小説『リリカル世界にお気楽転生者が転生《完結》』
作者:こいし()

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 で、アリシアの目覚めを待たずして翌日。未だアリシアは目覚めない。と言っても、目覚めるのには最低でも三日は掛かるので、目覚めるとしても明日か明後日辺りになる。まだまだ待つしかないだろう。
 そして、そんな俺は早々に支度を整えて学校へと向かう。いつもの様に黒いジャケットを着てラフなTシャツを下に着て、ジーパンを履いた特に特筆してコメントする必要も無い普通の格好をして通学路を歩く。その途中途中では学校の生徒がちらほらと見えてくる。
 さて、昨日はかなり色々あった濃い一日だったが、それはもう過去の話で俺の頭の中には完全にさっぱり消えている。決闘していたのがなのはちゃんとフェイトと言うのは覚えているが、観戦していたメンツは覚えてない。確か転生者達はいたはずだ。ま、それくらいどうでもよかったという事で。

「生徒だった時も、教師になっても……学校ってのはめんどくさいなぁ」

 多分、教師になってみれば分かるだろう。ま、作者は現在進行形で生徒生活突っ走っているから教師云々言う資格はないんだけどね。

「今日はどうしようかな……授業はしたくないし、事務仕事は面倒だし、生徒との絡みは最近マンネリ化してるし、他の先生との交流は歳の差がありすぎて疲れるしさぁ……」

 勿論、俺の方が年上だぜ。ハンターハンターの世界では最終年齢は4216歳だったしね。凄いよ、念能力って。オーラ量の良し悪しで若さを保ってられるんだぜ? 流石は主要キャラが塵屑の様に死んでいく世界だ、生きてれば長寿間違い無しだからな。生きていればね。

「さて……今日もしっかり授業しますか、面倒だけど」

 俺はそう呟きつつ、校門をくぐるのだった。



◇ ◇ ◇ 



「はーい、じゃあこれで授業終わりな。質問ある奴はそっと心の中に仕舞っておいてくれ」

「せんせー、質問を心に仕舞っちゃったら質問では無くなると思います!」

「そんなの俺が知るかい」

「えー……」

 とまぁ、こんな感じで授業が終わり、放課後。時間が飛んだと言われても仕方ないが、授業なんて描写作者には到底不可能なんだよ。

「さて……と」

「先生」

 帰ろうとしたら、背後から呼びとめる声。この生前聞いた様なアニメ声、かなり有名だったあの声優のボイスを持つかの主人公。そう、高町なのはである。

「……何か用か? 質問だったら心の中に「オイ」……なんだ、神崎に火喰に會田までいるのか。お前らはどこぞの魔王討伐パーティかオイ」

「どちらかと言えばワシらのパーティの中に魔王さんおるけどな」

「誰の事かな?」

「い、いやなのはさん? 貴女様の事ではございませんですことよ?」

「ならいいけど……」

 なんだ、こいつら。なのはちゃん追いかけてるけど逆に尻に敷かれてんじゃん。駄目駄目だなぁ、恋愛するならもっと強気でいろよ。面倒な……。

「で、何の用だ」

「少し、話があるんです」

「話?」

「ああ、アンタがなんでフェイトとなのはの勝負の時に介入してきたのか、なんで魔法が使えるのか、それに……高町士郎の時の事も洗いざらい放して貰うぜ?」

 最後の方はぼそりと言ったけど、俺に聞こえるように言ったようだ。やっぱりこいつはあの時の事を覚えてたか、面倒だなぁ本当に面倒だなぁ……。

「ま、いいや。んじゃあ……そうさな、生徒指導室で良いか」

 教師()に連れられて生徒指導室に入る生徒(なのは達)の姿はさぞ滑稽に映るだろうな。ざまあみろ。



◇ ◇ ◇



「で、何から聞きたい?」

「なんで先生はジュエルシードの事を知ってたの?」

 直球だな。つっても、なのはちゃんは覚えてないのだろうか? 貴女が最初のジュエルシードに襲われた時、俺は傍にいたんですが。まぁ、この子が聞いているのはジュエルシードの存在を知っていたのかという事ではなく、ジュエルシードの詳細を知っていたのかどうかという事だろう。なら、答えは簡単だな。

