小説『ちっぽけなバンドの物語』
作者:Dissonance★()

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練習ではまずなかった。
ましては、一番しっかりしていた曲だ。
龍児は下を向き、弱弱しいドラムを叩いた。
一刻も早くステージから離れたい。
一人になりたい。
そんなことばかり考えていた。

これが俺がずっとしたかったライブなのか。
これをするためにこれからまた練習を重ねるのか。

絶対に違う。
客と演奏者の心に隔たりがあり、それがとてつもなく大きい。
客が何を思っているかわからない。
下手くそバンドが難しいことしようとするからこうなるんだ。
お前ら、場違いなんだよ。
悪いほうに考えれば幾らでも想像が膨らんだ。

全ての曲を終えた。
「ありがとうございました」
前からの拍手と後ろからの微量の拍手が虚しく箱内に響いた。

龍児は敗北感でいっぱいだった。
休憩室で座り込む龍児を察し、雄大はと海斗は部屋をあとにした。
あそこで俺達が演奏した意味はあったのか?
悔しさがこみ上げ龍児は横になった。
動く気にはなれなかった。

体の力を抜き、心を落ち着かせることに集中する。
箱から音が聞こえ始めた。
Clatchが演奏を始めたようだ。

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