僕は、夢を見ていた。
金糸のように、澱みのないクリーントーンのギターの音。
それが折り重なっていく。ディレイだ。
金糸はどんどん形を成していく。細かく震える。
その震えに合わせる様に、僕の心臓もヒリヒリとしてくる。
震えが止まる、一秒にも満たない静寂。
僕は、これから始まる衝動が待ちきれなくて、息を飲んだ。
歪んだ。
感情がはちきれて叫び声をあげるように、泣き出したギター。
お腹の底まで響くような、重いベース。
心臓を突き破って、脳天を直撃するドラム。
僕は合わせて、頭を振る。
金糸はビリビリとした電波のように、僕の前で震えながら、形を作る。
それはまるで、骸骨のようだった。
でも、内臓はあって。
むき出して今にも傷ついて死んでしまいそうな心臓を捧げるように、すべてを曝け出している、骸骨だった。
髑髏の口からは、叫びとも笑いともつかないような不気味な声が聞こえる。
生々しいこの感じ。
僕が好きな感じだ。
ドラムは心臓音。ベースは脈拍。ギターは血流。
そしてボーカルは、髑髏の叫びそのものだった。
このヴィジョンが見えるのは、僕が「これ」を気に入った時だけ。
というよりも、好きな「それ」を体験すると、間違いなく出てくるヴィジョンなのだ。
僕はヘッドフォンを外す。
高揚感はまだ消えない。
「…このバンドいいわ、ライブ行こう。」
なんて独り言をつぶやいてしまうくらい、酔いしれていた。
つまり、そういうことだ。
ぼくは、音楽が、「見える」人なのだ。