小説『ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜』
作者:生まれ変わった人()

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ギャスパーと話しこんでから翌日が経った。

朱乃さんに呼ばれたので約束の場所へと向かっている。

部長も用事を済ませたら後から来るって言ってたけどなんだろう?

向かっている最中に個人レッスンの妄想を膨らませているが……

「それは無いよなぁ……」

理由はもちろん、カリフのことだ。

朱乃さんは誰からどう見ても完全にカリフにベタ惚れ、というより依存しかけている。

コカビエルの件の後に何があったのかは分からないが、朱乃さんの様子が変わったのは覚えている。

今までは俺と同じように後輩を可愛がるような少しエッチなスキンシップだったのが行動的なアプローチに変わった。

それからは朱乃さんの表情が年相応の女の子の顔によく変わる。

それを言うならゼノヴィアもそうだし、俺的には小猫ちゃんも結構怪しいと睨んでいる。

「くっそ〜! なんであんな狂暴なのにモテんだよ! 狂暴なのにーーーー!」

口でそうは言うが、原因は何となく分かっている。

口でも行動でも誤解されがちだけど、あいつは義理堅い。まさに『男』という同性でも憧れる、男にとって理想形の男だった。

それにあいつは何故だろうか、弱い者の気持ちをよく理解してくれるところも何となく魅力に感じる所だろうな。

外道だけど……

「あ〜、あいつみてえにモテてぇな〜……なんで俺の周りにはハイスペックな奴しかいないんだよ」
「あらあら、恋する男の子もお悩みですわね。うふふ……」
「おわぁ!」

急に艶っぽい声が聞こえたと思ったら背後に朱乃さんがいた。

「あ、朱乃さん?」
「うふふ……驚かせてごめんなさいね?」

優雅に笑う所はいつも通りだが今回、違う所は服装だった。

いつもの制服姿ではなく巫女姿の朱乃さんはすげえ色っぽい! 脳内保存脳内保存っと……

俺が凝視してくる様子に朱乃さんは頬に手を当てて微笑みかける。

「どうかなさいました? この恰好似合ってませんか?」
「いえ! そんなことあるわけないじゃないですか! とっっっっても似合ってますよ!」
「そうですか? それならわざわざ着替えたかいがありました。うふふ」

優雅に笑ってはいるが、照れているのか頬を紅くしてマンザラではない様子のお姉さま。ああもう! こんな朱乃さんも可愛らしくていいぜ!

率直に答えると、朱乃さんは未だに少し照れながら続ける。

「うふふ、リアスが羨ましいわ、こんなに素直で可愛いイッセーくんを好きになれて……カリフくんもイッセーくんを見習ってほしいですわ」
「何かあったんですか?」

そう聞くと今度は少し拗ねたように頬を膨らませる。

「彼、ひどいんですよ? この恰好で膝枕したり耳かきしてあげたりしてるのに何の反応も無く『サンキュ』だけで終わり。少しは反応してくれてもいいと思いませんか?」

朱乃さんの愚痴に俺は一瞬にして頭の中が真っ白になった。

なん……だと?

学園で一、二位に入るほどの美貌を持つお姉さまが膝枕……だと?

そんな美味しい想いしてそっけない態度とってんのかあいつは!? これは見過ごせん!!

てかそこ代われ! 嫌なら俺が請け負う!

そう言いたいが、この場にはカリフはいないし言ったら言ったでまた何されるか分からん。

あいつ、自分への悪口には罵声&鉄拳制裁で仕返しするからな〜……

「やっぱり、魅力が無いのかしら……」

物思いにふけっていると朱乃さんが不安そうに俯いていた。

悲しげな表情を窺わせる様子に何故か俺が焦ってしまった。

「そんなことないですって! 朱乃さんの美貌は学園一、いや、世界一ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! それはなびかないカリフが悪い!」
「そ、そうですか?」
「そうですよ! 女性としての魅力は充分ですよ! それに……」

