!」

そろそろ悪ノリを通り越して危なくなってきた後輩を抑えて眷族を守ろうと必死にカリフを抑えるリアスと朱乃とイッセー以外の他の面子。

それでもカリフはジリジリとギャスパーへと近付いて行く。

「さぁ……こっちにおいで。外には楽しいことが一杯だよぉ……」
「ヒィィィィィ!」

その瞬間、目の前が真っ白に―――

「む?」

気付いた時には目の前にギャスパーが後ずさっているのが見えたが、ここで異常を感じる。

「体が……動かん」
「う、動けるんですかあぁぁぁぁぁ!?」
「いや、喋るのが限界だが……なるほど、これがお前の能力か……」

部屋を瞳だけ動かして見回すと、一見、変わっていないようだが、異常はすぐに見つかった。

―――カーテンが風にたなびいたまま動かない

それに動かない体には感覚があるが、まるで動けない状況に思案する。

(体にはどこの異常も無いし、神経回路がやられた訳では無い……体組織が止まった訳ではない? それにあのカーテンだ……まさかこいつ……能力面ではオレより遥か上か!?)
「ふええぇぇぇぇ……」

目の前で体を丸めて震えるギャスパーの得体のしれない能力に流石のカリフも戦慄を覚え、体が底冷えする感覚に襲われた。

(こいつはオレをまた一つ強くしてくれるかもしれん……)

目の前の新たな運命の歯車


戦乱を望む戦闘民族は彼に何を思うのか。

それは誰にも分からない……


〜後書き〜

前回のアンケート結果ですが、キャラをある程度出してから短編として「通学路のフェンリルズとドラゴンズ」を実施したいと思います。
題名は『通学路のフェンリルズとドラゴンズ』
是非お楽しみください!

それと、後もう少しで原作キャラを出してみようかと思っています。その時もお楽しみに!

感想と指摘、要望があればお願いします!

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