小説『君を探しに行きましょう』
作者:麻弥()

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〜あの日の記憶〜




「璃音、ごめん。それからありがとう」

ーまたなー

その言葉だけで、私は理解できた。どこか、遠くへ行ってしまうんだ、って・・・。
・・・どこへ行っちゃうの?約束、したのに。嫌だ。行かないで。
まだ、言いたいことが沢山あるんだよ?一緒にお出かけも全然してないんだよ?
まだ、まだ、まだ・・・やりたいことが沢山あるんだよ・・・?

私は手を伸ばす。背中に向かって手を伸ばした。そして、離さないというかのように抱きしめた。強く、強く、強く。でも・・・

「ごめん。ごめんな・・・」

その言葉が聞こえた瞬間、私の意識は段々と遠退いていった。
薄れいく意識の中で

ー必ず、迎えにくるからー

そんな言葉が私の頭に、響いてきたような感じがした。その言葉は酷く哀しそうに、悔しそうに嘆くような声で・・・。


それが、兄さんを見た最後の出来事だった。





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