俺もパターンは違えども似たような経験はしている。

「多分、カリフもそういった時にどう反応すればいいのか、分からないかもしれませんよ?」

俺も家では部長やアーシアから傍目から見れば似たような経験をしている。風呂を一緒に入ったり、裸の主人に抱き枕にされたり……

「あらあらイッセーくん。鼻」

おっと、思い出していると鼻血がでいたようだ。朱乃さんにポケットティッシュで鼻を拭いてくれた。

このままだと恰好がつかないから続ける。

「朱乃さんは誰から見ても素敵な女性です。だから自信持って下さい」
「イッセーくん……」
「カリフは人の気持ちには敏感ですから朱乃さんの気持ちにも気付いてます。ただ、それがどんな感情なのか分かってないだけというか……」

俺も未だに女の子の気持ちなんて分からないけどね……

ただ、俺とカリフもそんな感じなのだろう。スラスラとカリフの代弁もできた気がする。

「そう……でしょうか?」
「大丈夫ですよ! 同じ男として言い切ります!」

なぜかそこだけは自信を持って言えた。

胸を叩いて自己表現すると、朱乃さんは年相応な女の子の笑顔を浮かべた。

「そうね……そうですわね。こんなことで諦めたらそれこそ本末転倒ですわね」

いいなぁ〜……俺もこんなこと言われたいなぁ〜……

内心で羨ましがっていると、朱乃さんは意味ありげな笑みを浮かべて俺に可愛らしく指差して言った。

「私のような女の子が周りにいるってこと……あなたも自覚してね?」
「あ、はい……」

上機嫌になったからなのか意味深なことを言ってきたのだけど、俺にはよく分からなかった。

う〜ん、確かに恋している女の子は周りにいてもおかしくないしね。まあ、相手が相手だけど……

はぁ……女の子って難しい……こんなんじゃあハーレムなんて夢のまた夢だよなぁ……

思わず頭を項垂れてしまう俺に朱乃さんはクスクスと笑っていた。

「あらあら、リアスたちも大変ですわね。うふふ……」

うわ、恥ずかしぃ! 変な所見られた!

ていうかなんで部長の名前が出るんだ?

そう思いながらも笑い堪える朱乃さんの後を追って神社へと向かうのだった。







「……遅いですね。二人共」

イッセーたちが話しこんでいる中、神社の中では頭の上に光る輪っかを浮かべた優雅な端正な顔立ちの青年・天界のトップであるミカエルはお茶をすすりながらスタンバっていた。





イッセーが神社で用事を終えてから幾日かがたった。

部員プラスにカリフが皆、制服姿で職員会議室を臨む。

今日はやってきた三すくみ会議の日であり、会談場所は目の前の職員会議室である。

「気を付けてねイッセーくん。中は一触即発状態だから」
「まあ、今までいがみ合っていたからな。そうなるだろう」
「いや、それもあるんだけど大元はカリフくんなんだ」
「へ?」

木場の言葉にイッセーが疑問符を浮かべると、リアスが簡単に答える。

「堕天使幹部を圧倒した人間ということもあり、過去にやってきた経歴が響いたのでしょうね。あなたの参加には反対意見もあってそれぞれの勢力内で揉めたそうよ」

リアスの言葉にカリフは黙って聞きいれていたと思っていたのだが、急に片足を振り上げて……

「ほっ!」

会議室のドアを足蹴で勢い良く開けた。

『『『!!』』』

それにはリアスたちを含めて中にいた天使勢、アザゼル以外の堕天使勢、悪魔勢の面々が驚愕していた。

荒々しい登場と共に中の緊張状態が一気に高まったことを感じ取った。

だが、当の本人はポケットに手を入れて悠々と言い放った。

「くっちゃべるなら早くしな。俺は帰って夜食とって寝てえんだ」

煽り挑発を投げながら会議室で今後の未来が決まる会談が始まったのだった。



カリフの尊大な態度はアザゼルの介入もあってなんとか治まった。

その場には神の不在を知っているミカエル勢、アザゼル勢と白龍皇、そして悪魔の所ではサーゼクスとセラフォルー勢、そしてグレモリー眷族とソーナ、そしてカリフが出席している。

