「あいつ、相当こたえてるな・・」
「俺もああいう空気とは予想してたけど、あそこまでやりづらいとはな」
雄大はタバコに火をつけた。
「ライブってこんなんじゃねえよな?」
「ああ、おもしれえのがライブ。今日のはお遊戯会だよ」
「はあ、対バンなんか見る気になんねえよ」
海斗は壁に寄りかかり、ため息をついた。
ガチャ
龍児が出てきた。
「おう、お疲れ」
「お疲れ様です」
「気、楽になったか?」
「はい、今日はホントすみませんでした。ミス連発しちゃって・・・」
龍児は心から頭を下げた。
「ばか、何言ってんだよ。そんなことより次のライブ設定しようぜ」
「え?何かアテあんの?」
海斗が立ち上がる。
「BBSに誘いが来てたろ?」
そういえばそうだ。
同じ町の女子高の女バンドと隣町のメロコアバンド。
「店長が言ってたよな。この町はぱっとしないバンドばかりって」
「なら隣町っつーことか」
雄大はさっそく返事を書いていた。
箱内の音が外に漏れている。
Clatchの安定感のない音が鮮明に聞こえる。
雄大は携帯をカチカチと動かしている。
龍児が口を開いた。