同じくハードロックのコピーバンド。
ドラムが安定感に欠けてるため、全体的に落ち着きのない演奏だった。
自身の無さが演奏にも出て、何度も首をかしげていた。
龍児は時間短縮のため、ツインペダルを客席で組み立てていた。
早く切り上げたかったのか、Clatchは逃げるようにリハを終えた。
龍児達は無言でステージに上る。
だが、StripeTiger見るまでもないと言わんばかりに部屋から出て行った。
準備をしている間もただただ静寂であった。
準備が整った。
張り詰める空気。
観客からの明らかに実力を見極めようとしている視線。
全てを吸い込むように龍児のカウントで演奏を始めた。
曲はdustboxの「jupiter」
イントロからドラムは活発に動き、スラッシュビート主体の勢いある曲。
龍児は客席を見る余裕はなく、ただ演奏に没頭した。
弦楽器の聞こえ方がスタジオとは違い、明らかにテンションはあがっていた。
フィルも綺麗に決め、スタジオ内の空気を変えた。
1つ目のサビを終え、演奏を打ち切った。
「ありがとうございました」
PAにお辞儀をし、ステージから降りた。
演奏は明らかに龍児達は他のバンドを圧倒していた。
しかし、誰も認めることをせずに、ただ「お疲れ様です」の一言だった。
雄大の知り合いであるライブハウスの店長が駆け寄ってきた。
スキンヘッドに黒いサングラス、がっしりとした怖い雰囲気の人だった。