「今回の件は本当にお礼を申し上げます」
「いや〜、コカビエルが迷惑かけたな」

ミカエルとアザゼルのコカビエル鎮静の件について礼を述べられて少しは緊張が解けたかと思ったら、ミカエルがカリフに視線を向けた。

「会談の前に一つの不安要項を解消したいと思います」

その一言に全勢力の目がカリフに向けられたにも関わらずカリフは鼻を鳴らして笑うだけ。

「失礼だとは思いましたが、過去の経歴をそれぞれの勢力内で調べさせてもらいました。まずは天使勢からですが、過去に狂信の部類に入る信徒を一人残らず暴力で制圧し、中には整形手術が必要なほどの重症人や精神を崩壊させた信徒を出したこと、私の弟子のデュリオを一時期は骨折、そして最近では使われなくなった教会とは言え、教会の聖水や祓魔弾を持ち出し、聖人の偶像を破壊して持ち出しているとの情報を得ました」
「堕天使勢だが、グリゴリが確保しようとしていたセイクリッド・ギア所有者を『ムカつく』の理由で股を裂いて事実上としては再起不能にしたり、あちこちで堕天使を追撃しているとの報告を受けている。ミカエルんとこと同じ様なもんだ」
「悪魔の所では何人かの上級悪魔を殴り倒しただけでなく、動けなくなっていた上級悪魔の顔を聖水で溶かした上に舌にロザリオを針と糸で縫い付けて精神と肉体を追い詰めたりとしているとのことだね」

それぞれの代表からカリフの過去の悪行の一部、あくまでも“一部”の残虐な悪行を暴露されてからリアスとその眷族は全員、とんでもない冷や汗を噴き出している。

白龍皇のヴァーリに至っては必死に笑いを堪えている様子だった。

「それに加え、戦闘力は凄まじいものを感じさせます。幾年も前のことですが煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)を所有するデュリオを退けたことは大きいですね」
「事を起こしたのは少なくても五歳からだと思われる。この時期から謎の少年の報告が現れ始めた。それに彼は人間社会でも既に多大なパイプを有している」
「世界中で過激派テロ集団が非公式で壊滅させられ、アメリカ大統領とは個人的な不可侵条約を結んでいるって話だ」

さらに続く話から会議場がザワザワと「信じられん」とか「本当なのか?」とかまるで嘘のような大きい事例に悩む声が出てきている。

それに対してアザゼルは言い放った。

「今までの報告は裏を取って、検証の結果から確実な事例だけを抜粋した物だ。嘘偽りない事実ということになる」

その言葉にその場のざわめきは最高潮に達し、図々しくふんぞり返って笑うカリフに視線を向ける。

不穏な空気にリアスたちは生唾を飲んだ。

「この報告に相違はありませんか?」
「多分、間違ってはない。ただ覚えていない」
「覚えていない、ですか」

全く悪びれた様子の見られないカリフに対して周りの雰囲気が緊張が高まる中、ミカエルたちは本題に入る。

「あなたには私たちに危害を与える意思があるかどうか……その真意が知りたいのです」

話をふられたカリフはいつもの様子でさも当然のように話す。

「オレは生きるためにしてきた殺しもあっただろうが、反省する気もなければ変える気も無い」

その一言と共に会場の緊張が一気に高まって一触即発の空気が生まれる。

『『『!?』』』

グレモリー眷属たちはカリフの前に庇うように立ち塞がるが、カリフは気にせずに続ける。

「貴様等はオレを何か勘違いしているようだが言っておく。オレは無関係な者は絶対に巻き込んだ覚えはないし、恩は通す。そこいらの欲に目を眩ませるカスと一緒にされては不愉快だ」

嫌悪感を剥き出しにミカエルたちに『凄み』を利かせただけで会場内の三勢力を怖気つかせた。

その中でもミカエル、アザゼル、サーゼクスとセラフォルーは退かずに問いただす。

「その言葉……信じてもよろしいでしょうか?」
「戦士の誇りと命に誓って」

曇りなき眼と呼ぶに相応しい、磨き上げられたダイヤモンドでさえも及ばない輝きをカリフの目の中で光り、会議場全員を照らした。

言葉よりも説得力のある無言の訴えがほとんどの人物の心を動かした。『彼は約束を破らない』と確信させる凄みが確かにあった。

簡単に掌を変えさせてしまうほどの説得力に会場の空気が和らぐ。

それには遂にはミカエルたちも……

「アザゼル……あなたのおっしゃる通りのお方のようだ」
「だから言ってんじゃねえか。そんなに俺の信用低いか?」
「ええ」
「ああ」
「そうね☆」
「けっ! 結局セラフォルーが言わなきゃこんなことしなかったてのかよ!」