「拾ったからだな。なんか知らんけど、最近3つほどあの青い宝石を拾ってな。んで、それを金髪のあの子……にあげたんだよ。そしたらあのジュエルシードについて教えてくれた」

「フェイトちゃんが……?」

「そう。ついでにジュエルシードを持ったまま彼女が空飛んでくるのを見てたら、なんか光って……その後から魔法が使えるようになった」

「ジュエルシードが願いを正確な形で叶えたって事か……」

 おっと、こんな嘘で転生者諸君を騙せるとは。あ、そうだ火喰君は俺の事を転生者と知ってるんだっけ?

「で、アンタは転生者か?」

「火喰君はいつも冷静に見えて直球だね。答えは否だ、転生者については知ってる……でも俺は転生者では無いって感じかな」

 確信を持たれたら厄介だし、俺は転生者じゃないって事にしておこう。

「そうか……」

「あの、火喰君。転生者って何?」

 こいつらなのはちゃんには話してなかったのか。なのに直球で質問するとは。さて、どう説明するんだ? 正直、面倒臭いから俺は口出ししないよ?

「ああ、転生者ってのは俺らの中での魔法使いの呼び名だよ。先生にも最近その事で話題を振った事もあるからそう聞いただけだよ」

 火喰の言葉に他の転生者がうんうんと頷く。やっぱりこいつらも主人公達に転生者と知られたくはない様だ。まぁ最悪どいつかが記憶操作とかやって転生者についての記憶を消すんだろうけどさ。というか、それが出来るなら自分以外の転生者の記憶を消せば一気に有利になれるよな。そこらへん実行に移せないのを見るとやっぱりまだまだ青いよな。やるなら徹底してやれよ。

「そうなんだ」

「ああ。だよな先生?」

「ん? ああ、そうだな」

「そっか……それじゃあ次、先生はこの事件の事をどこまで知ってるの?」

 ああ、なんだ結構本格的な事聞いてきたな。確かにそこは重要だろうね。他の転生者諸君もなるほどって顔してるよ。

「俺はこの件に関してはなんも知らないよ。ただ、高町と火喰と神崎と會田の四人が変な事に巻き込まれてるのは分かってたから、魔法を手に入れたのをきっかけにちょっと介入してさっさと俺の生徒を開放してもらおうと思ったんだよ。お前らを気絶させたのは一種のお仕置きだな。ガキだけで危険だったし」

「す、すいません」

「ハッ、アンタの助けなんてなくても俺達だけでどうにか出来たんだよ」

「黙れ神崎。そういうお前は俺に一回簡単にやられてるんだからな?」

「……チッ」

 とりあえず黙らせると、俺は一息つく。だが、なのはちゃんは更に質問を重ねた。

「じゃあ、最後に……アリシアちゃんの身体をどうするんですか?」

「「「!?」」」

 なのはちゃんの質問に転生者達が驚愕の表情を浮かべる。大方、盗聴でこいつらの言ってた原作通りに死体は別空間に行って消え去ったと思ってたんだろう。だが、残念。アリシアの身体……というかアリシアは俺の家で絶賛爆睡中である。

「んー……まぁあの時は邪魔出来ればよかったからなぁ……でも一応あの子は無事だよ。何をするつもりもないし、必要なら俺からあの金髪の子に返しとくさ」

「そう……ですか。わかりました、ありがとうございます」

「おう、じゃあ俺は帰るわ。家で二人の家族が待ってるんでね」

 一人ははやて、一人は勝手だがアリシアである。

「はい、さようなら」

「ああ、さようなら」


 さて、帰るとしよう。転生者達の嫌な視線もある事だしね。



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