小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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「こんばんは、CROWNですよろしくお願いします」
前からの声しか聞こえない。
後ろの空気は変わっていなかった。
前からの暖かい声の後に来る冷たすぎる静寂。
どこからかからクスクスと笑うような声が聞こえる。
この空気に耐えられなくなったか、海斗が強引に次に進めた。
「今日は皆さん盛り上がって行きましょう」
雄大がギターをならす。
龍児がカウントをとり、3曲目に突入した。

3、4曲終わり、バラード調の曲に入った。
海斗の声は明らかに練習とは違った。
龍児も簡単なフレーズですら頭から飛んだりと内容はひどかった。

5曲目も終わりMCに入る。
はずだが、2人とも水を飲んだりアンプをいじったりとMCをする気配がない。
もともとMCはあまりしないように時間を調整していたが、もはやないに等しかった。
龍児も無駄にスネアの位置を動かしたりしていた。
「残り2曲です。最後までよろしくお願いします」
雄大が吐き捨てるように言って、すぐにギターを弾き始めた。
6曲目は「across time」。
練習では一番納得のいく曲だった。

カッ、カランカラン

ドラムの音が消えた。
フィルの時に龍児がスティックを落としてしまった。
すぐにバスドラの上においてあるスティックを持ち、演奏を続けた。
龍児は頭がぐちゃぐちゃになった。

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