天使長とサーゼクス、セラフォルーからのキッつい一言にアザゼルは面白くなさそうに不貞腐れる。

そんな中で、傍観に撤していたソーナが口を開いた。

「どういうことです? お姉さま」
「えっとね、カリフくんが皆に受け入れられるように皆の前でカリフくんという人物を見て欲しかったから☆」

そこからサーゼクスが続ける。

「彼は聞いたように前科は山のようにあるのだが、同様に三勢力での功績も多々ある」
「ヴァンパイア鎮静や数々の呪いの品の破壊、日本で言う『祟り場』のように呪われた地の鎮静……」
「危険思想のセイクリッド・ギア所有者や悪魔、天使、堕天使、はたまた未曾有のハルマゲドンを未然に防いだこともありました」
「その他にも大戦の傷跡として残る冥界、天界、地上の生態系を崩す外来魔物の討伐、先走った人間界に影響を及ぼすほどの大規模な人間拉致を繰り返していた上級悪魔、はぐれ悪魔の討伐も大きい功績として挙げられているよ」
「更には人間の社会では数々のテロリストの潜入、壊滅と大統領やローマ法王に対する貢献度もたけえんだよ。知らなかったろ?」

その数々の偉業にイッセーたちの予想以上に驚愕の表情を見せる表情を楽しむかのようにアザゼルはニヤニヤする。

「分かるか? 今やこいつは実力、腕力、暴力に加えて権力、財力を腕っ節で手に入れた最強の人間だ。そんな奴をそう簡単に受け入れられるほど単純じゃあねえんだよ。神々の世界ってのもな」

そうなのだろうか、とイッセーは納得するしかなかったが、改めて驚かされたことが大きかった。

これ以上、何をしても不思議じゃないカリフの隠されていた真実にもう乾いた笑みしか浮かんでこない。

「いくらなんでもブっ飛びすぎだろ……」
「“力”と付く物はどんな物でも持っていて損はねえってことだ。お分かりかな?」

カリフが得意気に言い放つと、会議場からあは苦笑が響いた。

その中でもヴァーリだけは興味深そうにカリフを見つめている。

「それで、この子どうだった?」

セラフォルーがサーゼクスたちに聞くと、ミカエルとサーゼクスはやんわりと笑みを浮かべた。

「ああ、流石は君の婚約者(フィアンセ)候補ってところかな? この子は大丈夫だと思う」
「そうですね、やや反社会的ですが人の道は外れていないようです」

そのコメントにセラフォルーも上機嫌になってカリフの元にやってくる。

「やったー☆ これで世界公認の最強夫婦誕生ー☆」
「お姉さま! はしたないから自重してください!」
「だれが夫婦だ、だれが」

魔王少女を諌める生徒会長と先程まで話題となっていた人間の絡みを見てイッセーたちは苦笑するだけだった。

「はははははは! お前、とんだジゴロじゃねえか!? 遂には魔王さままで落としたのか!」
「知るか」

笑うアザゼルを無視して部屋のイスにドカっと座りこむとミカエルは少し賑わった場を手を鳴らしてパンパンと治める。

「静粛に、一つの懸念事項が片付いただけですがまだ終わってはいません。引き続き会談を続行いたします」

ミカエルの一言により三勢力会議は再会され、世界の未来を決めると言っても過言ではない会談が交わされた。




それから会議は順調に進み、カリフが飽きて寝た所である条約が結ばれようとしていた。

『天使、堕天使、悪魔との和平』

今までに交わることのなかった三勢力がこれから手を取り合って歩んで行こうという新たな試み

アザゼル、ミカエル、サーゼクスやセラフォルーも元々から検討していたらしく何の抵抗も無く締結された。

それでも、だからこそ気になること、不安事項を明らかにせねばならなかった。

ミカエルはアザゼルと向き合った。

「なぜあなたはセイクリッド・ギアを集めていたのですか? 我々も恐らく悪魔も次の戦争を画策しているのだと思っていましたよ」

聞かれたアザゼルは神妙な表情に戻り、会議場に響く声で言った。

「備えていたのさ」
「備えていた? 和平を申したばかりで不安を煽る物言いですね」

ミカエルが更に言及しようとした時だった。





会場全体を力の波動が飲みこんだ。

それはまさに、世界が止まる……ギャスパーの力と酷似したものだった。

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